第九話:作戦会議
前回のあらすじ
レスト達「今後の旅に役立ついい作戦思いついたぞ!」
イコナ(素っ裸)「レストさん!とっておきの干し肉持ってきたのでこれで元気出してください!」
そして自分が裸と気づいたイコナは史上最大の恥ずかしさに悶絶し、レストは干し肉に埋もれてしまった!
はい。リアルが忙しかったため(言い訳) 更新遅くなりすぎました! これから少しずつペース戻していきますので、どうぞ長い目で見てもらえたら嬉しいです。
「……えーっと、それじゃ作戦会議を始めたい……んだけど、大丈夫か?」
俺が目を向けた先には、角の先から足の先までの全身を布で覆っているイコナがいた。さながらミイラだな……まあさすがに目と鼻までは覆ってないようだけど。
……コクコク。
「大丈夫、ってことでいいか?」
コクリ。
あのイコナが一言も喋らなくなるとは……裸を見られたのがよほど堪えたんだな。
それも問題なんだけど、今のイコナは布が全身にピッチリと張り付くくらい強く巻きつけているみたいなんだよな。
つまり、その……普段とは違って、ボディラインがハッキリと見えているわけで……
「……目のやり場に困る」
「なんじゃ? 何か言ったかレストよ?」
「いや! 何も、何も言ってないぞ!」
辛うじて聞き取られなかったか…危なかった。テラーノに変な疑いかけられたら、たまったもんじゃないからな。
「あーえっと、イコナも大丈夫みたいだし改めて今後の旅の作戦会議を始めようか」
まあ作戦会議って言っても、テラーノとライムから聞いた作戦をイコナに伝えて、それで良いか確認を取るだけなんだけど。
それだけの事なのに凄く難しい気がしてしまうのは……なんだかなぁ。
と言うのも、いつものテラーノなら今すぐイコナに普通の服を着させようとするはずなのに、そうしようとしない。この時点でおかしい。言ってみればどこか頭のネジが外れたかのような感じ……かな。
そしてライムはライムで……。
「じーーーっ……」
見たとおりイコナに釘付けになってるし。
極め付けに唯一頼れるヴォルはライムの分体と一緒に洞窟の外で見張りをしてるときた。
つまり今この場でマトモなのは俺だけ。
ただでさえ癖が強いのしかいないってのに……考えたら余計に気が重くなってきた。
とっとと終わらせようか……。
「え〜結論から言うとだな。イコナには変装をしてもらいます」
「……?」
いや、喋って!? 元気が有り余ってるのがデフォルトだったからやり辛くて仕方ない!
まあ首傾げてたし『よくわからないから説明してください』とでも言いたかったんだろうけど!
「はぁ……コレは実際にやったほうが早そうだな。ライム、お願いできるか?」
「……」
「って、お前もかよ!」
「はっ!? いや聞いとる、聞いとるで! お嬢を見つめてて話聞いてなかった、なんてことある訳ないやろ!」
ご丁寧な自白に感謝します。
「ハイハイ。じゃあイコナの部屋に二人で行って、実際にイコナを変装させてやってくれ」
「それくらいならお安い御用やで。任せとき〜」
「念のために確認しとくけど、本体じゃなくて分体がやるって決まり、忘れてないよな?」
「……も、もちろんや!」
本体がやる気満々だったなコイツ。
♢♢♢
「むう……」
「なあテラーノ、少しは落ち着いてくれないか?」
イコナとライムが出て行ってから十分は経ったか、俺達だけになってから、ずーっとウロウロしてるのが目について仕方ない。
「そう言われてものう。ワシの愛娘が変なことされてないか不安で不安で……レストにはわからんか? この気持ち」
「……ライムがライムだから言いたいことはわかる。でもさ、これからそのライムも旅に同行するってのに、ちょっと離れただけでコレじゃ……先が思いやられるぞ?」
「ぐっ……痛いところをついてくれるな。じゃが、いやしかし……う〜む」
こうも悩んでるテラーノってのも珍しいな。もしかしてヴォルと二人っきりだった間もこんな感じで悩んでたりしたのかな?
