第三話:初めてできた友達
「……大体そんなところかな。俺も小さい頃からずっと学園生活だから、あまり外のことは知らないんだ。悪いな」
「そんな、謝らないでください。私の知らないことばっかりでとっても勉強になりました! ありがとうございます!」
俺が話している間、それに今もだが、ずっとイコナの目が輝いて見えた。
学園のこと、遠征で出かけた王都のこと。俺もあまり多くは知らないけど、それでも喜んでもらえたようでなにより。
「そう言ってもらえると、話した甲斐があるってもんだ」
ここ最近、笑顔を浮かべるなんてことはなかったが今は素直に笑えている、そんな気がする。
「ところでレストさんはどうして小さい頃からずっと学園で暮らしているのですか?」
まあ、気になるよなそりゃ。この際だから話してもいいか。隠す理由も無いし。
「……俺は、俺のジイさん、魔道学園の学園長に拾われたんだ。赤ん坊の時にな。そんでこれは聞いた話だけど、どうやら俺はこの森で放置されてたらしい。ジイさんが大きな魔力を感じて、その原因を調べてたら俺を見つけたんだと」
我ながら信じ難い話だけど、俺の体内魔力量が常人より多いのは事実だし獣は本能的にその魔力を感じとって襲ってこなかったんじゃないかって話だ。
まあ、だからこの森で放置されていたのに俺は生きていたってくらいしか説明できないのも事実なんだよなぁ……そこらへん説明するのはめんどくさいから無しで。
「それじゃあレストさんもお父さんとお母さんを知らないんですか?」
イコナは何も気にしてないという風に聞いてきた。
今の話を信じたのか?普通は信じられないだろ……いやこの娘は普通じゃないんだった。色んな意味で。
「俺もってことは、イコナもそうなのか?」
「……はい。私も物心ついた時にはお父さんもお母さんもいなくて、ずっとおじいちゃんと二人で暮らしてきたんです。だからなんだかレストさんには親近感が湧いてます」
親近感……ねぇ。確かに俺も思うところは多い。だからこそ、イコナとは会ったばかりなのにまるで昔から知っているみたいに話してるのかもな。
「……あの、もし良ければ色々教えてもらったついでに、と言ったらなんですけど……」
ここまでハキハキしていた彼女とは打って変わったな。何か頼み難いことでもあるのか?
「どうしたんだ?俺にできることなら相談に乗るぜ。乗りかかった船だし」
「本当ですか!?」
イコナがまた輝くような笑顔になった。分かりやすいな〜この娘。
「で、では! お願いしちゃいます。お願いしちゃいますよ!」
「わかったから。ほら、早く言ってみな?」
イコナは深呼吸して、よしっ! と意気込んでいる。
そんなに頼み辛いことなのか? あまりめんどう過ぎないことで頼むぞ?
「わ、私に! 魔法を教えてくだしゃい!」
……かんじゃったよ。凄く準備してたのにかんじゃったよ……。
顔赤くして、泣きそうになっちゃってるし……。
「……えっと、魔法を教えて欲しい、ってどういうことなんだ? 魔族ってのは種族ごとに決まった魔法を生まれつき使えるものだって聞いたんだが」
確か竜族なら共通で、人の姿への変身魔法。飛翔魔法。そして竜族の象徴ともいえるブレスが使えて、後は種族ごとに持ってる属性の魔法を使えるはず。
イコナは光竜だから、光属性になるのか。人でも魔族でも使える奴は多くない属性。正直羨ましい。
俺が思い更けてると、イコナがゆっくりと口を開いた。
「本来なら、レストさんの言う通り魔族なら誰でも魔法を使えます……でも私は違って、変身魔法は普通に使えるんですけど、飛翔は長い時間使えませんし、ブレスとか属性魔法は一切使えないんです」
竜族なのに魔法が使えない? それはーー
『魔導学園の生徒なのにロクな魔法が使えないなんて、クズにもほどがあるだろお前』
……クソっ嫌なもん思い出しちまった。
「ごめんなさい……こんなこと話されても困りますよね。忘れてください」
イコナはぎこちない笑顔を浮かべている。
多分、俺と同じような思いをしてきたんだろうな。
「……わかった。俺にできることなら協力する。だからそんな顔すんな。な?イコナ」
「……本当、ですか?」
「当たり前だろ? 俺達はもう友達だ。友達なら困った時は助け合おうってな」
俺はイコナに笑顔を向けた。彼女は俺の顔を見つめたまま呆然としている。さすがにいきなり友達宣言はマズかったか……?
「……うっうわあああぁぁん!!」
突然、イコナは涙を流して泣き始めた。
「い……イコナ!? どうした!?」
大泣きするほど友達になるのは嫌だったか!?それはそれで俺も泣きたくなるんですけど!?
「ごめ、ごめん……なざい。わだじ、友達、だなんで、いわれだごと、な、なぐで……グス、嬉しく、て……ひっく」
嗚咽混じりで凄いことになってるぞ……あ〜そのうえ、せっかくの美人さんが涙やら鼻水やらで顔がぐちゃぐちゃだ。
「ほら、大丈夫だから。もう泣くなって。」
慰めるために彼女の頭を優しく撫でた。ふむ。サラサラで良い触り心地……。
「あ、ありがとうございます。ちょっと落ち着いてきました。あ、あと……その、少し恥ずかしい……です」
「ん?あっ、ご、ごめん……」
撫でるのをやめて少し離れる。慰めようとして、とは言えさすがに初対面でナデナデするのはダメだったかなぁ。しかし、あの触り心地を楽しめたのは俺としては嬉しい。
「いえ、気にしないでください。こっちこそ、いきなり泣いちゃってごめんなさい」
イコナは顔を少し赤くしてうつむいていた。泣いたせいか、それとも俺が撫でたせいか?
両方だな。うん。
「……あの、本当に協力してくれるんですか?」
真剣な表情でイコナは俺に問いかけてきた。
そんなの決まってるだろ?
「ああ、もちろん。ただ、俺も朝になったら学園に行かないといけない。だから夜が明けるまでは、猛特訓だ!」
「……ハイ!レストさん、よろしくお願いします!」
正直、魔族に魔法を教えるなんて思ってもみなかったけど、まあなんとかなるだろ。とにかくこの娘に満足してもらえる程度には頑張ってみよう。
補足になりますが レストは初級魔法しか使えないからという理由で周りの生徒から軽蔑されてきました。その為同年代の友人はいません。
本文で書いた方が良いと思うんですけど、これも書いてたら長くなりすぎてしまう気がしたので、こっちで補足しときます。




