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人と竜の成長譚 〜ポンコツかわいい竜娘に今日も翻弄されています〜  作者: 蒼遊海
第一章 土の国モンテスオロ編
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プロローグ:指輪の効果を試す

第一章スタートです! これからもどうぞよろしくお願いします。

 昼前の暖かい木漏れ日を浴びながら俺達は林の中を歩いていた。土の国はこの林を抜けた後に山を一つ越えたら見えてくるらしい。

 テラーノいわく人の足でなら二週間ほどかかるとのことだったけど、山越えとなるとキツそうなんだよな。イコナはともかく俺が問題だ。


 当のイコナは出発してから見る物ほぼ全部に興奮している様子でずっとキャッキャとはしゃいでいた。物心ついた子供が初めて外の世界に出たようなそんな雰囲気だった。外出するというと夜に空を飛んで移動するだけだったらしいから、初めて近くで見る物に興奮するのも無理ないか。


 ただ鋭い爪と金属鎧すら噛みちぎりそうな牙を持っている狼型の魔獣と遭遇してしまった時に、可愛いから撫でたいと言い始めた時には生きた心地がしなかった。


 いくらこの防御を常識外れなほど強化してくれる指輪があるとは言え恐ろしいもんは恐ろしい。


 俺は少し離れたところで隠れて見守っていたんだけど、その魔獣はイコナにされるがままになっていた。

 イコナもそりゃあ楽しそうな顔で頭を撫でたり、仰向けになり無防備にさらけ出された腹を撫でたりしてたけど、側から見れば人の倍はありそうな体躯の魔獣を金髪の少女が手玉に取るというただ微笑ましいとは言い難い絵面だった。


「レストさ〜ん」

「どうした〜?」


 イコナから気の抜けた声が聞こえてきた。


「お腹空きました……そろそろご飯にしませんか〜?」

 俺の少し後ろを歩いていたイコナが座り込みお腹に手を当て、腹減ったアピールをしている。まったく…


「あまりはしゃぎ過ぎたらすぐ疲れるって言っただろう? まあ昼も近づいてきてるし早めの休憩にしようか」


 休憩と聞いた途端に飛び跳ねて俺に近づいて来た。その目は早くご飯を食べましょう! と言わんばかりにキラキラしている。


 いつか見知らぬ誰かにエサで釣られたりしないか不安になるな……。

 と思っていたら、急にムスッとしかめっ面に変わった。


「私、疲れてはいませんからね! ただお昼が近いからお腹減ってきちゃっただけです。そこは勘違いしないでくださいよ!」


「はいはい、わかったよ。イコナは竜じーーっ!」

「……レストさん?どうしたんですか?」


 言葉に詰まった俺をイコナは首を傾げながら見つめていた。


「ああ、いや何でもないよ。イコナは(ドラゴン)族だからこの程度で疲れるわけ無いもんな」

「はい、その通りです!」


 ドヤァっと自慢気なイコナ。どうやら俺が竜人族って言いかけた事には気づかれて無いみたいだ。危なかった。


「それじゃあ、あそこの少し開けた場所で飯を食べようか」


「はい! あっ、お肉食べたいです!」

「テラーノが干し肉を入れてくれてるといいな」


 ちょうど良い感じに開けた場所があって良かった。

 さて、今日はテラーノが持たせてくれた食料で賄えるとして明日からは少しずつ調達していかないと。



 ♢♢♢



「ふう〜干し肉は干し肉で美味しいですね〜」

「毎日これだと飽きちまうだろうけどな」


 イコナは干し肉をあっという間に平らげた。俺の分も食われかけるほどに。まだ残りはあるけど、これじゃ二人合わせて二日持てば良いくらいか?


