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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第一章 土の国モンテスオロ編
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第十九話:少年の絶望、少女の歓喜

「それで、協力って言っても俺は何をすれば良いんだ?」

「えっと……何とかしてロンさんの目を眩ませたりできませんか?」


「残念ながら俺は光属性の魔法なんて使えないぞ?」


 どっちかというとイコナが使えそうなもんだけど……無理なもんは無理だよな。


「なんでも良いんです。光じゃなくても……一瞬だけ眼を塞ぐようなことができれば……さっきロンさんが作った岩の壁みたいな……いえ、壁じゃダメなんでした。とにかくロンさんが周りを見えなくなるようにできませんか?」


 そうは言ってもなあ……岩の壁みたいに、見えなく……目隠し? 材料は……すぐそこにあるな。


「……ほんの一瞬だけになるかも知れないけど、手はあるぞ」

「ホントですか!?」


 うっ、そんなに強い期待の眼差しを向けられると、もしもの時を思ってちょっと不安になるんだが。


「ああ、ただ準備に少し時間がかかるのと、できた物をロンに向かって投げつける必要がある。だから、準備してる間バレないようにするためにロンの気をひいてもらうのと、できた物を投げつけること。この二つをイコナにお願いすることになるぞ」


「そこは任せてください! それに、私の作戦では、ロンさんの目が見えなくなった時に、私がレストさんの近くにいる必要があったので!」


 ……ん? なんでイコナが俺の近くにいる必要があるんだ? 弱点を攻撃するんなら、ロンの近くにいるべきなんじゃ……?


 良くわかんないけど……イコナの表情は自信に満ちてるみたいだし、間違ってはないんだろう。問題はその自信が空回りしないかだな……上手くいくといいんだけど。


「じゃあ、作戦開始です! お願いしますねレストさん!」

「あっ、おいイコナ! ったくもう」


 言うが早いか、イコナは竜人の姿のままロンへ向かい飛んでいった。


「どうやら策を考えたらしいが……小手先程度では我に通用せぬぞ?」

「そんなの、やってみないとわからないですよ!」


 イコナはロンの顔近くを飛び回り始める。


 二人の体格差故にそれはまるで、人の顔近くを小蝿が飛び回るかのように見えた。

 ロンとしてもそのまま好き勝手にさせるだけというわけにはいかないので、捕まえようとするのだが逃げに徹するイコナはなんとか避け続けていた。


「なかなか器用に飛ぶではないか。だがそれだけでは我にダメージを与えるなど夢のまた夢だぞ」


「そうとも限りませんよ? どんなに硬い岩だって攻撃し続ければいつかは壊れるものです。私はそうやってレストさんのお部屋を作りましたから……油断してたら痛いの一発、いきますよ?」


 二人がそんなやりとりをしているのを尻目に、レストはただ自分の役目を果たそうとしていた。


「……さっきは避けるのに苦労させられたからな。今度はせいぜい役に立ってくれよ?」


 ロンが俺を攻撃するために作り出した岩の剣、イコナがその上に落ちたせいで砕け散ってくれてて助かったぜ。

 おかげで材料そのものを作るなんて手間をかけないで済む。この砕けて小さくなった破片やらを土魔法で砂状にしてっと。

 後はこの砂に水をかけて泥にして……意外と疲れるなコレ……最後にこの泥を土魔法で少し固めて泥の塊を作る。


 これを繰り返してロンの顔と同じくらいの大きさの泥団子を作れば、多少の目眩しはできるはず。


 作業を何度か繰り返し、いくつもの岩の剣だった破片は巨大な泥団子へと姿を変えた。


「……よし! イコナできたぞ!! コレをぶん投げてやれ!!」

「待ってました! 後は任せてください! あっ、レストさんはとりあえず目をつぶっててくださいね!」


 ……なんで目をつぶってなきゃいけないんだ? もしかしてイコナはいつの間にか光の魔法を使えるようになってたとか!?


 いやだとしたら、俺がただ泥遊びしてただけになるし……なんでだ?


「レストさん!」


 俺が最後に見たのはこっちに向かって飛んでくるイコナと、それを振り向きながら目で追うロンの姿だった。

 まあ、目をつぶるのは良いけど何をしでかすつもりなんだ……?


「……泥の塊? 何をするつもりだ?」

「いっきますよー!!」


 レストの横にある巨大な泥団子を見て、さすがのロンも訳がわからず一瞬だが気を取られてしまった。


 その隙にイコナは泥団子を持ち上げ、ロンの顔目掛けて力の限り投げつけた。


「ぶふぉ!?」


 泥団子は見事にロンの顔に命中し、ロンの顔は泥で覆われた。


「やった! ここまで予定通りです……後は!」


「……目眩しのつもりか? だが我は地竜、この程度は魔法ですぐに払えるぞ!」


「もう遅いです!」


 ロンが魔法で顔の泥を払おうとする。イコナはそれよりも早く、目をつぶったままのレストの足を片手で掴み、軽々と持ち上げた。


「……えっ? ちょっ、イコナ? 何やってんだ!?」

「ごめんなさい、レストさん! コレしか無かったんです!!」

「おま、何言ってーーうわああああ!!!」


「ふん、これしき造作もない……うん?」


 ロンが泥を払うのとほぼ同時に、イコナはレストをロンの下腹部目掛けて投げた。


 それはもう思いっきり投げた。


 まずロンが目にしたのは、綺麗なフォームで投げ終えたイコナの姿だった。

 そしてその先、もとい自分の方へ飛んでくるレストを見てロンは訳がわからなくなった。


「ああああぁぁ!!」


 レストはただ一直線にロンへ向けて飛んでいく。まるで低空飛行をする鳥のように。

 そしてつい目を開けたレストは気づいてしまった。自分がどこに向けて投げられたのかを。


 ああ、そう言えば男にとっての弱点だって言ったっけ……覚えててくれて嬉しいよイコナ。


 レストは悟りを開いたような表情になり、自分の中の大事な何かが崩れるような音を聞いた。


 そして勢いそのままに顔面からロンの股間へと激突する。


「っぐう!? おおぉぉぉぉ……!」

「大当たりです!!」


 ぶつかる瞬間、レストの指輪の効果はもれなく発動した。しかも今回はその勢いと、ぶつかった先がこの世界でもトップクラスの硬さを誇る甲殻とあれば、その効果も比例して跳ね上がるというもの。


 それが凄まじい勢いで股間にぶつかったロンがどうなるかなど、誰もが察せるだろう。


 こうして地竜王の試練は、その巨体をうずくまらせ悶える地竜の王……その足下で開き直り、それはもう良い笑顔で絶望する少年と、尻尾を大きく振り歓喜する竜少女を残し一段落を迎えたのだった。

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