第六話:大事な友達
「ほう? そこの人間が友だと言うのか。イコナよ?」
「……そうです。私の、初めてできた友達です」
老竜の目、アレは信じてない目だ。
そりゃそうだよな。イコナから聞いた話の限りじゃあの老竜は人間嫌いみたいだし、友達だと言っても信じるとは考え難い。
「そうか。初めてできた友か、だが人間とは姑息で裏切るものだとお前に教えたはずだ。それでも、そやつが友だと言えるのか?」
「レストさんはそんな人じゃないです! 私のために一晩中魔法の特訓に付き合ってくれた優しい人です!」
「お前がそこまで言うなら……人間。お前のことを見定めさせてもらうぞ」
視線がキツイな。向けられただけで今にも逃げ出したくなる。
「……ふむ、人間にしては異常な魔力量。しかしその魔力そのものが強い訳ではない? なんとも不思議な奴よ。人間、魔法は何が使えるのだ?」
こりゃ見栄張って嘘ついたらすぐバレそうだ……正直に話してなんとかなればいいけど。
ただ老竜がうっすらと微笑んでいるように見えるのが怖い。まさかバカにでもされてんのか?
「……光と闇以外の四つの属性、その初級魔法が使える……だけです」
「つまり、火、風、水、土に適正がある……と。魔法適正と魔力量は一際ある癖に、扱えるのが初級程度とは……なんとも笑える話よ」
ハッハッハと老竜は笑っている。ええそうですとも。どうせ私は初級しか使えない弱者ですよ〜。
イコナにはバレないように隠してたけど、もしかして嫌われちまったかな……って、これから死ぬかもって時にこんなこと考えるとは以外と呑気だな俺。
「人間、お前に問う。お前は我が愛娘イコナをどう思っておる?正直に答えよ。さもなくば……わかっておるな?」
正直に答えないと死が待ってる……とでも言うのか?そのキツイ目つきからしてそうなんだろうけど。
「イコナは、俺にとってイコナは……」
出会ってから少ししか時間は経っていない。それでも色々と感じるところはあった。それを表すなら…
「光……です」
「光だと?それはどういう意味だ?」
「まずイコナの境遇は俺と似てます。俺は魔道学園の生徒なのに、聞いての通りポンコツ。イコナも光竜なのに魔法が満足に使えない」
……こうなったら全部正直に話すしかないもんな。
「それでも、生き様は全然違う。正直俺は努力しても結果が出ないから、自分はダメな奴なんだって諦めかけてた。でもイコナは人間の俺に習ってでも、どれだけ時間がかかろうとも必ず魔法を使えるようになってみせる。そう……意気込んでいた」
……ああ、そうだ。今の俺とは全然違う。
「そんな姿を見て、俺もまだまだ頑張ろうって思えた。だから、イコナは俺にとっての光。そして大切なーー」
「レスドざぁぁん!」
ドンっ!
「っうぐ!?」
イコナが俺に飛びついてきた。勢いよくタックルされたって言った方がいいか? そのままイコナが俺に覆い被さる形で地面に倒れこむ。
「れ、レスドざん……私、わだじぃ……グズっ、ううぅ……」
「待て、落ち着けイコナ……って俺の服で鼻をかむな! 汚れるだろ!」
「だって……だってぇ」
「だってじゃねぇ!」
イコナが俺の胸に顔を埋めたまま大泣きしている…腹の辺りまで濡れてきたぞ。どんだけ泣いたらこうなるんだ……しかもまた俺の服で鼻かみやがった。
「……これは愉快、誠に愉快よ!」
日が昇り始めた森の奥で、少女の泣く声と少年の叫び声、そして老竜の大きな笑い声がしばらく響いていた。
シリアスブレイカーイコナここに爆誕!
ちなみにレストがイコナのことを光と例えたのは彼女が光竜だからというのが理由の大半だったり…?




