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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第一章 土の国モンテスオロ編
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第二十四話:光竜と竜人




「なあロン、イコナが竜人族だってバレやすくなるってどういうことなんだ? 竜族としての魔力を手に入れたから魔力の性質が竜族寄りになってバレにくくなるんじゃなかったのか?」


 少なくともテラーノの話を聞いた限りではそんな感じだったはずだ。


「うむ、確かにイコナの魔力性質は以前よりも竜族……もとい光竜のソレに近づいた。だが足りぬのだ」

「足りない?」


「そうだ。先ほどイコナの魔力を感じた時には確かに光竜らしき魔力もあった。だがそれ以上に人族としての魔力のほうが色濃かったのだ。比べ物にならない程にな」


そうなのか……俺にはそこまで具体的に魔力を感知するなんてことできないから良くわからなかったんだけど、ロンが言うなら間違い無いんだろう。


「……コレでは、おそらく『魔族のフリをしようとしている人族』と思われるだろう。だがそんなことをする人族なぞ、我も見た事が無い。まずおかしいと思われるだろうな」


「だったらもう少し聖竜石の魔力を分けてもらえないか? 無理言ってるのはわかってる。でもそこをなんとか」

「それはできぬ。あの娘のためにもな」


 イコナの……ため?


「そもそもレストよ。何故イコナが竜人族とバレてはいけないか、テラーノから聞いているのか?」


「それは、もし竜人族ってバレたらお伽話のせいもあって皆から避けられちまうかもしれないから、じゃないのか?」


 大きな理由としてはそんな感じだったはずだよな。

 しかしロンは俺の言葉を聞いて呆れたような表情を浮かべていた。


「アイツめ、また悪い癖が出ているな……」

「悪い癖? それはテラーノのってことか?」


 まさか重度の親バカ以外にも欠点があったのか。


「うむ。アイツは昔から本当に重要な事ほど自分で抱え込んでどうにかしようとする節があってな。お前の話を聞く限りでは今回も一番大事な理由は隠していたようだ」


 おいおい、一番大事な理由こそ話さなきゃダメだろ。なんでテラーノはそんな事を……やっぱり俺を信頼しきってなかったのか?


 俺が俯いていると、ロンは優しげな声で喋り始めた。俺を気遣うように。


「安心するといい。テラーノが話さなかったのはお前にとって悪い理由があるからではない。ああ見えて仲間意識は強い奴だからな。お前にかかる責任を少しでも和らげたかったとか、そんなところだろう」


「それなら良いんだけど……それより一番大事な理由ってのは何なんだ? そもそも、なんでロンはその理由を知ってるんだ?」


「正確には我も知っている訳ではない。そもそも、そんな理由も無いかもしれん。だがある程度は推測できるのだ。レストよ、テラーノから聞いた理由だとイコナの正体がバレてはいけない理由としては少し弱いと思わなかったのか?」


 理由としては弱い……言われてみればそうだ。いくらお伽話が残ってるとはいえ、それ自体が遠い昔の話。そもそも竜人族が忌み嫌われていたのは、魔族と人間の仲が悪かったから。


 でも今は違う。まだ種族間の仲が凄く良くなったとは言い難いけど、それでも互いに歩み寄ろうとしてる。

 この国がそうだし、ロンが言うには水の国なんかはもっと交流が深いって。


 だったら本当の理由ってのは……?


「ロン教えてくれ。ロンが思う、本当の理由ってのを」

「いいだろう、お前には知る権利があるからな」


 そしてロンは俯き、少し間を置いて俺に向き直った。


「イコナが竜人族とバレてはいけない理由、それは光竜族だ」

「……待った。もっとわかるように説明してくれないか?」


 少なくとも今ので理解できる奴なんていないだろう。


「そのためにはお前がどれだけ光竜族……いや、その歴史についてと言ったほうが良いだろうな。それに関してはどれだけ知っているのだ?」


「光竜族の歴史? えっと、聖魔大戦が始まる前から一族で隠れ里みたいなところに住み始めて、外界との交流を絶ったってくらいなら知ってるけど、それがイコナの件とどう関係するんだ?」


 そりゃイコナだって光竜でもあるけど、それと光竜族の歴史なんて関係あるのか?

 まさか本当はイコナが光竜族の中でもお偉いさんの娘で……いや無いな。そんな事だったら今頃、大騒ぎになってるだろうし。


「そうか、ではあの者達が何故そのような暮らしを営むようになったかは知らぬのだな?」

「そうだな。もしかして、他の種族と揉め事があったとかそんな感じか?」


 ロンは首を振って否定の意思を示した。


「揉め事ではない。結論から言ってしまえば、光竜族の若い娘と人族の青年の間に子ができたこと。それを知った光竜族は外界との接触を断つことを決めたのだ」


 光竜と人間の間に子どもが? それってつまり竜人族……だよな。だとしたら……まさか!?


