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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第二章 風の国ボスコヴェント編
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第二十五話:突然の申し出

遅くなりましたすみません!

「あ〜美味かった。ご馳走さまでした!」


 あの肉……エアーラビットのもも肉って言ってたっけ? 肉のわりにあっさりした味わいで、そこに独特な香辛料があわさって……美味かったなぁ。一切れと言わずにもっと食いたかった。

 付け合わせのサラダも素材そのものが良い物っぽかったし、かかってたドレッシングも主張しすぎない程度で最高だった……欲を言えば、全体的に量が少なかったからもっと欲しかったけど、俺達は囚人扱いだし、美味い料理が食えただけでもシエラに感謝しないとな。


 それにしても、本当にイコナを起こす前に食って正解だった。あんなに美味いのを一人占めされてたまるかってんだ。

 イコナならこれくらいの量を食べ終えるのはすぐだろうし。


「いや〜エルフの料理を食べる機会がこんな形で来るとはな〜。ある意味、捕まって良かったかもな」


 そう言って茶化すように笑う俺を見て、シエラは少し驚いていた。


「……気に入っていただけたようで何よりです。正直、エルフ以外に料理を振る舞ったことなど無かったので、お口に合うか不安だったもので……」


 シエラの苦笑いから、あまり自信がなかったのだろうと予想するのは容易いことだった。


「いくらでも食べられそうなくらい美味しかったぞ。特にエアーラビットのもも肉! あのあっさりした味わいに、独特な香辛料があわさって、もう一口! っていうのが止まらなくなる感じだったな〜。できれば毎日食べたいくらいだ」


「……あ、ありがとうございます」


 レストが熱く語る感想を聞いて、シエラは頬を赤く染めながら少し縮こまっていた。


「それでさ、良かったらあの香辛料がなんなのかをーーって、どうしたんだシエラ? そんなにモジモジして……顔も赤くなってるっぽいし……」


「な、なんでもありません! それよりも、えっと……イ、イコナ様を起こさなくてよろしいのですか!?」


 慌てた様子のシエラを不思議に思いながらも、レストはつい忘れてしまっていたイコナへと顔を向けた。


 ……どうやらイコナはまだ夢の中らしく、スー……スー……と寝息が聞こえる。


「……おなか……すき、ました〜……むにゃむにゃ……」

「そこは『お腹いっぱいです〜』って言うのがお約束じゃないのか?」


 こんな状況でも気持ち良さそうに寝ていられるイコナが羨ましく思えてきた。

 ……そうだ。せっかくだし、ちょっとイタズラしてやるか。


「よし、それじゃイコナが起きる前に……」


 レストはイコナの分の料理が乗った皿を手に取り、床で寝ているイコナの側で腰を下ろした。


「レスト様?」


 柵越しに不思議そうに覗き見るシエラに、レストはイタズラっ子のような笑みを返した。


「シーっ、静かに。たまには仕返しくらいさせてくれ」

「は、はぁ……わかりました」


 レストはエアーラビットのもも肉に、木でできたフォークを突き刺して、構えた。


「これくらいは許されるよな」

「……むにゅう……」


 そのままフォークに刺したもも肉を寝ているイコナの頬に押し当てては離し、また押し当ててと繰り返し始めた。


「……レスト様、食べ物で遊ぶのは如何なものかと」

「そう固いこと言うなって。こうしてればイコナも起きるだろうし」


「ですが……はぁ、今回だけは見逃してあげます」

「さすがシエラさん、心が広い」


 呆れた様子のシエラを他所に、レストのイタズラは続く。


「……んにゅ、うう〜ん……?」

「あっ、もう起きちまったか?」


 何度も繰り返されたイタズラのせいか、すやすやと寝ていたイコナが寝苦しそうにし始めた。


 ……どうせなら、もう少しちょっかい出したかったけど、起きたんなら仕方ない。バレる前にやめとくか。


 レストがつつくことをやめるのとほぼ同時にイコナがうっすらと目を開け始めた。

 その目はとろんとしていて、どうにも眠たそうだ。


 そんな寝ぼけ眼のまま、自分の目の前に差し出されている『美味しそうなお肉』をじーっと見つめている。


「……あ〜ん」


 イコナは寝そべったまま顔だけを肉へと近づけ、そのまま一口で全て頬張った。


「おお〜良い食いつきっぷりだな」


 バリ! ボリ!


「んん!? ちょっと待て!」


 明らかに肉ではない何かを噛み砕く音が聞こえ、レストはイコナの口からフォークを引き抜いた。


「ええ……嘘だろ」


 レストの目に映ったのは、さっきまでフォークだったはずの折れた棒だ。


「レスト様!? 大丈夫ですか!?」


 レストの背中越しに見ていたシエラも、突然の大きな音に驚きを隠せずにいた。


「あ、ああ……大丈夫。でも見ての通り、フォークがただの折れた棒になっちまった……アハハ、ホントごめんなさい」

「……ご無事なようで良かったです。フォークの替えはたくさんありますので、気になさらないでください」


 ……本当にそう思ってる〜? 俺にはその笑顔、引きつってるように見えるんですけど〜?


「むぐむぐ……ん〜、なんだか木の味がして……あんまり美味しくないです〜」


 何言ってるんだ、このポンコツ竜人は!? そりゃ木ごと食ってるんだから木の味がして当然だろ!? 本当はすっげぇ美味いんだからな!


