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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第二章 風の国ボスコヴェント編
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第六話:嫌な予感

「おーいイコナ、起きろー。どうなっても知らないぞー」


 体をゆすってもなかなか起きないな。というかどうやったら立ったまま寝られるんだよ。

 あっそうだ。立ったままなら、いっそ倒したら起きるのでは? ……さすがに後が怖いからやめとくか。


「む〜……レストさん、どこ触ってるんですかぁ……」

「なっ!? 変なところは触ってない、って寝言か……」


 はぁ、ビックリした。俺がゆすったりしたから変な夢でも見てんのかな?


「グルルル……」

「落ち着けってヴォル。どこも変なところは触ってない。ただの寝言だって」


「……わう」


 ちょっと疑ってるな? すぐに噛みついてこなかったし、なんとか信用されてる……ってことにしとこうか。


 さて、これ以上変な疑いをかけられるのも嫌だし、できればやりたくなかったけど……許せイコナ。


「スプラッシュ!」


 俺の掛け声と共に掌から水流が出る。威力は強めの水鉄砲ほどだけどコレでも充分だろ。


「わー! 冷たい、冷たいですー!!」


 俺の水鉄砲は見事にイコナの顔に命中。そのまま飛び散りイコナの上半身を濡らしていった。

 もうこの際だから、いつも振り回されてるお返しも兼ねさせてもらうぞ。


「やっと起きたか、我らが眠り姫?」

「ううぅぅ、つ、冷たいですぅ。レストさん、なにするんですか、もー!」


 イコナの顔が赤いのは体が冷えたからか、それとも怒ってるからか。


「レストさん!」

「悪い悪い。ちょっとやり過ぎたよ」

「うーホントに悪かったって思ってるんですか? ニヤニヤしてるように見えるのは私の気のせいなんでしょうか?」


 おっと、つい顔に出ちまったか。これ以上怒らせるのも悪いしこのへんで


「それでじゃな〜ここからが更にかぁわいいんじゃよ〜」

「なんやて!? ここまででも充分可愛いのに、更に上があるんかいな!?」

「ふっふっふ……心して聞くのじゃぞ。当時まだ幼かったイコナはのう……」


「っ!? 嫌な予感がします! レストさん、また後で、じっくり、お話させてもらいますからね!!」

「お、おう……?」


 テラーノとライムが俺達から少し離れたところでしている会話が聞こえた途端に、イコナは目の色を変えて二人の間へと勢いよく割り込んでいった。


「ストーップ! そこまでです、おじいちゃん!」

「おおイコナ、起きたのか。今ちょうどお前がワシの狩りに初めてついて来た時の話をしていてのう……ん? どうしてそんなにもずぶ濡れなんじゃ? 」


「今それは良いんです! そ、れ、よ、り、も! 私が小さい時の話を勝手にしないでって、この前言ったばかりじゃないですか!」

「この前……あ〜確か、お前達が旅立つ前日くらいだったかのう」

「そうです! 覚えてるなら守ってください!」


「うむぅ。じゃがイコナがどれだけ可愛いかというものをじゃなぁ」

「可愛い……って言ってくれるのは嬉しい、ですけど……でもやっぱり恥ずかしいです!」

「何を言うか。イコナの可愛さとは例え世界が滅びようとも変わらずあり続ける、いわば唯一の不変たる事実! それをなぜ恥ずかしがる必要があろうか!?」


「せや! じっ様の言う通りやで! お嬢、何も恥ずかしがる必要はあらへん! お嬢は堂々としとりゃええんや!」


「だから、そういうのが恥ずかしいんですってばぁぁぁぁ!!」


 ライムが加わったせいでイコナの苦労が何倍にも増してる……テラーノだけでも笑え――コホン、大変そうだったってのに。


 そうしてテラーノとライムがイコナを褒め称えに称えて、それを聞くたびに顔を、手を、そしておそらく全身を真紅に染め上げながらもなんとかして二人を止めようとイコナが足掻くという、止めようが無い事態へと発展していった。


