第九話:少年と竜娘のダンジョン攻略
「じゃあ……開けるぞ」
「ハイ、レストさん」
俺は少し震える手を扉の取手にかけた。啖呵を切ったは良いけどこれじゃ先が思いやられるな。いやいや何を弱気になってるんだ。
「……って、アレ?」
「どうしたんです?」
ガチャガチャ
「開かないんだけど……」
「ん……? ああ! すまんすまん。お前達を見てたら鍵開けるの忘れてたぜ!」
「えぇ……」 「そんなぁ……」
「悪い悪い。そういや試練達成の条件も伝えてなかったな」
言われてみれば確かに。ダンジョンを突破するのは間違いないんだろうけど。
ガルドは扉の鍵を開けながら口を開いた。
「ダンジョンを突破してもらうのは変わり無いんだが、その証明として証を取ってきてもらう。証はダンジョンの一番奥で番人が守っている。そいつを倒せば証は手に入るぞ」
「番人、ですか。わかりました、やってみせますよ!」
「気合充分だな。さて今度こそお前達の挑戦開始だ。さっきも言ったがくれぐれも無茶はしないように」
ガルドが重い音を立てながら扉を開く。その先にはいかにもな雰囲気を放つ一面石造りの広めな一本道が続いていた。
俺とイコナは慎重にその道へと足を進める。今回ばかりはイコナも緊張しているみたいだな。
「……気をつけてな」
ガルドの言葉を背に俺達は奥へと進んでいった。
♢♢♢
「いいかイコナ、ガルドも言ってたけどこのダンジョンは仕掛けや罠があるんだ。だから不用意に何か触ったりするのは絶対ダメだぞ」
俺の先を行くイコナに注意をしながら一本道を歩く、もう三回目だったか。しつこい気もするけど、イコナだし。
「わかってますって、もうソレ聴き飽きましたよ。いくらなんでも危険があるってわかりきってるのに変なことするほどバカじゃないです!」
自信があるのは良いんだけど……出会ってからのイコナの行動を思い返してみると、不安なんだよなぁ。
「あれ? ここ一箇所だけ床の石が出っ張ってますね」
まあでも場所が場所だし、いくらイコナと言えど自重してくれるか。あまりしつこく言ってムキになられたら、それこそ危ないし。注意するのは今ので最後にしとこうか。
「私やレストさんはコレに躓いてもそこまで問題無いですけど……後から来た誰かが躓いてケガしてもいけないですし、直しておきましょう」
「イコナ、俺が悪かった。ちょっと気を張りすぎてたよ。だからもうーー」
カチッ
「……イコナ? 今のカチッて何の音だ?」
「あっハイ、一箇所だけ床の石が出っ張っていたので誰かが躓いたらいけないな〜って思って、はめ直そうとしたんですけど、カチッてすんなりはまってくれたんですよ」
良いことをしたと思って気持ち良さそうな笑顔を浮かべてるのは良い……でもな。
「そんなあからさまな罠に引っ掛かるやつがあるかー!!」
「ええ、コレ罠だったんですか!? でもあまり人が入らないダンジョンらしいですし、ただ単に整備が行き届いてないとか……」
「仮に整備されてないとして、床の石が踏まれて凹むとかはあったとしても一箇所だけ出っ張ることは普通無いだろ!」
「……確かにそうですね!」
……ダメだ。言葉が出ねえ……ってそれよりも、今ので何か罠が起動したはず、一体何が起こるんだ?
「ん? レストさん奥から何か大きな音が近づいてきますよ!」
「本当か!?」
……確かにだんだん大きくなってくる音が聞こえる。これは、もしかして……?
「イコナ、マズいぞ! 多分大岩かなんかが転がってくる音だ!」
「ええ!? ど、どうしましょう? ここ一本道だから避けようがないですよ!」
クソっ! どうする……いっそ帰還石を使って一度戻るのも手か? どうせまだダンジョンに入って間もないし……いや待てよここはあくまでも誰かを試すために作られたダンジョン。だったら何かしらの避ける方法があったりしてもおかしくはない……よな?
「ああ! レストさん! 岩が、この一本道と同じくらいの大岩が!」
「もう来たのか! って結構早いなあの岩!」
迷ってる暇は無い……だったら……ん? 待てよ、あの壁……窪みがあるな。
「イコナ! 壁に窪みがある! そこに隠れるんだ!」
俺は壁にあった窪みに隠れながらイコナへと叫んだ。反対側にも窪みがあるからそこに隠れればやり過ごせるはず……危なかった。
「こうなったら……賭けです!」
「おい! イコナ何やってるんだ!」
クソっ! 大岩に気がとられて周りが見えてないのか? 通路のど真ん中に立ってたら轢かれちまうぞ!
イコナには俺の声が聞こえていないらしく、大岩の方を向いたまま右腕を後ろに引き、息を整えていた。
そのまま大岩とイコナがぶつかるその瞬間だった。
「はああぁぁぁ!!」
大きな鈍い音が辺りに響いた。イコナの正拳突きと大岩がぶつかった音だ。
そして大岩は砕け散りそこには傷一つ無いイコナが立っていた。
「ふぅ〜、危なかったですぅ……ってあれ? レストさん? どこですかー!?」
「……ここだよ、ここ」
俺は窪みから出てイコナへと手を振る。イコナは安心した表情でこっちに駆け寄ってきた。
「良かった! レストさん無事だったんですね! びっくりさせないでくだーーあう!? なんでゲンコツするんですかぁ……」
「びっくりさせるなってのはこっちのセリフだ。イコナが大岩の前で構えた時には、そのまま轢かれてしまうんじゃないかって気が気じゃなかったんだぞ」
「あっ、えっと、その……ごめんなさい。私のせいであの岩が転がってきちゃったんだから、どうにかしないとって思って……レストさんに危ない目にあって欲しくなかったから……」
……まったく。だからと言って無茶しすぎなんだよ。
「ありがとう、イコナ」
「……えっ?」
「だから、俺のためにあんな無茶したんだろう? だったらお礼の一つは言わせてくれよ。でもな、さっきみたいな危ない時こそちゃんと周りを見て、俺の言葉を聞いてくれよ? 窪みに隠れれば二人とも無事にあの岩をやり過ごせたんだから」
「……はい」
「わかったなら、よし! それでケガは無いよな?」
「ハイ大丈夫です。レストさん程じゃないですけど私だって竜族の端くれ、体は丈夫ですよ!」
いつもの調子に戻ってくれたかな? やっぱり立ち直りの早さはイコナの凄いところだな。
「それじゃ先に進むとしようか。ああそれと、ここから先はもし何か怪しいものがあったりしたらすぐ俺に確認すること、良いな?」
「わかりました。同じ失敗はしませんよ!」
俺は俺で後ろをついて行きながらイコナのことをちゃんと見とかないとな。さっきだってちゃんと見てれば止められたはずだし。
……よく考えたら俺は指輪のおかげであの岩にぶつかったとしても無傷でいられたよな?つい忘れがちだけど……まあ安全第一で行くのが一番だよな。よし! そうだ間違いない!
さて先はまだまだ長いだろうし頑張っていこうか。