 林を出る前に木の実とか採れたら良いんだけどな〜。

 残りの保存食は山越え用にとっておきたいし。


「レストさん。お水は無いですか? 干し肉食べたら口の中がパサパサしちゃって」

「ああ、ちょっと待ってくれ」


 俺は袋から、石で作られたコップを二人分出して地面に置き、魔力を掌に集中させた。


 よし、後はこのまま……一気に。


「スプラッシュ!」

「おおー! 流石レストさんです、飲み水には困らないですね」


 俺の手から水がチョロチョロと流れ出てコップに注がれていく。

 イコナはそれを面白そうに見ていた。こんな大した事ない魔法なのにじっくり見られるとなんか恥ずかしいな……まあそれでも嬉しそうにしてくれるなら良いか。


「はいよ、まだ欲しかったら言ってくれ。いくらでも出せるから」

「ありがとうございます! では遠慮なく」


 イコナは俺が差し出したコップを手に取るとそのまま一気に飲み干してしまった。よほど喉が渇いてたんだな…… まあ干し肉をあれだけ食えば無理もないか。


「おかわり、く〜ださい」

「はいよ」


 ニコニコしながら空になったコップをこっちに差し出してくるイコナ……信じられるか? こんな可愛いらしい笑顔してる癖に素手で魔獣をぶっ飛ばすんだぜ?


 イコナにコップを返した後、俺も自分の水を飲んだ。

 その時、ふとイコナが口を開いた。


「魔法と言えば、おじいちゃんがレストさんに渡した指輪の効果ってどれくらい凄いんでしょうか?」

「そういえば……どうなんだろ?あの口ぶりからして、かなり凄そうだけど」


 俺は水を飲むのも忘れ想像し始めた。


 もしかしたら、イコナのパンチを食らっても全然痛くないとか? 気になるけど実験するのは……やめておこう。もしもを考えたら骨が折れたで済めば良いレベルだし。


「やっぱりこういうのは実際に試してみるのが一番だと思います。いざって時に過信するのも良くないと思いますし」


「……試すって、どうやって?」


 嫌な予感がする。イコナは良い事思いついたって顔してるけど絶対俺にとって良くないことだろ。


「それはもちろん。私がレストさんを攻撃すればいいんですよ」


 俺は思わず立ち上がり後ずさりを始めた。

 だと思ったよこんちくしょう!本人はやる気満々みたいだし?これ逃げられないやつだ。

 イコナさん、俺何か悪いことしましたかね?なんでそんなにやる気に満ちてるんですかね?謝るから許して!

 イコナも同じく立ち上がり狙いを定めるように俺を見つめる。


「指輪の効果がどれほどのものか……イコナ、いきます!」

「いやちょっと心の準備がっ!!?」


 鈍い音が響く。イコナの拳はキレイに俺の腹に吸い込まれた。そしてもちろん俺は吹っ飛んだ。そのまま背後の木に激突し、折れた木と共に地面へ倒れ込んだ。


「……わわっ! れ、レストさん!? 大丈夫ですか!?」

「……いや、大丈夫なわけ……って、あれ? 痛くない」


 イコナが心配そうな表情で俺に駆け寄ってくる。俺はむくりと起き上がって全身を確かめてみたけど、殴られた腹どころか、思いっきり打ち付けた背中からも一切痛みを感じていなかった。


 もちろん骨が折れたとかケガをした訳でもない。


「ほ、ホントに大丈夫ですか? 手加減したつもりなんですけど……まさかあんなに吹き飛ぶなんて」


「……イコナは竜族以外に対しての手加減をちゃんと覚えるべきだな……いつか、ケガ人どころか命を落とす奴が出そうだ」


「はうっ、気をつけます……」


 それはそれとして、この指輪思った以上に凄いな。今のは即死でもおかしくなかったのに……おそらく俺自身の身体そのものを固くしたり、俺への衝撃を打ち消したりする魔法を付与してくれてるんだろう。


 即死するレベルの攻撃されたのは、まあ一旦置いておくとして……テラーノの言ってたとおり、俺の魔力はゴッソリ持っていかれたけど、それでもまだ有り余ってるし、コレは戦闘で命を落とすことは無いと言っても過言じゃないぞ。


 よし、指輪の効果を知れたことは感謝するけど、それはそれ、これはこれだ。


「イコナ」

「はい?」


 イコナはキョトンとして首を傾げた。

 それに対し俺は笑顔を浮かべ答える。


「突然ぶん殴った罰として晩御飯はお預けな」


「そ、そんなぁ! うう……確かに私が悪いですもんね……でも謝りますからそれだけはご勘弁を〜!」


 イコナは泣きながら俺に抱きついてきた。


 悪気が無かったのは事実だろうし、さてどうしたものか。


 俺は体に当たる二つの柔らかな感触を覚えながら物思いにふけていくのだった。

レストくんは健全な青少年です。

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