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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第二章 風の国ボスコヴェント編
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第五話:指輪の魔法

「ぷっはぁ! やっと出られた……」

「レストさん、大丈夫ですか? 火傷とかしてませんか?」


 イコナは俺の体を心配そうに見回しながらそう聞いてきた。


「全身が土まみれになったこと以外は大丈夫だよ」

「怪我は無かったんですね! それなら良かったです〜」


「そうだな〜良かった良かった……で、済む訳無いだろ」

「っ痛い!? うう、なんでゲンコツしたんですか……?」


 ……イコナには皮肉なんて効かないか。

 代わりに今のイコナは人の姿だから、俺のゲンコツでもほんの少しは効く。

 ホッと胸を撫で下ろしていたイコナが自分の頭をさする程度にはな。


「消火してくれたことには感謝してる。でもな、何も生き埋めにする必要は無いだろ?」

「いや〜その、確実に消火したほうが良いと思いまして……」


 なるほど。確かにイコナの言い分も一理ある。


「ダメ、でしたか……?」

「うっ……いや、結果的には助かってるから良いよ。すぐに掘り起こしてくれたし」


 こういう時にはビシっと言わないとダメな気はするんだけど……俺を助けようとしてのことだし、悲しそうな顔をされたんじゃ強くは言えないんだよな。


 俺も甘いな……まさか、この前イコナに言われた、『おじいちゃんに似てきてる』ってこういうことも含めてなのか!?

 いやそんなはずは無い。俺はただ、その……とにかく違う、違うったら違う!


「レストさん?」

「あ、いや何でもない何でもない」


「そうなんですか? てっきりどこか怪我して痛いのかと」

「本当に大丈夫だって。ほらこの通り、な?」


 俺は全身を動かして無事なことをアピールした。


「なら良かったです。レストさんの指輪の効果が凄いのは知ってますけど、おじいちゃんの炎だって凄いですから、もしもがあったらどうしようかと心配で……」


「確かにな。テラーノの吐く炎のブレスは凄いものだとは思ってたけど、いざ本当に受けるとなると改めて良くわかったよ。まさかこの指輪の防御すら上回るとは思わなかったし」


 イコナのパンチやヴォルの牙、ロンの岩の剣でさえダメージそのものは無かったってのに。


「レストよ、それは少し違うぞ」

「違うって、どういうことだよ?」

「そうですよ。レストさんは、おじいちゃんの炎で全身が燃え上がってたじゃないですか」


 その通りなんだけど、改めて言われるとなんか複雑な気持ちになるな。


「そもそもレストが火達磨になっていた、コレ自体が違うんじゃよ」


「なあテラーノ、余計に訳わからなくなったんだけど」

「同じくです。おじいちゃん、私にもわかるように説明をお願いします」


 俺達が困惑している様子を見たテラーノは軽く咳払いをして、説明を始めた。


「まずはレストに渡したその指輪についてからかのう」

「俺の指輪?」


「うむ。その指輪は防御力を上昇させる魔法を自動的に付与する、という話をしたのは覚えておるよのう?」

「ああ、その魔法自体がとてつもない魔法だから、その分魔力もよく使うんだったよな」

「そうじゃ。じゃが、その魔法が一体どんな仕組みの魔法なのか、それは話してなかったよのう」


 言われてみれば確かに。俺もただなんとなく、防御力を上げる魔法、としか思ってなかった。

 効果が凄すぎてそこまで気にしてなかったってほうが正しいかな?


「それで? この指輪に込められた魔法の正体ってのは何なんだ?」

「答えは特上級に値する結界魔法の一種じゃ。要するにバリアを張る魔法、と言えばわかりやすいかのう」


 特上級、なんだそれ? 初めて聞いたぞ。魔法ってのは大きく初級、中級、上級の三段階で強さが分けられてるんじゃないのか?


「なんじゃ、キョトンとして。まさか結界魔法を初めて聞いたわけではあるまい? そもそも結界魔法はロンの得意とする魔法じゃし、あやつの所で見ているはずじゃぞ?」

「あ、いや……そっちじゃなくて、その特上級って区分を初めて聞いたんだけど」


 俺の返事を聞いたテラーノは一瞬だけ信じられないという顔をしていた。


「お主、それは本気で……あ〜いや、そうじゃったなぁ。人族なら聞いたことがなくてもおかしくないんじゃったわい」

「それはつまり、魔族ならではの区分ってことか?」


「うむ。お主ら、人族で言うところの……確か、戦略魔法――じゃったか? それがワシら魔族ではちゃんと区分されて『特上級』とされているのじゃ」


 戦略魔法……確か上級魔法の中でも特に強大とされている魔法で基本的に個人では使えず、上級魔法を使える人が十人くらい集まって同時に詠唱することでようやく発動できるような大規模魔法だって授業で聞いたな。

 手間も魔力もかかる分、威力は凄まじく、一発で町を跡形もなく消し飛ばせるほどの魔法だって話だったはず。


「そうそう、これはあくまでもワシの推測に過ぎんのじゃが、お主ら人族では区分されずにワシら魔族ではちゃんと区分されている理由として、単身で使えるかどうかというのがあると思うんじゃ」


「えっ、魔族って戦略魔法を単身で使えるのか!?」


 つまり、魔族はたった一人で町を壊滅させられるってことか? 嘘だろ……。


「とは言っても、使えるのは上位とされる魔族の中でも一握りの種族じゃがな。ワシら竜族はその一握りの内の一つじゃ。まあ竜族と一口に言っても、例えばワシは火竜族、更に火竜族の中でも更に細かく分かれるんじゃが……まあそれは置いておくとしようかのう」


