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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第一章 土の国モンテスオロ編
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第二話:新しいお友達?

「よし、コレで下処理はできた」


 血抜きする時に水魔法が使えるとやっぱり便利だな。もし無かったら血を洗い流せなくて俺や周りが血生臭くなっちまう。


「後は、食べない部分を土魔法で埋めてっと」


 弱い魔法も使い方次第ってな。野営訓練の時もおかげで楽できたっけ。


 なんとか暗くなる前には処理できて良かった。陽の傾き具合からして今は夕方か。背が高い木のせいで見え辛いけど多分合ってるだろう。


 ……となると、処理し始めてから割と時間経ってるのにイコナの帰りが遅いな。まさか迷子にでもなったとか……いやさすがにそれは無い、よな?


 俺が大声でイコナを呼ぼうとしたその時だった。


「レストさーん! 見てください、新しいお友達ができましたー!」


 背後からしたその声に振り返ると、例の狼型の魔獣に乗ったイコナがそれは嬉しそうな顔で手を振っていた。


「待て待て、どういう事だー!?」



 ♢♢♢



「つまり見回りをしてたら偶然、その魔獣と再会して隠し持ってた干し肉をあげたら更に懐かれた。そういうことか?」


「そうですね〜。その後ナデナデモフモフしてたら、ついて行くって言ってくれたのでせっかくだから乗せてきてもらったんです。ね〜ヴォルちゃん。よしよし〜」


「わふ〜」


 そう言いながらイコナは傍らで寝そべっている狼魔獣(ヴォルちゃん)を楽しそ〜に撫でていた。

 狼魔獣(ヴォルちゃん)もあの時と同じように、いやあの時以上に甘えているように見える。


 さて、ツッコミどころが多すぎてどこから触れたもんか。

 名前付けて可愛がるのは良いけど、そもそも魔獣ってそんな簡単に懐くもんなのか? 確かに聖魔大戦の時には魔獣を従えた魔族もいたとか聞いてるけど。


 それに言ってることがわかるって普通あり得ないはずだ。いくら魔獣とはいえ、獣は獣。喋ることなんて出来ないはずだし。イコナが動物語? みたいなのに詳しいとかそんなわけないだろうし。


 ダメだ……頭ん中で整理がつかねぇ。一つずつイコナに聞いて解決したほうが早いか。


「ん? どうしたんですかレストさん? そんな重い悩みを抱えたような顔をして」


 イコナは撫でる手を止め心配そうに尋ねてきた。


「誰のせいだと思ってるんだよ……」


「ふぇ?」

「わふ?」


 揃って素っ頓狂な声あげられるとは……ペットは飼い主に似ると言うけど早すぎませんかね。


「見回りに行ったと思ったら大型の魔獣をペットにしてきました〜なんて言いながら帰ってくるなんて普通思わないだろう?」


「ペットじゃないです。お友達です!」


 そこ拘るのな……まあいいや。


「悪かったよ。それで、その魔獣に関して色々聞きたいんだけど」

「そうでした。ちゃんと紹介してなかったですね。この子の名前はヴォルフガング・ブラックモフ・タスクーナって言うんです。ヴォルちゃんって呼んであげてください」


「あ〜そのヴォルフ……なんとかってのは種族名か何かなのか?」

「いえ、この子の名前ですよ? 私がつけたんです。種族名とかはわからないです。あ、ちなみに見てわかると思うんですけど、女の子ですよ」


 いやいや、なげーよ! そんな長い名前付ける必要無かっただろ。しかも名前からしてオスかと思ってたのに女の子って……それにパッと見じゃオスメスの見分けなんてつくわけ無いぞ普通!


 見てわかることっていったら……せいぜい背中側は黒、腹側は白い毛の大きい狼ってことくらいだ。


 ……これじゃ聞けば聞くほど余計にツッコミどころが増えていく気がする。

 でも逃げちゃダメだ……ここで投げ出したら後で面倒なことになりかねない。


「あ〜その、なんだ。ヴォルちゃん……ヴォルでいいか。ヴォルも旅に連れて行くつもりなのか?」


「グルルル……」


 ヴォルが牙を見せながら唸ってきた。俺とイコナへの態度の差が激しいんだが?


「ヴォルちゃん。メッ! ですよ。レストさんは大事なお友達なんですから仲良くしてください」

「わう……」


「俺、嫌われるようなことしたか?」

「えっとヴォルちゃんは『キヤスク、ヨブナ、コゾウ』って言ってました」


 いきなり小僧呼ばわりとはなかなか偉そうな奴だな。というかイコナはなんでヴォルの言ってることがわかるんだ?


