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第一話:出会い

 

 〜時は戻り、数年前のとある森の湖〜


 深い森の中で、ポツリと開けた場所にある小さな湖……その湖畔に影を落とす者がいた。


「やっぱりここは落ち着きますね。まるでずっと昔から何度も来たことがあるような安心感……不思議です。ゆっくり落ち着ける場所があるっていうのは良いものだぞ〜っておじいちゃんが言ってたのも、納得ですね〜」


 そう独り言をこぼすのは、人間でも、まして野生の獣でもなかった。


 後頭部から伸びる2本の角。背中から生えた、木々をも包み込まんばかりに大きな翼。振るえば大木をも簡単に薙ぎ倒してしまいそうな、太くしなやかな尻尾。極め付けは、全身を包む黄金のような鱗。その巨体は月明かりに照らされ、うっすらと輝いている。


(ドラゴン)族』この世界の頂点に最も近いと言われる者達。夜の静寂に佇む彼女の姿は紛れもなく竜族のそれだった。


「今日も、水面に映ったお月さまがキレイですねぇ」


 水面に映る月を眺め、同時に映り込んだ自分の顔を見つめ表情を曇らせた。


「……映っているのはどう見ても(ドラゴン)なのに、どうして私は……」


 カサっ


「っ!?」


 彼女が背を向けている方向から、草木を掻き分けて来る音が聞こえる。風も無いうえにこの時間。彼女は、まさかと不安に思い始めた。


『こんな時間に物音……? おじいちゃんがここの近くにある学園には、人間がたくさんいるから近づかないようにって、言ってましたけど……まさか、こんな夜更けに誰かが森に入って来たっていうんですか!?』


 もし竜族が近くにいるとバレてしまったら、何かしらの騒ぎになることは間違いない。

 彼女は飛んで逃げることはせずに人間の姿へと変身して、自分が竜族だとバレないように誤魔化すことにした。

 その姿は白い服を身に纏い、長いツヤのある金髪の人間の少女そのものだった。


そして少女へと変身が終わった後も音はどんどん近づいてきている。


『待って……冷静になるんです、私。そもそも今は真夜中。こんな時間に人が森に……しかもこんな奥に来るはずが無いじゃないですか……そうきっと近づいてきてるのは可愛い動物さんとかーー』



 ガサっ!




 草を掻き分けて飛び出してきたのは、ウサギだった。


「ほーら、やっぱり人じゃなかった。かわいいウサギさんじゃないですか〜」


 やだな〜も〜、とホッと息をついている間にウサギは跳ねてどこかに行ってしまった。その姿を目で追いながら、緊張を解く。


「……いらない心配をしたせいで、ちょっと疲れちゃいましたね。今日はそろそろ帰りましょうか」


 そうして、竜の姿へと戻り始めたその時だった。


「クソっ!あのウサギどこに行ったんだ……今日こそは仕留められる、はずだったってのに……」


 息を切らしながら、青年というには少し若い黒髪の男がウサギを追うように草むらから出てきた。


『ナンデェェ!! ウサギさんだけじゃなかったんですかぁぁ!!!』


 突然の出来事に、心の中で叫びながら彼女は固まってしまった。


『どうしよう、どうしよう……もしこのまま他の人を呼ばれて騒ぎになっちゃったら、おじいちゃんにバレて……ううっ、それだけは避けないと!』


 彼女がアワアワしていると、ウサギ追いの少年も彼女の存在に気づいたらしく、声をかけてきた。


「……なんでこんな所に女の子が? 見た感じ学園の生徒って訳じゃなさそうだし……アンタは一体誰なんだ?」


『そ……そうでした! まだ魔法を解き始めたばかりだったから、まだ私の見た目は人間。それも美少女! 多分ですけどね……と、とにかく堂々としてれば私が竜族だってことはバレないはず! イケる、イケますよ! 私!』


一人で勝手にあたふたしている少女を見て、少年はこの少女には何かあるのだろうと思った。


「……なんか変な奴だな」


「あっ……え、えっと違うんです。コレは、その……迷子……そう! 私迷子になっちゃって、そこにあなたが現れたから助かった! って思ったんですよ!」


 我ながら完璧な設定だと、彼女は内心自分を褒めながら少年の反応を待つ。


「迷子? 真夜中にこんなとこで迷子ってのもおかしな話だけど、そういうことなら森の出口くらいまでは案内を……ん?」


 フリフリっ


「え……えっと、どうかしましたか?私は至って普通の人間で、迷子になってて……」


 どうにも変な話だと思いながらも、納得しておこうとした少年は気づいてしまった。彼女がまだ気づいていない重大な事に。


「お前ソレ、尻尾……だよな?」

「ふぇ?」


 彼女は少年の目線を追い、自分のお尻から伸びている立派な金色の尻尾を見た。


 そう、彼女は竜の姿へと戻る途中。そのため尻尾だけは元に戻っていたのだ。しかも完璧な設定を思いついたと調子にのったため、尻尾を無意識に振ってしまっていた。


「……あ、ああああ!やっちゃいましたあぁぁぁ!!」


 森の奥にある湖、その湖畔で 膝をつき激しく落ち込む金髪の少女 (尻尾付き)と、訳がわからず立ちすくむ黒髪の少年。


 彼らを包み込むかのように、真夜中の森は静かなままだった。

ほとんどの場合二人は見つめ合って…とか恋愛フラグ立ちそうなものですが、読んでくれた皆さんなら目の前にイコナの様な人が現れたらどんな反応しますか?

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