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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第一章 土の国モンテスオロ編
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第十八話:竜少女の秘策?

「それで、レストさん。ロンさんの魔核……でしたっけ? それはどこにあるんですか? やっぱり、ゴーレムさんと同じ辺りですか?」


「……は?」


「ですから! ロンさんの弱点の魔核はどの辺りにあるんですか? レストさんは知っているのでしょう?」

「んなもん知ってるわけないだろ!? そもそもロンには魔核なんて無い!」


 仮にあったとしてもその魔核を攻撃するためには、あの硬すぎる甲殻をどうにかしなきゃいけないんだから結局ダメだろ。


「そんな! じゃあやっぱりロンさんには弱点なんて無いじゃないですか!」


 なんでそうなる!?


「待て待て、最後まで話を聞け!」

「……わかりました」


 よし、落ち着け……一旦落ち着け俺。冷静に……冷静に。


「いいか? ロンの弱点、それは背中の大きな古傷だ。そこになら攻撃が通るはず……俺の魔法程度じゃ効かないかもしれないけど、イコナの攻撃ならいける。きっとな」


「背中の大きな古傷……ですか? 見たような、見てないような……でもとりあえずわかりました。まずは背中に回り込めるよう頑張ってみます!」


 イコナはやってみせると息巻いていた。


 竜の姿で少女のように振る舞うので見た目と行動のギャップが激しいんだが……まあイコナは竜人族だし?


「レストよ、良くぞ覚えていたな。我はてっきり忘れたか、そもそも聞いていないものだと思っていたぞ」

「そんなわけないだろ? 地竜王様のありがた〜いお言葉だぜ?」


 ただ、思い出すまでにちょ〜っと時間がかかってたってだけさ。

 ……今思えばあの時、ロンが自分の弱点を話したのは、今この時のためだったんだろうな。ロンなりの優しさってとこか。


 どうせなら、もっとわかりやすい優しさが欲しかったかな。例えば、これ以上無いくらい手加減してくれるとか。今でも充分手加減してくれてるんだろうけど。


「さあ、ここからが本番です!」


 イコナは翼を大きく広げ、ロンに対して回り込むように飛んでいく。

 だがロンもそう易々と回り込ませるつもりは無いらしくーー


「貫け! 大地の剣よ!!」


 ロンが両手を地面につき咆哮をあげた。


 すると、回り込もうとするイコナの下から先ほどの岩の剣とは、比べようもないほどに巨大な岩石の剣が襲いかかる。


「そう、簡単にはっ! 当たらないですよ!」


 イコナは襲いくる岩石の剣を左右に、更に上にと避けていく。

 しかし避けることに集中しているせいか、なかなかロンの背中に回り込めずにいた。


「むぅ、じれったいです……」

「落ち着け! イコナ! 焦ったらロンの思うままだぞ!」

「そうですけどぉ……」


 はやる気持ちを抑えつつ岩石の剣を避けていく。


 その間に一瞬、イコナとロンが一直線に並んだ。


「……ここです!」


 イコナは岩石の剣の合間を勢いよく翔けていく。


「そう、上手くはいかぬぞ?」

「っ!? 危なかったです……」


 ロンがニヤリと笑い、イコナの前方に岩壁が立ち塞がった。

 それに対し、急ブレーキをかけ激突する直前でイコナは止まることに成功した。


「そこで油断するようでは、まだ我には届かんな」

「嘘!? ダメ、避けきれーーあう!」


 イコナは岩壁から飛び出して来た岩石の剣への反応が遅れ、直撃は避けたものの脇腹の辺りにダメージを受けてしまった。


「イコナ! 大丈夫か!?」


「……この程度、擦り傷です! それよりも、もう怒りましたよ! ロンさん!」


 イコナはお返しと言わんばかりに岩壁を突き崩し、ロンへと一直線に向かって行った。


「正面から来るか、その意気や良し……だがそれでは我に一矢報いることはできぬぞ!」


 ロンはイコナを捕まえようと身構え、タイミングを見計らっていた。

 イコナはそれでもなおロンへと突き進む。


「……今です!」

「なに!?」


 ロンがイコナを捕まえようとしたその時、イコナは翼と尻尾の生えた少女の姿になり、ロンの手から逃れた。

 その勢いのままロンの背中へと回り込むことに成功する。


「背中の古傷……アレですね!」


 イコナが見つけたのは甲殻どころか鱗すらない、人の身長と同じほどの大きな傷痕だった。

 イコナは少女の姿のまま、その傷へ向け渾身の力を込めて殴りかかった。


「ふっ、我が弱点をそのままにしていると思ったか?」


「……そんな」


 ロンはイコナの一撃を受ける直前に、自身の古傷を先程の岩壁よりも遥かに硬い岩石で覆った。


 その岩石はイコナの一撃を受けてなお、ほんの少しヒビが入った程度でとても砕けそうにはなかった。


「確かにこの古傷は我にとって弱点であり、戒め……それは昨夜レストに話したな。だが、だからといって弱点を剥き出しになどせぬ。むしろその逆だ。弱点だからこそ守る……そういうものだろう?レストよ?」


