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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第二章 風の国ボスコヴェント編
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閑話:竜少女を愛する者達

ちょっと短いですが現在のあとがき組の動きを少々……という回です。

 〜テラーノの住処にて〜


「……なあ、じっ様。そろそろ動かへんか? お嬢達が旅立ってから、もう何日も経つし、本体からの連絡を聞く限り、お嬢達は割りと遠くまで行ったようやし。それにワイはただジッとしとくのは苦手なんや」


 ライムのじれったそうにしている姿を見て、テラーノはため息を一つ吐きながら返事をした。


「お前という奴は……と言いたいところじゃが、それもそうじゃのう。ヴォルもライムと同じ考えなのじゃろう?」


 テラーノがヴォルを一瞥すると、ヴォルはやる気に満ちたような、それでいて静かな憤りを感じさせる表情を浮かべた。


「ガウ! グルル……ガウ!」


「珍しく考えがおうたなぁ? 犬っころ?」

「わう」


 ヴォルはライムを見下すような素振りを見せ、すぐにテラーノへと向き直った。


「けっ、相変わらず可愛げの無いやっちゃやで。まあでも、お嬢のためになんかしたいって気持ちはワイも同じや」

「……わふ」


 そんな二体のやり取りをテラーノは穏やかな笑みを浮かべながら見ていた。

 今は遠くにいる、自分をおじいちゃんと慕うまだ小さき竜娘を思い浮かべながら……。


「……本当にイコナは幸せ者じゃな」


「それにしてもやで、じっ様。この犬っころをここに残してもらう理由……寂しいから、なんてじっ様らしくもない言い訳で通じるなんて良う思うたな?」


 ここぞとばかりにライムはテラーノへと話しかけていた。

 表情は読みとれないが、その口調からしてテラーノをからかっているのは明らかだった。


「……今はもう関係の無いことじゃろうが。結果的に通じたんじゃし……」


 テラーノはテラーノで痛いところを突かれているせいか、なんとも言えない表情を浮かべていた。


「そもそもお嬢だって犬っころとの旅を楽しみにしてたみたいやし? いくらコイツの協力が必要やったからって、せめてもうちょっとマシな理由つけてやったほうが、お嬢も吹っ切れた思うんやけどな〜」


「ぐぬぬ……悔しいがライムの言う通りじゃな……ワシとてイコナには悪いことをしたと反省はしとるんじゃ。じゃが……」


 テラーノは表情を曇らせて黙り込んでしまった。

 色々な思いが自分の中で渦巻き、言葉に詰まったようにも見える。


 それを見兼ねたライムはテラーノの頭に飛び乗った。

 ライムなりに場を和ませようとしての行動だ。


「わかっとるて。正直、最初に聞いた時は信じられへんかったけど……じっ様が言うんなら間違い無いと思えるしなぁ。犬っころだってそうやろ? じゃなけりゃ今頃ここにはおらへんやろし」


「ガウガウ!」

「待て待て、落ち着くんじゃ。そう苛立つでない」


 テラーノは噛み付かんばかりに迫って来るヴォルをなんとかあしらいつつ話を続けた。


「お前達の意気込みは良〜くわかった。ならば、そうじゃな。時は満ちた……という事か」


「変な格好つけは要らんから早よ行こうで」

「わう」

「……まあええわい。とにかくイコナを守るためにワシらが頑張らねばならん」


「せやな。お嬢の命を狙う奴はワイがとっちめたるわ!」


 ライムがフンと意気込んでいる姿を見たテラーノは頼もしさを感じながらも、同時に隠しきれない不安を覚えていた。


「……その意気込みは良いのだが、くれぐれも忘れんで欲しい。相手はワシですら敵うかわからん相手じゃ。無茶をしては無らぬ。そしてワシらの動きを悟られるわけにもいかん。もし悟られれば……わかるな?」


「もちろんや。最悪の場合、すぐにでもお嬢に危害を加えかねないんやろ?」

「うむ。だからこそ慎重に行く。奴の居場所の目処はついておるが……当面の目標として奴の動きを把握するために、ワシらに協力してくれる者を探す。良いな?」


「その協力者ってのはアテがあるんかいな?」


「うむ。レストが頼りにしていた先生とやらを頼らせてもらう。じゃがいきなり魔道学園に魔族と魔物が来たとなっては大騒ぎになりかねん。故に王都にてその先生を探す。幸いな事にその先生が王都へと出向く時期が近いと、レストが言っておったからな」


「よっしゃ! そんなら目指すは人族の国の中でも一番デカいっちゅう王国やな! そうと決まれば早速出発やで!」


 そのままライムはぴょんぴょん跳ねて外へと向かって行ってしまった。


「……わふ〜」

「まあ気持ちはわかるが、ライムはライムで頑張ろうとしとるんじゃし……な?」


「わう」

「それはそれとして、先生を探す時にはお前の鼻を頼りにさせてもらうからのう。頼んだぞヴォル」


「わふん!」

「うむ。頼りにしておるぞ。ではワシらも行くとしよう。目指すは中央国家ミリューミッテじゃ」


 その日、輝く太陽の下で真紅の竜が大空へと飛び立った。


 娘を慕うオトモを背中に乗せ、目指すはかつて激しい戦いを繰り広げた地。


 人間の領域が近づくにつれ老竜は守りきれなかった主への思いを募らせながらも、今度こそ自分の大切な存在を守らんと決意を改め、その大きな翼をはためかせ目的地へ向けて力強く飛んで行く。


 全ては愛する娘のために。

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