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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第二章 風の国ボスコヴェント編
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第十話:作戦説明完了

「まったくもう! 何やってるんですか!」


「ぐぅ、いやワシにも言い分がーー

「言い分も何もありません!  自分の親があんな大人気ない真似してたなんて……恥ずかしくて仕方ないんですよ!?」


「ううっ面目ない……」


「なぁ坊主」

「どうしたんだ? ライム」


「じっ様がなんか小さく見えるんやけど、気のせいやろか?」

「多分だけど、あんなに本気でイコナに怒られた事が無かったから落ち込んでるんだろ。それで雰囲気的に小さく見えるんじゃないか?」


 普段はなんだかんだで堂々としてるから、ギャップが激しいんだと思う。

 今まではイコナが怒ったといってもちょっと頭にきたくらいの感覚だったんだろうけど、今回はかなり本気で怒ってるみたいだからな。


「なるほど。言われてみれば、じっ様かなり落ち込んどるな。ワイと一緒に説教されてた時と比べもんにならんのやないか?」


「あの時はイコナも本気で怒ってたわけじゃなさそうだったし、テラーノもまだ余裕があったんだろ。でも今回は……まあ見ての通りだ」


「せやなぁ。やっぱお嬢は強いでぇ」


 イコナが強いというより、テラーノがイコナに弱すぎるってほうが正しい気がする。


「なんにせよ、イコナのおかげで助かったな」


 テラーノから必死に逃げてたら俺達を探しに来たイコナと合流して、簡単に事情を説明したらイコナのお説教タイムが始まった。

 っていうのがここまでの流れだけど、もし合流するのが遅れてたらどうなってたことやら……。


「レストさん、ライムちゃん。私のワガママのせいでこんな事になっちゃってごめんなさい!」


 テラーノへの説教が一段落ついたのか、イコナは俺とライムに向かって深く頭を下げていた。


「いやイコナが悪いわけじゃないって。ようはテラーノが暴走しなかったら良かっただけの話だし」


 まあテラーノの暴走もまともな思考ができないような状態だったからっていう理由があるけど……ソレはソレだ。


「せやせや、お嬢は悪くない! だから謝らんでもええんやで!」


「……ありがとうございます。ほら、おじいちゃんもちゃんと謝って!」


「……その、悪かったのう。少し頭がおかしくなっておったわい」


 テラーノは正座したまま申し訳なさそうにしていた。


 どうやら頭も冷えたみたいだな。やれやれ。


「じっ様の暴走も止まったし、とりあえずは安心やな〜」

「そうだな。んじゃ、改めて作戦会議をしようか」


「ハイ!」 「了解やで〜」 「うむ」


 そのままみんなで俺の部屋へと戻った。


 ♢♢♢


「とりあえず確認だけど、変装がどんなもんかってのはわかってもらえたよな?」

「ハイ、バッチリです! それとライムちゃんが作ってくれたこの衣装、少しアレンジしてもいいですか?」


「ああ、服に関しては好きなようにいじってくれ。ただし、変な格好はやめてくれよ?」

「当たり前です! 自分から変な格好なんてしませんよ!」


 さっきまでの全身ミイラは変な格好じゃないとでも?