「その子どもがイコナだっていうのか!?」


「落ち着け。そもそもこの話自体、聖魔大戦よりも昔……我がまだ幼い頃の話だ。もしその時の赤子がイコナだとしたら、今の彼女は若すぎるだろう?」


「あっ、言われてみれば確かに。というかロン、もったいぶらずに早く理由を教えてくれよ」


 ここまで来たら気になって仕方ない。


「まあ、あまり焦らすのも酷というものだな。順を追って行きたかったのだが、要点をまとめるならば……もし光竜族の中でも上位に当たる、一族のまとめ役にイコナの正体がバレてしまった場合、イコナの存在を消そうと動き出す可能性が極めて高いからだ」


 ロンは淡々と語ってるけど、思った以上に物騒な理由だな!? 光竜族ってそんなに危ない奴らだったのか。


「光竜族が怖くなったか?」

「正直……そうだな。普段見てる光竜がアレだから、種族がどうこうってだけで殺しにくるとは思ってなかったよ」


 とてもイコナにその血が流れてるとは思えないくらいには驚いたし、ビビってますね正直。


「先に言っておくが光竜族の全員が物騒な連中というわけではないぞ。ただ自分達が使える魔法が光属性という珍しい魔法であり、竜族という強者たるべき存在……それ故に種族全体が非常に高いプライドを持っている傾向があるだけなのだ」


 ますますイコナと正反対に思えてきたんだが。本当にイコナは光竜の血を引いてるのか?


「そして、いきすぎたプライド故に自分達の種族こそ魔族の中でも至高、まして人族は生きている価値すら無いと思う者も多くいたそうだ。まあ聖魔大戦より前はそのような考えは魔族全体で見てもあったのだが、光竜は特にだな」


 イコナがアホの子寄りで良かったと心の底から思う。今だけは。


「一族という括りで見てそういった考えが多い中、人族との子ができたとあれば、どうなるかわかるな?」


 人間の存在そのものを認めないような種族と人間の子ども……ねぇ。


「普通に考えれば、その光竜は断罪、人間は殺されて子どもも場合によっては……ってところじゃないか?」


「そうだ。光竜族の誇りに泥を塗ったということで光竜の乙女と人の青年、どちらも殺された。しかし二人の元に産まれた竜人族の子どもだけは逃げ延びたという噂を聞いている。竜の血を引いているとはいえ、まだ幼い子がその後も生き延びれたのかは怪しいところだが、まあ真相は闇の中だ」


「じゃあもし、イコナが光竜の血をひく竜人族だってバレたら……」

「イコナの命が狙われるかもしれぬ。奴らは誇りや格式といったものにこだわるからな。場合によってはイコナを育てたテラーノをも狙うかもしれん」


 それはマズいな。テラーノがどれだけ強くても一族相手となるとさすがに無理がある。俺はそもそも戦力外だし……。


「結局のところイコナの正体は他の誰にも知られてはいけない。そういうことで良いんだよな?」


「そうだ。そして厄介なのは光竜族の眷属にあたる種族は我らと同じく普通に暮らしている。もしもその者らの耳に入ればそのまま光竜にもバレかねん」


 うっわ、めんどくさ……自分達は引きこもるけど部下には外の世界を監視させてるようなもんってことか。

 そうなるといつまでもイコナの正体を隠し通すってのは現実的じゃないな。


「だったらイコナを竜人族じゃなくて光竜族そのものにしてやるとかは出来ないのか? このまま竜としての魔力を集めたらどうにかなるとか、そういうのは?」


「それは無理だろうな。これから先イコナの魔力が光竜のソレにどれだけ近づこうとイコナは竜人族のままだ。例えるなら、水が入っているグラスに油を注いだとしてもグラスはグラスのままであろう? ソレと同じだ」


「……えっと、水が人としての魔力で、油が竜としての魔力として、そしてイコナがそのグラス……つまり器ってことか?」

「うむ。何を入れようが器は器のままであろう?」


「なるほどな。じゃあこれからも魔力を貰ったとしてもイコナの中身は限りなく光竜に近づくってだけで竜人族であること自体は変わらないってことだな」


「話が早くて助かるぞ」


 だったら魔力だけでも光竜に近づけてバレにくくするしか無い……か。テラーノにも相談したほうが良さそう、それ以前にテラーノは予想してたかもしれないか。

 だとしたら意地の悪いジイさんだぜ。


「この際だ。竜人族がどのような存在なのか、それも聞きたいかレストよ?」


「……そうだな。俺はイコナのことをある程度は知ってるつもりだったけど、ほとんど知らなかったんだって痛感したし、頼んでも良いか? 地竜王様?」


 少しおどけたようにロンへと語りかける。正直、俺には話が重くなりすぎてて、こうでもしないと押しつぶされそうなんだ。


「良かろう。では我の知っている限りを話すとしようか」


 ロンも俺の気持ちを察したのかさっきより柔らかい口調で返事をしてくれた。


 さて授業開始だ。


 ……そういえば、微かに聞こえてたイコナの声が聞こえなくなってるな……また何かやらかして無ければ良いんだけど。


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