「……ああ、確かにそうだな」


 ロンがイコナを気にせず、レストへと語りかける間もイコナは岩石を砕こうと殴り続けていた。それでも岩石が砕けることはなく、ほんの少しずつ、イコナの拳へとダメージが蓄積されていくだけだった。


「一度離れるんだ! そのまま攻撃しても拉致があかないぞ!」


「でも、ロンさんの弱点はここなんでしょう!? だったらこの岩が砕けさえすれば……」


「残念だが、レストの言う通りこのままでは拉致があかぬぞ……いやむしろ、イコナの疲労が溜まるだけ、と言ったほうが良いか」


 そのままロンが魔力を込めると、背中に纏った岩石のヒビ割れた部分が見る見るうちに修復されていった。


「そんな、これじゃどうしようも……いえ、まだです! 私は諦めません!」


 イコナはそれでもなお、岩石への攻撃を続けた。その先にある自分の目標を見定めて、ただひたすらに打ち込んでいく。

 ……しかし、徐々にイコナの拳の皮膚がうげていき、血が滲み始めた。


「頃合いか……」

「うっ……離して! 離してください!」


 イコナにされるがままになっていたロンが、その巨大な手でイコナを鷲掴みにする。

 それに対してイコナは必死にもがいてみるが一向に振り解けそうにない。


「そんなに放して欲しいか、ならば放してやろう。レストよ……しっかり、受け止めるのだぞ!」

「なっ!? うおわあぁ!!」


 レストは飛んでくるイコナを受け止めきれずに激突し、そのまま二人一緒に転がりこみ壁にぶつかった。


 ……ったく、何が『放す』だ。思いっきりぶん投げてるじゃねえか。


「痛た……あ、レストさん大丈夫ですか!?」

「俺よりイコナのほうが大丈夫じゃないだろ? 投げられたし……それにその手も」


 イコナの両手からは血が滴り落ちていた。


「……これくらい、なんてことないです! それよりもなんとかして、ロンさんに一撃をーー」


「もう辞めろ……」


 レストが静かに放った言葉の意味をイコナは理解できなかった。


「……レスト、さん?」

「……もう、戦うのを辞めろって言ってるんだ!!」


 レストの叫び……イコナは怯み、言葉に詰まってしまう。

 それでも最初から貫き通そうとした意志に従い、言葉を絞り出す。


「私は……まだ諦めたくないです」


「……ダメだ」

「どうしてですか!?」


「これ以上勝ち目の無い戦いに挑んで、傷つく必要なんか無いだろ! なのにどうしてお前は……」


 互いに感情の赴くままだった。


「勝ち目が無いことなんて無いです! レストさんが教えてくれた弱点さえ攻撃できれば……」

「でもその弱点は堅い防御に包まれた。それはお前が一番良くわかってるはずだ」


「……だったら、その防御を崩せばーー」

「崩せなかったからお前の手はそんなに傷ついたんだろう?」


「……それは、そうですけど……」


 イコナはすっかり気圧されてしまい、ただ黙って俯くことしかできなかった。


「……イコナ、お前は良く頑張ったよ。ただ今回は相手が悪過ぎた。弱点に一発当てれば勝ちとはいえ、あんな防御をされたらどうしようもないさ。他にも弱点があるなら……いや結局そこも防御されるか。とにかくお前は良くやった。今回は一度退いて、対策を立てよう」


「レストさん……今なんて?」


「だから今回は一度退こうってーー」

「いえ、その前です!」


「その前? その前って……」


「とにかく、私に考えがあります! もう一度だけ、私を信じてください!」


 イコナの眼から、揺るぎない決意のようなものを感じたレストは渋々イコナの願いを聞くことにした。


「わかったよ。でも、本当に次で最後だからな?」


「……レストさん、ありがとうございます!では、約束してください。私が何をしても許してくれるって、そして私に協力してください!」


 ……なんか凄い嫌な予感がするけど、ここは信じてみるか。


「ああ俺にできることなら協力する。それとイコナがもう怪我しないって約束できるなら、何してもいいぞ」

「約束します! やっぱり……レストさんは優しいですね」


 イコナは少し照れた様子でそう呟いた。


 ……さて、何する気か知らないけど、最後の賭けに乗ってやろうじゃないか。


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