旅は道連れ、世は情け無エ…… 【17】
ひえー、何、どうなってるの?
肝を潰した私の目の前で、手にした錫杖を構えたマニが静かに言った。
「御油断召されるな、レジェナ様」
ンなモン、言われなくても判ってるよ。如何に私が腕と度胸の姫様一代だからって、この緊急事態でどっしり構えて鷹揚に、よきにはからえ、何て御油断召すほど人間が出来ちゃいないわさ。
だけど一体どうなってんの?あんたたち、サウロロフスの遺臣じゃないの?
全く訳が判んないわたしは、頭の整理が着く前に本能的に腰の剣を引き抜いた。
状況は全く把握できてないけれど、判ってるのはコイツらがわたしにとってありがたくない連中だって事だけ。第一印象は見事に当たったのである。クソー、ヤッパリ人間考えてる事は顔に出るんだ、チクショーめ!
光り物振りかざした荒事師の一団を前に、伝家の宝剣の柄を握り締める私の手の中に、ジワリと重々しい緊張が滲んだようだった。
外套の裾を翻しながら、マニの巨体が暴風のように動いた。
いきなり手近な相手に錫杖の尻で一撃、不意を衝かれて強かに突きを喰らったゴロツキが、後方に吹っ飛んで仲間にぶつかると派手にひっくり返り、のた打ち回ってうめいている。
先手を取って一人を叩いた。巧い。行者だけに精神修養が出来ているのだろう、咄嗟の事態に瀕しても、全く動揺する事無く的確に最良の対処で応じたのは流石と言う他無い。但し、相手への遠慮や気遣いは全く無いのが僧侶らしからぬとは言えるが、この際仕方がない。向こうが悪いんだから遠慮は無用だよ。特にあんた、愛するレジェナ様を守る為なんだから鬼にも成れよ、悪魔にも。