「はい、それじゃ仲直りしましょう! さあ、レストさん」

「お、おいイコナ」


 イコナは俺の手を取りヴォルの目の前に連れて行った。ヴォルの表情が少しキツイものに変わっていく。


「ヴォルちゃんは撫でてもらうのが好きなので、レストさんもナデナデしてあげたらきっと仲良くなれるはずです」

「そう簡単にいくもんかな」


 イコナが見守るなか、俺は恐る恐るヴォルへと手を近づけていった。

 そしてもう少しでヴォルの頭に手が届く、その時だった。


 ガブッ!


「痛ったぁ! ……くはないんだった」

「レストさん!? 大丈夫ですか?」


 ヴォルが俺の手に噛み付いてきた。甘噛みなんてもんじゃない。思いっきり噛んで来た。

 この指輪がなかったら俺の手無くなってたかもな……やっぱりコイツとは仲良くなれそうにないかも。


「俺は大丈夫。ほら指輪のおかげでさ」


 良かった〜とイコナは胸をなでおろしていた。そのまま表情を険しくしヴォルの方へ向き直した時に


 ピキッ


「グルッ!?」

「なんだ、今の音?」

「音……ですか?」


 今確かにヴォルの口辺りから何かが割れるような音が聞こえた気がしたけど。


「わう……」


 ゆっくりとヴォルが口を開き俺の手を離した。その口の中に見える鋭い牙の一本がヒビ割れていた。


「あー! ヴォルちゃん大丈夫ですか!?」


 イコナがヴォルに駆け寄り、心配そうに折れた牙を見ている。

 まさか逆に折れるとは……この指輪の効果はやっぱり凄いもんだ。


「わうわう」

「『スグ、ハエカワル、ダイジョウブ』……? それなら良かったです。他に怪我は無さそう……ですね」


「グルルル……ガウッわう」

「なんだよ?噛んで来たのはそっちだろう?」


 イコナが心配そうに見つめる中、ヴォルは俺に向かって唸ってきた。

 そりゃ牙折れたのは気の毒だけどほぼ自分のせいだろう?

「『オマエ、キライ……デモ、ツヨイ、ミトメル』?どうやらヴォルちゃんはレストさんの事認めてくれたらしいですよ!」


 嬉しそうにしてるとこ悪いけど、今確かにキライって聞こえたんだが? やっぱり俺が人間だから嫌われてんのかな? それとも何か別の理由が?


 ……考えてもわからないし、今は認められただけマシだと思っとくか。


「さあ仲直りもできたことですし、ちょっと早いけどご飯にしませんか?」

「……そうだな。なんか疲れたし早いとこ野営の準備をして飯にしよう」


 仲直りできたか怪しいけどそこには触れないでおく。もうなんかホント疲れた……。



 ♢♢♢



「ふー美味しかったです! 焼いたお肉も良いですけど、この……お鍋? のお肉も美味しいです〜」

「それなら作った甲斐があるってもんだ」


 テントを張り終え、猪肉の鍋を食べ終える頃には辺りが薄暗くなっていた。

 ちなみに鍋は俺の土魔法によるお手製の土鍋だ。といってもそこら辺の土を魔法で固めて火で熱しただけの簡単な蓋なし鍋だけど。せっかくだからこれも持っていくことにしよう。どうせ革袋にはいくらでも入るんだし。


「さて、それじゃ今夜の見張り番をどうするか決めようか」

「わうわう」


 いつの間にか、生肉を食べ終えていたヴォルが何か言いたげに吠えている。いや言いたげっていうか実際に喋ってるんだった。


「えっ? 見張りを任せても良いんですか? でもヴォルちゃんも寝ないと……」


「わうわう」


「そこまで言うなら……わかりました。じゃあ今夜はお願いしますね」


 ダメだ。やっぱり俺からしたらただイコナが喋ってヴォルはわうわう言ってるだけにしか聞こえない……。


「ヴォルはなんて言ってたんだ?」


「えっとですね、一晩寝ないくらいは問題ないから見張り番してくれるそうです。それとこの林の中だとヴォルちゃんが一番強いらしくて、他の動物さんは近づいてこないんだとか」


「へ、へぇそうなのか。それじゃお言葉に甘えてお願いしようか」


 つまり、イコナはいつの間にかこの林の事実上の頂点に立っていたというわけだ。そこまで広い林じゃないけど、その中で一番強い魔獣を簡単に手なづけるって……う〜ん、イコナ恐るべしってところか。


「よし、じゃあ今日はもう寝よう! 旅の初日だからな、思ったよりも疲れてるはずだし」

「わかりました。じゃあヴォルちゃん後はお願いしますね」


「わふ」


 俺はそのまま現実から逃げるようにテントに入っていった。

 ……明日どうしようかな。一度テラーノに相談しに帰ったほうがいい気がしてきた。

モフモフって良いですよね。モフモフ。

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