第一話:魔獣と魔物と魔族と
今日は更新遅くなって申し訳ないです…
「張り切って行きますよー!」
イコナは張り切った様子で腕を回していた。交渉の結果、夜食べる食材を調達できたら今回は許すということになった。
元々イコナが肉や魚といった食材を調達して、俺が調理するっていう役割分担だったけど、まあいいや。
「張り切るのは良いけど、いつかみたいに殴り飛ばして見失ったは無しだぞ。今日の晩飯がかかってるんだからな」
「も、もう大丈夫ですよ。任せてください!」
「よし、じゃあ期待してるぞ。デカイやつ」
「ハイ! お任せください」
そのままイコナはピューっと林の中に消えて行ってしまった。
「あっ! おい……って、もう遅いか。俺も食べられそうな果物が無いか近くを探してみるか」
テラーノがくれた物の中に図鑑があって良かった。というかいつの間にこれだけ用意してくれたんだろ?
どうせ用意してくれるなら剣とか武器も用意してくれれば良かったのに。あるのは調理用らしきナイフくらいだもんな。
『どのみち戦闘はイコナに任せたほうが良かろうて』とかなんとか言ってたけど形だけでも武器が欲しかった。
♢♢♢
「どうですか? 食べ応えのありそうな猪ですよ」
「お〜コレは凄い。俺と同じくらいのサイズってことは魔獣になる直前くらいだったのかもしれないな。何にせよ、ありがとうなイコナ」
「ふっふっふ。これくらい出来ないと竜族とは言えませんからね」
澄ました顔をしてるけど、尻尾が勢いよく振られてるあたり嬉しいんだろう。テラーノが言ってた褒められて伸びるタイプっていうのは間違っていないのかもしれない。
「ところで魔獣になる直前だったかもってどういうことですか?」
「……さては、テラーノに教えてもらってる時に寝てたな?」
「うっ……ごめんなさい。普通の動物さんと違って強い魔力を持ってて、大きかったり身体能力が高いってことは知ってるんですけど」
打って変わってイコナはしょんぼりとして尻尾もヘタっと地面についてしまった。
「それじゃ良い機会だし、おさらいしておくか。この猪の処理をしながら説明するからちゃんと聞いといてくれよ?」
「ハイ、今度は寝ません!」
正座をして目を見開くのは良いけど、そのままこっち見られるとやり辛いんだが。
俺はなるべくイコナのほうを見ないようにしながら作業に取り掛かった。
♢♢♢
「つまり、まとめると動物さんが何かしらの要因で魔力を体に多く蓄えてなるのが『魔獣』魔力そのものが物質に集まってそのまま動き出すものが『魔物』この二種類のパターンに分けられるってことですね」
「そうだな。まとめて魔物って呼ぶこともあるけど前者の方は少し珍しくて魔法を使うことは無いけどその分、力が強かったり素速かったりすることが多いんだ。で、後者の代表的なのは水に魔力が宿ったスライムとか、石に魔力が宿ったゴーレムとかで、たまに魔法を使える魔物もいるらしいな」
「魔法! 羨ましいです〜」
「とは言っても多くの魔物は俺みたいに弱い魔法しか使えないらしいけどな」
「使えるだけ羨ましいですよう。でもそれなら魔族と魔物の違いってなんですか? 私はてっきり魔法が使えるかどうかだと思ってたんですが」
「俺もそう思ってた。ただテラーノによると実はかなり曖昧らしいんだ。」
「と、言いますと?」
「言葉による意思の疎通が出来るかどうかっていうのが大きな基準だって言ってたな。それが魔族の考え方だって」
つまり言葉を喋るスライムとかいたらどうなるの? って話になる訳だ。
長い歴史の中で一匹や二匹くらいいてもおかしくないと思うんだけどなぁ。
「まさかそんなに曖昧だったとは……なんだか残念な気分です」
「知ってみたら実は大した事無かったっていうのは意外と多いかもしれないぞ。」
例えば竜族は誇り高く威厳あるものだと思っていたら、親バカがいたりとかな。
「そういうものなんですかねぇ。あっ、でもその逆の人を私知ってますよ!」
「へぇ。そいつはどんな奴なんだ?」
「えーっとですねぇ……」
イコナは顎に人差し指を当て思い出すように喋り始めた。
「その人は、人間さんなのに色んな属性の魔法が使えて、魔力量も凄くて……それでいて色んな事を知ってて猪の下処理なんかもできちゃう、とっても器用な人です!」
おい、まさかそれって……。
えへへ〜、とイコナはこっちを見ながら微笑んでいた。
「……褒めても、晩御飯は増えないぞ」
「むう。そんなつもりで言ったんじゃないのに、レストさん意地悪です」
ふくれっ面になりながらそう言うイコナを見て、なんだか暖かい気持ちになった。
……友達、か。うん、良いもんだな。
「レストさん、ニヤニヤしてどうしたんですか? もしかして褒めてもらったのが嬉しかったとか?」
「……なんでも無い。それよりおさらいも終わったし、近くに危ない奴がいないか見てきてくれないか?」
「……? 変なレストさんですね……でもわかりました。じゃあちょっと見てきますね」
イコナは立ち上がり、ルンルンと林のほうに歩いて行った。
なんだかイコナに振り回されてるような気がしてきたけど、まあいいか。
それよりもイコナが戻ってきたらすぐにでも野営の準備に取り掛かれるように処理をさっさと終わらせてしまおう。
明日はいよいよ山越えだ。頑張らないと。