「お待たせしたな〜。お嬢の変装完了! やで〜」
見ればライムが触手を人の手の形にして器用にドアを開けて部屋に入って来ていた。
「ライム! イコナは、イコナはどこじゃ!? 変なマネしとらんな!? もし、手を出していたなら……」
「お、落ち着いてや。じっ様。顔が近い、しかも怖すぎるで!」
テラーノは一瞬でライムに詰め寄り軽々と持ち上げた。そしてそのまま潰してしまいそうなほどに顔を近づけていた。
テラーノの背中から殺意を感じる……お〜怖い怖い。
「お嬢! お嬢、助けてぇな! ワイ殺されてまう!!」
「じっ……じゃなくて、おじいちゃん、落ち着いてください! 私は何もされてませんから!」
ちょうど入り口の壁で死角になっていた場所からイコナがスッと現れた。
「い、イコナ! 無事じゃったか!?」
イコナの姿を見るなりテラーノはライムを投げ出し、イコナの両肩に手を置き心配そうに声をかけていた。
「わあぁぁ!」
「っと。大丈夫か、ライム?」
思ってたより抱き心地良いな。なんかプニプニしてて気持ちいい。
「おう、坊主。ナイスキャッチやで。ありがとな」
「良いんだよ。それより変装は――よし。バッチリみたいだな」
テラーノに両肩を掴まれたイコナの横顔が俺の目に映った。その顔はいつもよりも困惑しているように見える。
ただし、その髪はいつもの金髪では無く、光を浴びて輝く雪のように、綺麗な白色に染まっていた。
金色に輝いていた尻尾も同じように白く染まっている。
「当然やろ? ワイを誰だと思っとるんや」
「変態スライム」
「なっ!? だ、誰が変態や、誰が! ワイはただなぁ……
ド変態って言わなかっただけマシだと思って欲しい。
「っていうだけで――って、聞いとんか坊主!?」
「あ〜ハイハイ、聞いてる聞いてる」
「くうぅぅ……この坊主、やっぱ気に食わんわぁ」
ん? なんかほんのりとライムが暖かく――これは、なんというか……ぬるま湯の塊を抱えてるみたいだ。
そういえばスライムって本来は水の塊みたいなもんだったよな……つまり今のライムは文字通り沸騰してるってわけか。
「う〜ん、コレはあんまり抱えていたくないなぁ」
「なー! それ、どういう意味や!」
マズい、余計にぬるくなった。ライムを抱えてる時にはあんまり怒らせないようにしよう……抱き心地がなんとも言えない感じになって気持ち悪くなっちまう。
「あ、あの! レストさん!」
「ん? どうした、イコナ?」
イコナはテラーノから少し離れていた。心なしかテラーノはしょぼくれてるようにも見える。
さっきまでの黙り込んでたイコナはどこへやら……その代わり今度はモジモジしてるな。
静か過ぎるよりはマシだけど、コレはコレでな〜んかやり辛い。というか、なんか違和感を感じるな……なんでだろ?
「え、えっと……その……」
「どうしたんだ? ちゃんと言ってくれないとわからないぞ?」
「へ、変じゃない……ですか?」
「変? 何がだ?」
「私の格好です! いつも着てた服とは違いますし、それに髪や尻尾だって……だから、あの……」
あ〜そういうことか。言われてみれば服はいつも着てたワンピースをベースにして、より女の子らしい服になってるな。
「別におかしくは、わぷっ!?」
突然ライムが俺の口に飛びついてきてそのまま貼り付いた。
(坊主、もうちょっと気の利いたこと言えへんのか)
貼り付いたままライムが小声で喋りかけてくる。
(お嬢はお前に変に思われんか不安がってたんや。褒めるなりなんなりして、安心させたらんかいボケが)
それだけ言うとライムは俺の口周りから離れて地面に降りた。
そんなこと言われても、どうしろってんだよ……。うえっ、口周りがなんか気持ち悪い……。
「レストさん? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ大丈夫。大丈夫」
「なら良かったです。それでその、どう……でしょうか?」
さて考えろ……どう答えたら良いんだ?
ギロッ
「うっ!」
テラーノから凄い視線を感じる! 下手なことを言ったら丸焼きにされそうだ……。
「え、えっと……と、とっても似合ってるぞ! うん、可愛い!」
「それはちゃんと心から思ってのことなんやろな?」
「あ、当たり前だろ! いつもより女の子っぽくなってて、可愛く……見える……」
クッソ! 言ったは良いけどなんか凄い恥ずかしいぞ! ちくしょう!
「よし、良く言った坊主! ほな、もう元に戻ってええで〜」
「ハイな〜」
ん? 今イコナからライムの声がしたような……?
