第二十三話:竜少女の魔法
「それで? 魔法が使えそうって言ってたけど実際に使ってみた訳じゃないんだろ?」
「そうですね。でもでも、前にレストさんとやった特訓の時と比べて、なんかこう……いけそうな感じが凄いんですよ!」
遠回しに俺の考えた特訓が貶されてる気がするのは考えすぎだと信じたい。
なんにせよ意気込みは伝わってきた。主に尻尾の振られ具合から。
もしも尻尾がちぎれたりしたらトカゲみたいに生えてきたりするのかな?
……だとしても生えてくるのなんて見たいとは思わない。
なんかグロテスクな感じになりそうじゃない? 見たことないけど。
「ふむ。ならばイコナよ、まずはその使えそうな魔法を実際に発動させることができるかここで試してみよ。我も気になるのだ」
「そうだな。こういうのは試してみるのが一番だろ。それで使えそうな魔法ってのは何なんだ?」
まさかとは思うけどいきなり回復系の魔法が使えるようになったなんてことはないよな? もし使えたならイコナは光属性なら中級程度の魔法を使えるってことになる。
それはそれでなんか悔しい。俺は初級しか使えないんだもの。
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。私が今使えそうな気がする魔法……それは!」
「そ、それは?」
あの自信に満ちた感じ……まさか本当に回復魔法が使えるようになったのか!?
「わかりません!!」
「な、なんだそりゃあ!?」
如何にもな雰囲気出しやがって、俺の期待を返してくれ。
「……まあおそらく使えるようになっていたとしても光属性のなかでは最も簡単な『フラッシュ』だと我は思うぞ」
「フラッシュ! それはどんな魔法なんですか!? ロンさん!」
イコナはロンにグイグイ詰め寄っていく。
それに対しロンは若干後ずさりながら苦笑いを浮かべていた。
さすがの地竜王でも鬼気迫る表情で詰め寄られるとたじろぐらしい。
それとも地竜王たるロンをそうさせたイコナの気迫が凄いだけか?
「一言で言えば光を放つ、ただそれだけの魔法だ。体内の魔力を光そのものに変えてな。最初は体を光らせる程度しかできないかもしれんが、慣れれば掌の上などに光球を作り出して灯りとして使うこともできると聞いている」
「おお! 使いこなせれば灯り要らずで凄く便利そうな魔法じゃないですか! それで、どうすれば使えるんですか?」
「簡単だ。まずは体内の魔力を一点に集中させ、その魔力を光に変換するイメージと共に解き放つ。これで体から光を放つことは可能なはず。光球を作り出すのはまたコツがいると聞いたからな。まずは光を放つところからだ」
「なるほどなるほど。では早速……」
言うが早いか、イコナは目を閉じ集中し始めた。先ほどまでのはしゃぎ様からは想像できないくらい静かに。
それを見たロンは大事なことをしっかり教えようとしてゆっくり口を開いた。
だがその少しの間が命取りだった。
「早る気持ちもわかるが、注意点としてーー」
「フラッシュ!!」
「うおっ!?」 「んな!?」
イコナが叫んだ瞬間、まるで稲光のような眩しい光がイコナの体から放たれた。
「……やった、できた……できましたよ! レストさん! 見ててくれましたか……って、アレ?」
光が収まった後、イコナは喜びを共感したくて親友の名を呼びながらキョロキョロと周りを見渡す。しかし側に立っていたはずの親友は地面をのたうち回り、地竜王もまた両目を抑え蹲っていた。
「目があぁぁ! 俺の目があぁぁぁ!!」
「ぐおぉ……我としたことが、なんたる不覚……」
イコナはただ困惑していた。何故二人がそんなに苦しそうにしているのか、どうしてもわからなかったのだ。
「お二人とも、何があったんですか!?」
その後ある程度回復したレストから、もはや恒例となりつつある、お説教を受けることになるイコナであった。
♢♢♢
「参ったな。まだ目がチカチカする……」
「おそらく、ほぼ最大出力だったのだろう。とてつもない光だった……我もまだ影響が残っている」
「お話はちゃんと最後まで聞くように気を付けます……」
「こういう重要な時は特に頼むぞ。わかったな?」
「はい……」
気持ちはわからなくもないけど、もう少し周りのことを考えて行動して欲しい。
「まあなんだ、強烈なのを喰らうことになってしまったが、イコナが魔法を使えるようになったこと自体はめでたい事ではないか。叱るのはその辺りにして、祝おうではないか。なあレストよ?」
本当にロンは優しいというか器が大きいというか……。
「そうだな。おめでとう、イコナ」
「……ハイ! ありがとうございます!!」
さっきまでの落ち込んだ表情はどこへやら……でもまあ、イコナは笑顔でいてくれるほうが良い。
「あ、あのレストさん」
「ん? どうしたんだ?」
モジモジしてるのはさっきの負い目を感じてるからか? それとも……いや考えないでおこう。
「もう一回、フラッシュしてもいいですか?」
「ダメだ」
「即答ですか!? 今度はちゃんと控えめにやりますから! お願いします、もう一回だけ!」
……よっぽど光竜らしい魔法が使えるようになったのが嬉しいんだな。
「それじゃ祠の中でなら使ってもいいぞ。何回でもな。それで良いよな? ロン」
「うむ、今回は特別に許そうぞ」
「やった! ありがとうございます!」
イコナは一目散に祠の中へ戻り扉を閉めた。その直後からフラッシュと叫ぶ声が漏れてきた。何度も何度も。
「よほど嬉しかったのだな」
「そりゃあそうだろうよ。なんたって人である俺にすら教えてくれって言うほど、魔法を使うことに憧れてたんだぜ?」
「フッ、そうだったな」
ロンは静かに微笑んだ後、俺へと向き直り真剣な表情になった。
「だがめでたい事ばかりではない。イコナが魔法を使えるようになったということは、あの娘が竜人族だと周りにバレやすくなったということでもある」
「えっ?」
どういうことだ? 少ないとはいえ竜族の魔力を受け取ったから魔力的には竜族に近づいてむしろバレにくくなるんじゃ?
せっかくお祝いムードだったってのに……いや、考えるのはロンの話を詳しく聞いてからにしようか。
優しい先生「ちなみに光属性の魔法で主要なものを段階毎に挙げるなら、初級は光を放つだけ、中級で軽度の傷を癒したり殺傷能力が高いとは言えないですが光線のような攻撃、上級では複数の光の槍を放つ魔法などがあります。他にもありますが一般的にはこの辺りが思い浮かべられますね。テストに出るのでしっかり覚えておいてください」