「……まあいいや。それで、他に何か質問はあるか?」

「そうですね……あっそういえば、私の髪と尻尾の色を変えただけで変装になんてなるんですか?」


 おお、マトモな意見が出たな。正直言って予想外だ。


「レストさんその顔、何か言いたそうですね」

「あ〜いやいや、何でもない何でもない」


 察しの良いことで。下手に怒らせたくはないし、話を戻すとしよう。


「えっと、本当にこれで変装になるのかってことだったな」

「……なんだか話をうやむやにされた気がしますが、まあ良いです」


「気のせいだって。それでだな、変装に関しての詳しい説明はテラーノ、任せて良いんだったよな?」


 テラーノは胸をドンっと叩き、待ってましたと言わんばかりに話し始めた。


「うむ、任されたぞ! では、イコナよ。ワシら竜族がヒトの姿へと変身した場合、ある法則に則った姿になる、ということは覚えておるな?」


「あっ、あ〜……ハイ! なんとなく!」


 絶対覚えてなかったな。自分の事でもあるってのに。


「よし。まあ大事なところだけ念のために確認するとじゃな、髪は本来の鱗の色になり、尻尾や翼の鱗もそのまま残るということじゃ」

「……それがどう関係あるんですか?」


「それは今から話すぞ。まず、一口に火竜族や光竜族といってもその中で更に種類が分かれるのは大丈夫じゃな?」


「ハイ! 翼のある火竜族さんだったり、翼の無い火竜族さんがいたりするんですよね?」


 どっちにしても火竜族として一括りにはされるらしいけどな。どうせなら細かく分ければ良いのに。


「そうじゃな。他にも違いがあったりはするんじゃが、まあそんなところじゃ。では、どうやって火竜族じゃったり光竜族といった種族を分けているのか、わかるかのう?」

「えっと……その竜族さんが得意な属性魔法、ですか?」


「半分正解じゃな。正確には、得意な属性と鱗の色、じゃ」

「鱗の色、ですか?」


「そうじゃ。ワシら竜族は赤い鱗なら火竜族、金色の鱗なら光竜族、というように鱗の色で種族を見分けられるんじゃよ」


 そういえば地竜族のロンは濃い茶色の鱗や髪だったっけ。


「じゃあ今の私の姿だと光竜族ではなく、別の種族だと思われるってことですね!」

「その通り! イコナは頭が良いのう。ナデナデしてあげようかの〜」

「あう、は、恥ずかしいです……」


 俺からしてみれば見慣れた光景だから何も言わないでおこう。


「くっ、ああやって自然とお嬢の頭をナデナデできるじっ様……羨ましいでぇ」

「お前はしばらく黙っとこうな」


 俺はライムを少し強めに抱き抱えた。


「離せ、離せぇ坊主ぅ!」


 ライムは俺の腕から逃れようと必死に暴れ始めた。


 なんというか……ボールが勝手に跳ね回ろうとしてるような感じだな。


「暴れるなって。後でイコナに相談してやるから」

「ホンマか!?」

「相談するだけならタダだからな」


 ライムは暴れるのをやめて大人しくなったが、代わりに『お嬢を撫でれる』と小声でブツブツ繰り返し始めた。


 現金な奴だ……。まあ相談するとは言ったけど、やらせてもらえるかどうかはイコナ次第なんですけどね。


 ライムに呆れながらも視線をイコナ達に戻すと、テラーノが撫でるのをやめて解説に戻ろうとしているところだった。


「では結局、今のイコナが何の種族に見られるかと言うとじゃな」

「と言いますと?」


 イコナは尻尾を振りながらテラーノの言葉を待っていた。


「ズバリ、『氷竜族』じゃ!」

「氷竜族!! ってどんな種族ですか?」


「知らねぇのかよ!」


 思わずツっこんでしまった。てっきり知ってるもんだとばかり思ってたのに。


「まあ無理もないわい。氷竜族は光竜族ほどではないが、あまり表舞台に出てこんからのう」

「氷竜……って言うくらいですから、寒いところに住んでるんですか?」


「うむ。五大国の中でも最も北にある闇の国(ディレットブーヨ)、それよりも更に北にある高山に氷竜族のほとんどが住んでおるらしい。なんでも、吹雪や地形の影響でその山に登ることすら困難らしいぞ」


「そんな場所に住んでたら風邪ひいちゃいます……」

「俺達が行ったら最悪の場合、凍え死ぬかもしれないぞ?」

「れ、レストさん! 脅かさないでくださいよ!」


「悪い悪い。それでテラーノ、その氷竜族が表舞台に出てこないってのは?」


「そういえばお主にも話してなかったのう」

「ついでに言うと、氷竜族がどんな種族かも教えてもらってない」


「ふむ……そうじゃったか?」

「イコナに説明する時に一緒に説明するって言ってただろ?」

「おっとそうじゃった、そうじゃった。悪かったのう」


 テラーノはカッカッカと笑いながら誤魔化していた。


「さて、それでは氷竜族についてじゃが、まあ名前の通り氷の魔法を得意とし、寒冷地に住む竜族じゃ」


 氷魔法か。確か分類上は水属性だったな。


 水属性の適正があっても水系が使えなくて氷系が使える場合と、水系のみ使えるって感じで分かれるとか聞いた覚えがある。

 両方使えるのは稀だって聞いたことあるけど、その辺りは魔族も同じなのかな?


