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第二話:慌てる少女と困惑する少年

ここからは主に少年視点で進みます。

 

 待て待て待て……どういう事だ?


 ……落ち着いて整理してみよう。


 俺は魔法を当てる練習する為に、ウサギを追いかけていた。そうして草むらを掻き分けて行くと、金髪の少女に出くわして……目の前にいるその子が迷子だと言うから、ほっておいたら寝覚めが悪いと思い道案内をしようとした。


 そうだここまでは良い。なんでこんな真夜中に? とか疑問はあるがそれよりも重大な問題がある。


 その子には尻尾があった。それも月明かりを反射して金色に輝いているときた。もちろん俺はその尻尾について訪ねた。


 そうしたらその子は、突然叫んだと思えばえらく落ち込んで、そのままぶつぶつと何かを言い続けている。おじいちゃん……とか、怒られる……とか聞こえるが、まあそこは置いておこう。


 ……よし状況は整理できた。と言って良いのかは疑問だが……まあ良いや。とりあえず、どうしてこうなった……そしてここからどうする?


「もうダメです、お終いですぅ。おじいちゃんにバレたらどうなることか……考えただけでも恐ろしすぎますよう」


 良く分からないが自分だけで結論出てるみたいだし、ほっといて良さそうな気もする。


 ……それにしても、サラサラしてそうな金髪。整った顔立ち。女性特有の部分は人並みより少し目立っていて、それでいて全体的に引き締まっている。


 見た目は完璧なのに、さっきのことといい地面に膝をついて涙目になってるし……こう、凄く残念な奴に見えて仕方ないんだが? せっかくキレイで、立派な金色の尻尾もあるのに……いや待てよ、あの尻尾……もしかしてーー


「金色の鱗を纏った尻尾に煌めく金髪…まさか、光竜?」


「っ!」


 本で読んだことがある。竜族は全員、人間に瓜二つな姿に変身する魔法が使えて、その時は鱗の色がそのまま髪の色になる。

 そして竜族の中でも金色の鱗を持った種族は光竜のみ……なんで尻尾だけ隠せてなかったのかは分からないが、まあソレはソレだ。


「ううっ……やっぱり正体バレちゃってます……」


 あっもう隠す気ないんですね。光竜さん。というか本当に光竜だったとは。


 でも、どうしてこんな所に光竜がいるんだ?確か光竜は魔族の中でも数が少ない希少な種族で、滅多に姿は見れないって聞いたのに。


 いくら人間と魔族が仲良くしようとしているとは言え、こんな森の奥にたった1人でいるのは何か理由があるはず。

 ……そう考えると、めんどうな事に巻き込まれそうな気がしてきたぞ。

 よし、何も見なかった事にして今日は学園に帰ろう! 夜も更けてるしな! うん、それが良い。


「じゃ、じゃあ俺はこのあたりで……」

「っ! 待ってください!!」


 ガシッ!

 ドスン!


 クッソ……派手に転んだな……前のめりに倒れたせいで、背中側以外のほぼ全身が痛い。


「まったく、なんなんだよ……」


 見れば少女がうつ伏せになりながら俺の片足を鷲掴みにしていた。見た目は少女だけど本来は竜族だからか、力が強く振りほどけそうにない。 というか握り潰されそうなくらい痛い!


「痛ダダダ!! どこにも行かないから離してくれ! 足がただの肉の塊になっちまう!」


「ご、ごめんなさい! 加減がわからなくて、つい……」


 掴まれたところが酷く赤くなっている。おまけに痛みがひく気配がないぞ……離されるのがもう少し遅かったらと思うと恐ろしいな……さすが竜族。っと感心してる場合じゃない。


「……それで? 待って欲しいってのはどういう事なんだ? 言っておくが俺はただの人間だぞ?」


 この際覚悟を決めて事情を聞く他ないだろう。下手に逃げようとしてまた握り潰されそうになるのはゴメンだ。


「はい、実は……」


 彼女は正座をして話始めた。




 ♢♢♢




 彼女の事情を要約するとこうだ。


 おじいちゃんにあたる竜に人間に見つからないことを条件に外出を許可してもらっている。

 その竜はとても厳しい性格なのでもし人間に見つかったことがバレたらどうなるかわかったもんじゃない事。


 そして、俺に正体がバレてしまい人を呼びに行くんじゃないかと思い俺を止めた。


 大体こんな感じだ。


 つまるところ、お仕置きされたくないが為に俺の片足はただの肉塊にされかけたって訳か。まったくもって最高だな、ちくしょう。


「そういう訳なのでお願いします! 他の誰かに私のこと、絶対に話さないでください!」


 彼女は正座をしたまま勢いよく頭を下げて、地面に穴をあけた。


 ……ワザとなのか? いや、おそらく素でやってるんだろうな。そんな気がする。


「事情はわかった。別に悪い奴って訳じゃなさそうだしな。俺は今日何も見てないし、何も聞いてない事にする。ソレで良いか?」


 俺自身、別にどうこうしようって思ってた訳じゃないし。

 それに希少な存在と言われる光竜に会った、なんて学園で話そうものなら質問責めにされた挙句、いつものアイツらがなにかしらの文句を付けて突っかかって来るに決まってる。そんなのはゴメンだ。


「良いんですか!? わぁ、ありがとうございます!ほんっとうにありがとうございます!! 出会ったのがあなたみたいな優しい人で本当に良かった……この恩は一生忘れません!」


 エラい感謝されてるな……悪い気はしないが大げさ過ぎないか?

 文字通り輝くような笑顔だから本気で感謝してるのは間違いないんだろうが、なんとも言えない気分だ。


「落ち着けって。手を握ってそんなに勢いよくブンブン振られたら千切れちまう」


 光竜は威厳ある堂々とした存在だっていう俺の中でのイメージが音を立てて崩れさっていく。なんだかなぁ。


「あっ……ごめんなさい。つい嬉しくて嬉しくて、悪気はないんですよ!」


 むしろ悪気がない分、たちが悪いぞ。


「そういえば自己紹介がまだでした。私はイコナといいます。もうバレちゃってますが、光竜ですよ!もし良ければ人間さんのお名前も教えてもらえませんか?」


 なるほど、自己紹介と来たか。このタイミングでとはマイペースここに極まれりと言っても良いだろう。なんというか、この様子だとおじいちゃんとやらが厳しめに接するのも分かる気がする。


 まあとにかく、名乗られたら名乗り返すのが礼儀だな。


「俺はレストっていうんだ。この森を抜けたところにある魔導学園の生徒さ。この制服が証明な」


 彼女……いや、イコナは俺の自己紹介を聞いた途端に興味津々といった顔で詰め寄ってきた。


「レスト、レストさん……ですね。そうだ、レストさん! 良ければ学園のこととか、人間さんの国のこととか色々教えてもらえませんか? 私、住んでる洞窟とこの湖くらいしか行ったことないのでもっと色々な場所のこと知りたいんです!」


 これまた唐突だな。まあコレも何かの縁ってヤツだろう。イコナ自身は良い奴みたいだし。中身が少し……いやかなりポンコツなところがたまにキズだが、それはまあご愛嬌ってことで。

 どのみち足の痛みが引くまでは動けそうにないし。ちょうどいい。


「それなら、どこから話そうかな」


「最初からでお願いします!」


 ……今夜は長くなりそうだ。

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