「だとしても、そんな奴ら相手にご先祖様達はよくもまあ何百年と戦い続けてたな……」


 聖魔大戦もそうだけど、それ以前にも多くの大戦があったって聞くし、昔の人達はどんだけ凄かったんだよ。


「その答えは簡単じゃよ。全体の数では圧倒的に人族が有利だったからじゃ。ワシら魔族は一人一人が長命で強大な者が多い分、出生率は低く全体の総数は少なかった。人族はその逆じゃな。そして聞いた話じゃが、人族は魔族の五倍はおるとかなんとか」


 つまり、質と量の戦いだったってことか。人間が何人集まれば、竜族をはじめとする強大な魔族に対抗できてたのやら……。

試練の時のロンだって凄く手加減してたんと思うけど、それですら俺一人じゃ、勝つどころか戦いにすらならなかっただろうし。


「そういえば話がそれてたけど、結局のところ俺が燃えてなかったってどういうことなんだ?」

「ああ、それはじゃな。その指輪が結界魔法を発動している、というのはもう大丈夫じゃな?」


 俺はコクリと頷き、テラーノの言葉を待った。


「うむ。つまりはその指輪によって張られた目に見えないバリアがワシの炎は防いでくれていた、というだけの話じゃ。簡単じゃろ?」


「うん?『炎は』ってどういう……?」


 俺が呟いた時にテラーノがニヤリとしたように見えた。


「まあ待て、そう急かすでない。にしてもお主は目の付け所がよいのう」

「そんなもったいぶらずに教えてくれよ」


「ふん、まあ良いわい。その指輪がお主の周りに張るバリアは、お主を直接傷つける攻撃、つまり爪による切り裂き、体当たり、その他もろもろの物理的な攻撃は勿論、魔法による攻撃も防いでくれるのじゃ」


「つまりさっきのテラーノのブレスで俺が燃えているように見えたけど、実際は俺の周囲に張られたバリアが燃えてただけってことか?」

「そういうことじゃ。おそらく、そのバリアはお主に密着して張られているはず、じゃからお主が燃えているように見えただけということじゃな」


 そういうことならもう少しバリアを離して張ってくれれば、衝撃で吹き飛ぶとかも無いようにできるのでは?

 防いでくれるだけでも助かるけど、どうせならそうして欲しかった。


「でも、待ってくれよ。俺は確かに熱さを感じたぞ? それはなんでだ?」

「熱や冷気といったものはお主の体を直接傷つけるわけではないから防ぎきれんということじゃろうて。おそらくじゃが、闇属性魔法が得意とする精神に直接作用する類の魔法も防げぬやもしれんのう」


 以外と抜け穴あるんだな……ちょっと残念。


「その指輪に関してはとりあえずそんなところじゃ。他に何か質問はあるかのう?」


 質問、質問かぁ……あ、そう言えば


「さっき魔族ならではの区分ってことで特上級があるって言ってたよな? 他にもそういうのってあるのか?」

「そうじゃな……他に区分があるとすれば、聖竜様と賢者が使っていた魔法は他に誰も使った前例が無いものじゃったから『超級』とされているくらいじゃ」


 魔族にとっても聖魔大戦の先導者にあたる二人は特別だってことか。

 なんというか、本当に神様みたいな存在だったんだな。


「ちなみにじゃが、ワシら竜族のブレスは上級に値するものじゃぞ。ついでにワシが使える特上級に値する魔法はおいそれと使えんから、見せろと言われても無理じゃ」

「ブレスですらかなりのもんだと思ってたのにその上があるのか……いつか、イコナも使えるようになるといいなって、おい!」

「……すぅ、すぴ〜」


 いつの間にやらイコナは立ったまま寝るという器用な真似をしていた。

 テラーノが何かを教えるとなると、す〜ぐコレだもんな……というか魔法関連の話だったらいつもは起きてたのに、ついに寝たか。


「はぁ、まったくワシの娘と来たら……」


 さすがのテラーノもコレには呆れたか?


「立ったまま寝るとは器用な上に、かぁわいいのう〜レストもそう思わんか? のう? 思うじゃろう!?」

「ハイハイ、ソウデスネー」


「ワイもとっても可愛いと思うで!」


 さっきまでブルブル震えてたくせに、イコナの話になった途端に元気になりやがったぞ、このスライム。


「うん? この可愛さがわかるか? ただの水滴モドキと思っていたが……やりおるな」


 何が『やりおるな』だ。


 そのままテラーノとライムはイコナが如何に可愛いか、ということで盛り上がっていた。

 例えばテラーノが昔のイコナの話をして、ライムがそれに対して興奮しているとかそんな感じ。イコナ本人が聞いたら恥ずかしくてたまったもんじゃないような内容だった。


「……なあヴォル、イコナを早く起こしたほうが良いと思うか?」

「ウー……わうわう」


「だよなぁ」


 ヴォルは少し悩むように唸った後、イコナへと近づきそのまま小突き始めた。

 被害が大きくなる前にイコナを起こすとしようか……。

優しい先生「私も本編への出番が欲しいです」


「いつか出れますって」


優しい先生「あなた次第なんですが?」


「いやあのホントごめんなさい」

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