 足掻く自分を見て親バカとスライムはより一層ヒートアップしているという事実をイコナは知らないんだろうし。

 コレが負のスパイラルってやつか……。


「わふ」

「おっと、なんだよヴォル。ちょっ、小突くなって」

「ウー……」

「俺に対してはすぐ唸るよな、お前」


 そのままヴォルは俺を小突きながらイコナ達の方へ少しずつ寄せていった。


「まさか、アレを止めろって言うのか?」

「わふん」


 当然、とでも言ってるんだろうか? 少なくとも似たようなことを言ってるのはヴォルの雰囲気的に間違い無さそうだ。


「どうしても?」

「ガウ!」

「わかった、わかったから! 止めに行くから押すなって!」

「グルルル……」


 まったく、イコナと俺への対応の差が激しすぎないか? 

 さっさと行かないと後ろで睨みをきかせてる大狼(ヴォル)に噛まれそうだし……仕方ない、行くか。


「やはり、イコナは可愛いのう。魔族で一番、いや全世界で一番可愛いのう」

「せやな〜。いつまでも見てられるでぇ」


「二人とも、ホントに反省してるんですか!?」

「もちろんじゃ」 「してますぜ、お嬢」


 どうやらイコナが二人の暴走を止めることには成功して、逆に二人に説教しているようだけど……絶対に反省はしてないな。要するにイコナの抵抗も虚しく二人はイコナを愛で続けている、ということで良さそうかな。


 なんとか止める努力くらいはしてみようか……


「あ〜みんな? その辺で落ち着かないか?」

「レストさん! 聞いてくださいよ! おじいちゃん達ったら私の言うことぜんっぜん、聞いてくれないんです!」

「イコナよ、それはちと違うのではないか?」


「違いません! レストさんからも何か言ってあげてください!」

「そう言われてもなぁ」


 イコナとテラーノ達を見比べてみれば、プンプン怒っている布巻き少女とそれをニコニコ見守るムキムキ老人(角と尻尾付き)となんか色々変なスライム、としか言いようが無い。


 この状況で俺に何を言えと?


「むぅ……とにかくですよ、レストさん! ……ふぁ」

「ん? どうした?」


 見ればイコナはくしゃみをしそうになっていた。


 さっき水をぶっかけたせいか? まあ布一枚だけだし、体が冷えたんだろうな。


「ふぁ、ふぁ……へくち!」


 イコナの可愛らしいくしゃみと同時にそれとはまるで違う凄まじい轟音が響きわたる。

 イコナの正面にいたレストは今まで受けた衝撃とは比べようにならないほどの凄まじい衝撃を受け、遥か彼方へと吹き飛んでいった。


「!? うわあぁぁぁぁぁ!!……」


「えっ!? れ、レストさ、ん……」

「イコナ!? どうしたんじゃ!?」

「お嬢! しっかりしてや! お嬢!」


 イコナは吹き飛んで行くレストを見て追いかけようとしたが、その場に倒れ込んでしまった。

 急に倒れ込んだイコナを見て周囲にいた全員はイコナへと駆け寄って行く。


「じっ様! お嬢は、お嬢はどないしたんや!?」

「ガウ、ガウッ!」


「落ち着かんか! 今、調べとるところじゃ!」


 テラーノはうつ伏せになっているイコナを仰向けに起こし、イコナの容態を調べていく。

 その表情に焦りは無く、冷静そのものだ。


「……気絶しておるが、命に別状は無さそうじゃ。おそらく魔力欠乏が原因じゃろうて」

「魔力欠乏……ってことはやで、さっきの轟音と坊主が吹き飛んだのは、お嬢がなんか凄い魔法を使ったからっちゅうわけか?」


「魔法……では無い。くしゃみと同時にほぼ全ての魔力まで出してしまった、というのが正しかろうて」

「竜族お得意のブレスとはちゃうんか?」


「そうじゃのう……ブレスモドキとでも言えばいいか。本来なら自分の魔力を術式で形にして放つのが魔法じゃが、さっきのは術式を介さず魔力を放出した……いや、してしまった結果じゃからな。魔法とは言えぬ。それにしてもただの魔力そのもので、これほどの威力とは……本来のブレスにも引けを取らんものじゃぞ」