「……」


 ほら〜シエラの顔がピクピクし始めた〜。あれ絶対怒ってるって……食器ごと食われたうえに美味しくないって言われたら怒って当然だけどさ!

 ウチのイコナ(ポンコツ)がご迷惑おかけしてホントにごめんなさい……後でちゃんと謝らせますから。


「とりあえず残りはちゃんと食べて、本当は美味いってことを理解しろ。ほら、口開けた開けた!」

「むぅ〜これでいいですか〜?」


 ふにゃふにゃした声を出しながらイコナは大きく口を開けた。


「よ〜し、そのまま待ってろよ……そら!」


 大きく開いた口に向けて、皿の上に残っていた料理全てが流し込まれていく。


「むぐぅ!? もが、んぐぐ……」

「どうだ? 美味しいだろう?」


 思ってたより苦しそうに見えるけど、リスみたいな顔になりながら食べてることもよくあったし、まあ問題ないでしょう。


 イコナはなんとか数回噛んだ後にゴクン! と喉を鳴らしながら口の中の物を飲み込んだ。


「……ふぅーびっくりしました……でも、とっても美味しかったです! レストさん、もっとく〜ださい♪」


 どうやら今ので目が覚めたみたいだな。尻尾も振って嬉しそうでなにより。そんでもって笑顔で口を開けてるところ悪いんだがーー


「残念ながら今ので全部だ」

「そんなぁ……」


 尻尾がへたり込んだ……気持ちはわかるぞ。俺ももっと食いたかった。


 ……ずうずうしいとは思うけどシエラにまた作ってもらえないか頼んでみるか。


「なあ、シエラーー」

「お二人とも、静かに」


 シエラのその忠告はレスト達に辛うじて聞こえる程度の大きさだった。


 ……なんだ? シエラの表情が険しい、それに何だか通路の方を警戒してるような……もしかして誰か来たのか?


「牢に囚われているにしては威勢のいいヤツがいるようだな」

「……風竜王様、なぜこちらに?」


 風竜王だって!? なんで国のトップがこんなところに来てるんだよ!? 


「フッ、人間と氷竜族を捕らえたと聞いた時から興味が湧いていた、ただそれだけだ……お前達がそうだな?」


 シエラの横にレスト達を覗き見ながら現れたのは緑髪の男性だった。

 シエラやレスト達に比べて背が高く、その割には細身で王にしては簡素で動きやすそうな服装をしている。


「……ああ、捕まったと言っても濡れ衣だけどな」

「罪を犯した者は皆が無実を訴えるものだ。まあ俺様としては、同じ竜族である者が誘拐などと姑息な真似をしたとは信じたく無いが」


 風竜王と呼ばれた男の視線は強くイコナへと向けられていた。


「私達は何も悪いことなんてしてません! あなたも王様なら、ちゃんと真実を調べてください! ロンさんなら絶対そうしてます!」


 イコナもその視線に負けじと強く反論する。


「ほう? 言うではないか、氷竜族の娘よ」


 イコナはキッと睨むかのように風竜王を見つめ、対する風竜王はまるでイコナを値踏みするかのように見ていた。


「……この俺様を前にして堂々としたその態度、そしてその容姿……少し予定とは違うことになるが、結果としては同じこと……納得はするだろう」


 ……何をブツブツ言ってるんだ? イコナはイコナで竜王相手にとんでもない事言っちゃったし……まさか、今ので怒って俺達をどう処分するか考えてるのか!?


「氷竜族の娘、名を名乗れ」

「私の名前はイコナです」


「イコナ……イコナか。俺様はヴェロイト、すでにわかっているだろうが風竜王だ」


 風竜王ヴェロイト……か。ロンに比べたら、あんまり良い王様って感じがしないな。


 ロンが賢くて優しい王様だとしたら、ヴェロイトはキザったらしくてナルシストみたいな王様って雰囲気だ。正直言って苦手だな。


「お前達、ここから出たいか?」

「もちろんです! だって私達は捕まるような事はしていませんから!」


 ……ついさっき、食器を噛み砕いて壊してるんだけどな。もしあれが城の物なら、国によっては罰くらい受けそうなもんだけど。


「そうか。ならばイコナ、俺様の(つが)いとなれ」

「わかりま……って、ええ!?」


 いやいやいやちょっと待て!? いきなり何言ってんだコイツ!?


親バカ竜「……ったく、なんなんじゃあの店長は。ワシが炎の魔法が得意そうじゃからってだけで、調理を任せるか普通? 焼くだけとは言っておったが、所詮料理なんて焼いたらほとんど終わりみたいなもんじゃろうが……」

店長「おいおい、何言ってるんだ? 料理が焼いただけで終わりなんてそんなわけないだろう?」


親バカ竜「うげっ!? おったのか……って、その手に持っとるウサギはなんじゃ? いやにデカいのう」

店長「ああ、これか? コイツはエアーラビットって言って……まあようはデカくて美味いウサギだ。そんでもってアンタに追加で火を通してもらう食材でもあるな。そういうわけで頼んだぞ、ガハハ!」


親バカ竜「あっ、待て……行ってしもうた。なんなんじゃホントに……というかこのウサギ、どう見ても魔獣じゃろ? この辺りで魔獣が売られとるとは思えんし、そう簡単に獲れるとも考え難い……何者なんじゃ? あの店長」

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