そう思った瞬間、イコナの身体が溶け始めた。
「なっイコナ!? おいライム! コレはどういうことだよ!?」
「まあまあ落ち着け坊主。ほれ、もっかい良く見てみぃ」
「落ち着けるわけないだろ!? イコナが溶け――あれ?」
俺がライムからイコナが立っていた場所へと視線を戻すと、そこにはライムの分体がいた。
分体はぴょんぴょん跳ねながら本体へと近づき、そのまま合体して本体だけが残った。
「どや! 驚いたか? 驚いたやろうなぁ。コレがお嬢に光属性の力をもろうたおかげで出来るようになった、その名も『完全擬態』や!」
「じゃ、じゃあさっきまでそこにいたイコナは……」
「せや。ワイの分体が擬態してただけ、ようはニセモンやな」
「それはわかったけど、なんでまたこんな事を……ただのイタズラだって言うなら承知しないぞ?」
「ちょい待ち! ワイがそんなチャチなマネする思うか?」
正直ライムはそんなことしない、とは言い切れない自分がいる。
「その顔……いまいち信用されてへんな。まあええわ。ワイがこんな事したんわな、お嬢に頼まれたからや」
「イコナが?」
「せや。で、その理由やけど、さっきワイの分体が言ったこと自体は本当なんや」
分体が言ってたこと? それって確か……。
「なんや、もう忘れたなんて言わへんやろな?」
「そんなわけ無いだろ」
ただなんでそんなこと聞いてきたのか、良くわからないってだけだ。
「ふ〜ん。ま、そういうことにしといたるわ。ようするに、お嬢は坊主に変に思われんか不安やったんや。せやから、ワイが代わりに確認したっちゅうこっちゃ」
「なるほどな。そういう事なら、まあ納得かな」
俺がイコナを変に思わないか……ねぇ。
正直に言えばいつものイコナを見慣れてしまったから、よほどのことが無い限り変に思うことは無いだろう。
逆に言えばイコナは普段からちょっと……いや、かなりやらかしまくってるってことだけど。
さっきだって素っ裸で……って何を思い出してるんだ俺は!
「そうそう。さっき坊主が言ったことは今お嬢にくっついて変装させてる分体を通して、そっくりそのまま伝えといたで。お嬢はそりゃもう喜んで、お嬢の部屋からこっちに向かっとるらしいわ」
「げっ!? 嘘だろ!?」
アレがそのまま伝えられた!? クッソ、なんか無性に恥ずかしくなってきた!
「さて……話は終わったかのう?」
「ん? ああ、じっ様。ちょうど今おわっ……ひっ!!」
「どうしたんだよライム? うわっ!?」
振り返った先には笑顔のテラーノがいた。そりゃもう笑顔だった。
それだけならそこまで気にする必要は無かったんだけど……。
「では……今度はワシと、お・は・な・ししようぞ?」
「い、イヤや! お話はお話でも絶対に肉体言語でやるお話やんけ!!」
「お〜良くわかっておるではないか。なら話は早いのう」
あ〜ブチギレてますねハイ。眼が笑って無いんだもん。おまけにテラーノの背後になんか見えちゃいけないもんが見える気がするし。
「ワシはなぁ、別にライムに怒っとるわけじゃ無いんじゃよ? ただ偽物のイコナを見破れなんだ自分に腹が立って仕方ないだけなんじゃ」
「じゃ、じゃあなんでワイににじり寄って来るんや!?」
ライムがブルブル震えながら俺に向かって飛び跳ねてきたので、とりあえず受け止めてそのまま抱えてしまった。
「ハッハッハ。わかりきった事を聞くでない」
ヤバい。ライムを抱えてしまったせいでテラーノの怒りが俺にも向いてる!?
「そもそもの原因を潰すのは……当然じゃろう?」
「坊主! 全力で逃げるんや!! 今すぐ!!!」
「いやなんで俺までって、危ねぇ!」
小さな火球が俺の腹辺りに向けて放たれた。辛うじて避けれたけど……うっわ、部屋の壁が焼け焦げちまってる……
「ライムぅぅ! 俺は恨むからなぁぁ!!」
「知るかボケェ! じっ様が暴走してしもうとるんやから仕方ないやろがあぁ!!」
テラーノの横をすり抜け、部屋から飛び出し、俺はライムを抱えたまま全速力で逃げた。
「鬼ごっこか、カッカッカ。少しは楽しませてくれるんじゃろうなぁ?」
テラーノは部屋から出てゆっくりと歩きながら二人を追いかけ始めた。テラーノが通った場所は足跡の形に焼け焦げ、土や石が焦げた匂いだけが残っていた……。
分体「暇やなぁ。なあ犬っころ?」
もふもふ「わうわう、ガウ」
分体「お嬢のためならこれくらいなんてことない、やて? ふん、その忠誠心だけは認めたるわ。しかし、そんなに厚い忠誠心持っとるとは、ホンマに狼やなくて犬なんちゃうか?」
もふもふ「ガウ!」
分体「あぶなっ! いきなり噛みつこうとすんなや! ワイはおいしゅうないで!」
もふもふ「わふぅ」(呆れ顔)




