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第七話:約束

「……落ち着いたか?」

「はい、ごめんなさい」


 アレからしばらくイコナは泣き続けていた。顔を真っ赤にして、涙やら鼻水やらでベトベトになってる。


 もちろん俺の服も巻き添えだ。


 もともと帰ったら着替えるつもりだったから別に良い……良いったら良い!


「……あっ! レストさん、今すぐ逃げてください! そうしないとおじいちゃんに殺されちゃいます!」


 そうだな。俺も殺されそうだって思ってた。ついさっきまでは。


「イ、イコナ!? 何を言うんじゃ? ワシがイコナの大切な友達を殺す訳が無いじゃろう? そんなことしたらイコナに嫌われてしまうじゃろし? まあソイツが少しでも怪しかったら丸焼きにするつもりじゃったが……」


 後半はボソッと言ってたから聞こえなかったことにしておこう。


「……本当ですか? さっきのおじいちゃんの目は、私が小さいころに魔物に襲われそうになった時に、魔物を焼き尽くした時の目とおんなじでしたよ……?」


 どうやら俺は魔物と同レベルに扱われるところだったらしい。


「あ、あの時はイコナに何かあってはいけないと思ってじゃな! 今回のは、その……脅しじゃ! 脅し! 本当にそこの人間がイコナのことを友達と思っておるのか確かめるためのな」


 イコナを見てたからわかるぞ。絶対嘘だ。おそらく最初は丸焼きにするつもりだったけど、イコナが泣きながら俺に飛びついて来たから考え直したんだろう。


 ……どうやら、この老竜にとってイコナが何よりも大事な存在なのは間違いなさそうだ。


「じゃあ、レストさんとこれからも会ったり特訓したりしても良いですか?」


 老竜はイコナと俺を見比べるように見てきた。まさかとは思うがなんか勘違いしてたりしないよな?


「……うむ、良いぞ。友達は大事じゃからな。じゃが他の人間と関わるのはダメじゃ。そこの…レストじゃったか? お主は信用できそうじゃから良いが、もし裏切るような真似をしたら……わかっておるな?」


 なるほど、次は無い……と。あの顔からして間違いない絶対やられる。


「もちろん。そんな真似はしない」


「その言葉が偽りではないと信じておるぞ。さてイコナ、そろそろ帰って寝るぞ。お前のことじゃからまだ寝ておらんのじゃろう?」


「はい。言われてみれば……ふぁ……眠たい、です……」


 今にも寝そうだな。瞼が半分閉じてるぞ。


「しょうがない子じゃ。ほらおじいちゃんの背中で眠っていなさい」


 老竜は変身を解いて、本来の巨大な姿に戻った。全身が赤黒い鱗に包まれていて、所々に古傷も見える。正に歴戦の猛者……って感じだな。


 それでも、背中によじ登って早くも寝はじめたイコナを見つめる表情はとても柔らかく、どこにでもいる優しいジイさんって雰囲気だ。


「人間……いやレストよ。また会うとしよう。お主はイコナの友となってくれた。それにもしかしたら……いや、コレはまだ早いのう。とにかくお主には期待しておる。次に会うのを楽しみにしているぞ」


 それだけ言うと老竜は巨大な翼を羽ばたかせながら飛び去って行った。風圧で飛ばされそうになるほどとは……あの老竜、何者なんだ?


 それに期待って……?


 カーン……カーン……カーン


「マズイ!起床時間の鐘だ!急いで戻らないと……足は……なんとか大丈夫そうだな。よし、走るぞ!」



 ♢♢♢



「……あの少年。おそらく間違いないじゃろう。だとしたらあの場所で出会ったのは運命……なのかもしれんのう」


「ムニャ……次こそはぁ……魔法を使ってみせますよぅ……」


『我が主よ……遠き日の誓いようやく果たせる時が来たようです。もはや老いた身なれど、必ずや……』


「ふぁいや〜ぼ〜るぅ〜」


 ゴスッ!


「ぐおっ!? 寝ぼけとるとはいえ背中に拳を一発入れるのは止してくれんかのう……」


 背中の少女はスースーと寝息で返事をするだけだった……。


手のかかる子ほどカワイイものだと言いますが、イコナを可愛く描けてるのか不安ですね。作者の表現力向上をご期待ください。

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