「そうそう、さっき言ったあまり表舞台に出てこないということじゃが、名は体を表すとでも言うべきかのう。まるで氷のように周りに冷たいんじゃよ」


「周りに冷たい? それってどういう事だ?」


「ああ、すまんすまん。ちょいと回りくどかったのう。ようするに他者と関わろうとせん奴らなんじゃ。ほとんどの氷竜族は、魔力を放出しないようにして自分の力を周りに知られないようにしたり、そもそも他者とコミュニケーションを取ることすら珍しいとか」


「とか? ってことはテラーノも詳しくは知らないのか?」

「まあワシも実際にあったのは少ないからのう。じゃが、そやつらは話に聞いたとおり、無口な奴らじゃった」


「無口……ねぇ」


「? レストさん? 私の顔に何かついてますか?」

「……いや、何でもない」


 イコナの性格は一般的な氷竜族の性格とは違う……いや真逆だ。本当に大丈夫なのか?


「まあそういうわけで、魔力を隠していたとしても特に怪しまれんし、そもそも氷竜族と関わろうとする奴が珍しいくらいじゃから、イコナへの注目も減るはすじゃ」


 ……仮に注目されたとしても、氷竜族にしては珍しいよく話すタイプだって言えばなんとか誤魔化せはするだろうし、まあ大丈夫だろ。うん、多分、きっと。


「なるほど、氷竜族さんについては良くわかりました。でも私、氷の魔法なんて使えませんよ?」


「そこは大丈夫じゃ。さっきも言ったように氷竜族は目立ちたくないのか、自分の力を隠す傾向にある。じゃから魔法を使わんでも怪しまれはせんはずじゃ」


「じゃあ大丈夫ですね。さすがおじいちゃんです!」

「ま、それほどでもあるかのう」


 テラーノはイコナに褒められたのが嬉しかったのか、これ以上ないほどのドヤ顔をしていた。


「そうそう魔法と言えば、もしイコナが光魔法を使うのなら近くにライムかレスト、どちらかがおる時だけにするんじゃぞ? そうすれば、まあなんとかイコナが使ったことは誤魔化せるじゃろうからな」


 一番良いのはライムが近くにいる時だろうな。俺は光魔法を使えないから、もし詰められたら怪しまれちまう。


「了解しました!」

「うむ、良い返事じゃ」


「それじゃイコナ、他に何か質問はあるか?」

「え〜っと……とりあえずは、大丈夫です」

「わかった。それじゃ作戦会議は一旦これでお終い、ってことで良いか?」


 ライムはさっきからブツブツ言ってるだけだし問題ないとして。


「ワシは大丈夫じゃ」 

「私も大丈夫です」


「良し、じゃあこれで終わり。改めて出発する日とかはまた今度話すとして、イコナはテラーノに話したいこと、たくさんあるんだろ?」


「あっそうでした! おじいちゃん、私、ロンさんと友達になれたんですよ! それでですね〜」


 そのままイコナは今回の旅であったことを楽しそうに話し始めた。

 それを聞くテラーノは優しい笑顔で、相槌を時折しながら静かに聞いていた。


 なんというか……羨ましいな。俺のジイさんはあんな風に俺の話を聞いてくれたこと……あったかな……。


「……ず、坊主、坊主!」

「はっ!? な、なんだ? ライム?」


「なんだ、やないで。ボーッとしてからに、ワイとの約束、忘れてへんやろな?」


 約束……えっと……。


「あ〜そうだったな。でもさすがに今はそっとしとこうぜ?」

「……せやなぁ。確かに今はそっとしとこか。お嬢、あんなに楽しそうやもんな」


 イコナは無邪気な子どもの様にニコニコしながら途切れることなく話し続けていた。

 尻尾もブンブン振られている。


 楽しそうで何よりだ。


「でも約束は約束やからな!」

「わかったから、少し静かにしてろって……」


 ホントこのスライムは……まあ約束は約束だし、仕方ないか。

まあとりあえず、無事に終わったから良しとしようか。

は〜疲れた……。

〜氷竜族についてのまとめ〜


・水竜族の亜種のような存在(とは言っても関係性はほとんど無く、せいぜい同じ水属性を扱う竜族という程度)


・主に寒冷地を住処とし、魔族領域の中でも最北端近くにある高山地帯に氷竜族のほとんどが住んでいると言われている。その高山地帯は氷雪が年中積もり、吹雪が止んでいる時の方が珍しいと言われるほど過酷な土地。


・水属性魔法の中でも水を使った魔法は使えず、氷に関係した魔法が使える。


・種族全体の傾向として、単独でいる事を好む者が多く、他者に自分の力量を把握されないようにしたりなど、自分以外の存在と関わらないようにする者が多い。


作中の解説だけではわかりづらいかな、と思ったのでまとめた解説を載せてみました。

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