 テラーノがレストの飛んで行った方向を見ると、大きく抉れた地面と、少し離れた山の麓に大きな窪みができているのが見えた。


「あの窪みは飛んで行ったレストがぶつかってできたモノじゃろうな。ならばヴォルよ、背中にイコナを乗せて先に帰っておいてくれんか? そこのスライムもついでにのう」


「わう? ウー……」


 ヴォルはライムの方を向き、なんとも嫌そうな顔をしていた。


「行ってくれるよのう?」

「わ、わふ!」


「じっ様……なんとも怖い笑顔やでぇ。ワイも素直に従っとこ。んで、じっ様はどないするんや?」

「ワシはレストを拾って帰るわい。放置するのも悪いからのう」


「了解やで。ほな、犬っころ頼むで〜」

「……ガウ」



 ♢♢♢


「近くで見るとかなり大きい窪みじゃのう。ワシの本来の姿よりちょっと小さいくらいか?」


 テラーノはそんな窪みができるほどの威力に驚きつつ、本来の目的であるレストを見つけた。


「予想どおり、お主がぶつかってできたモノか。ん? なんじゃ身動き一つしとらんではないか。よもや死んだ……なんてことは無いじゃろうし」


 当のレストは窪みの中心辺りにめり込んでいた。背中側の半身が埋もれて、張り付けにされたような状態にも見える。


「まったく情け無い奴じゃのう。その指輪があるというのに気絶しおるとは。仕方ない、引っ張り出して――ん?」


 テラーノがレストを引っ張り出そうと近づいた時、レストの横に別の何かがめり込んでいることに気づいた。


「とりあえず引っこ抜いてみようかのう。よっと。ふむ、コイツは小柄な鳥、と言っても魔獣のようじゃな。イコナのくしゃみに巻き込まれてしまうとは、災難じゃったのう」


 引っこ抜けた鳥魔獣はカラスに似ていた。しかし既に息絶えているようで、テラーノに脚を持たれてぶら下げられ、ピクリとすら動かない。


 せっかくなのでと、テラーノがそのまま丸焼きにしておやつにしようとしたその時、テラーノはふと違和感を感じた


「こやつ……契約魔か? 僅かにこやつとは違う魔力を感じるが――この魔力、どこかで……ぐっ、あの時の古傷が痛む……まさかこの鳥、奴の契約魔か!?」


 テラーノの無数にある古傷、その中でも一際目を引くであろう古傷が疼き始めた。

 それはまるで、傷ができた時を思い出させるかのように。


「じゃが、奴がどうやって契約魔を? いやそれよりも……この鳥がイコナのくしゃみに巻き込まれたのだとすれば、近くを飛んでいたということ。ならば監視をしていた、という可能性もあり得るのう」


 テラーノの中で嫌な予感が膨れ上がっていく。


「ワシの思い通りにはいかぬ……か。なんとも言えん気持ちじゃが、お主の言っていたとおりになりそうじゃのう……」


 空を仰ぎ見ながら呟いたその言葉は、誰に届くわけでもなく風に流されて行った。

 そしてテラーノは鳥魔獣の首を掴み、力なく項垂れている鳥魔獣の顔に向けて鋭い視線を向けた。


「まだ見えておるか? もし見えておるなら覚悟しておけ。今度は必ず、貴様の思い通りにはさせぬ」


 テラーノが力強い言葉を放った直後、鳥魔獣は一瞬で跡形もなく燃え尽きてしまった。


「……ともかく今は家に帰るとしようかのう。ほれ、レスト、起きぬか」


 テラーノはレストの頬をペチペチと何度も叩いたが、レストからはなんの反応も無かった。


「……まあ良いわい。このまま連れて帰るとしよう」


 テラーノは竜の姿へと変身し、レストを鷲掴みにして自分の住処へと飛び立って行った。


 その胸の内に一抹の不安を残したまま……

スライム「もっと静かに走れんのんかい! 落ちてまうやろが!」

モフモフ「ガウア!」


スライム「だったら自分で走れ、やとぉ? ワイが走れんのは見たらわかるやろが! ケンカ売っとんのかワレェ!」

モフモフ「わふん」(見下している顔)


スライム「くうぅぅ、ホンマ腹立つやっちゃな! 目的地に着いたら容赦せぇへんで!」

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