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第十四話:常識は大事

「ここが、ワシらの住処じゃ」

「どうですか?凄く広くていい所でしょう?」

「お、おう。そうだな」


 俺にはだだっ広いただの洞窟にしか見えないんだが、竜族にとっては良いところ……なんだろうな。多分。


 それにしてもまだ日が昇ってないのにこんなに遠くまで見えるとは、テラーノの炎魔法様々だ。さすが竜族。

 ただイコナが光魔法を使えたならもっと見やすかったのかと思えばちょっと残念かな。炎の明かりだと熱いし。


「そういえば、なんで松明とか篝火みたいなのは無いんだ? 今みたいにテラーノが掌に炎を灯すってなると、いざって時に面倒なんじゃ?」


「ワシら竜族は基本的に夜目が利くからのう。それにどうせ夜になったら寝るだけじゃし」

「なるほど。そういうものなのか」


 俺達がそんなことを話してると、いつのまにかイコナが奥に見えている横穴の前へ移動していた。


「レストさん、こっちですよ〜。ここがレストさんの部屋です!」


 そんなにブンブン手を振らなくても見えてるって。


「あそこはお主のために、とイコナが一日足らずで掘って内装も整えた部屋じゃ。なんでも、今までで一番の自信作らしいぞ? 羨ましいのう」

「お、おう。そうなのか……」


 このこの〜とか言いながら尻尾でペシペシするのはやめて欲しい。普通に痛い。せめて人の姿でやってくれればいいものを。


 それで、イコナの自信作らしい部屋はここからじゃただの横穴にしか見えないけど中はどうなってるんだろ? 一日足らずで作ったって言ってたけどまさか手抜きじゃないよな?


 俺はテラーノのペシペシから逃げるように部屋…と思われる横穴に向かった。


「どうですかこの部屋。私、穴掘りには自信があるので、しかも今回は腕によりをかけて掘りましたからね!」


 えっへんと胸を張るのは良いんだが……。


「コレ、部屋というかホントにただの横穴じゃねえか……」


 俺が炎魔法で生み出した小さな火によって照らされた空間は人が六人ほど寝られそうなただの洞穴だった。

 もう一度言う、ただの洞穴だった。せいぜい周りに石を削って作ったようなナニかがあるくらいだ


「あれ? もしかしてお気に召しませんでした?」


 イコナは不思議そうに首をコテンと傾げていた。


「そりゃベッドどころか、家具一つ無かったら住む部屋とは言わないだろ」

「えっ? ベッドならそこにありますよ?」


 彼女が指差す方を見てみると石の台みたいなものがあった。


「アレが……ベッド? 表面がゴツゴツしてるあたり拷問器具の間違いじゃないか!?」


「え〜何言ってるんですか? あのゴツゴツが寝る時にちょうどいい感じに体を刺激してくれるのに。我ながら良い出来なんですよ」


「それは竜族だけだ……」


 イコナがハッとした顔で俺を見つめてくる。


「まさか、人間さんのベッドはゴツゴツしてないのですか?」

「当たり前だ!」


 竜族との常識……もといイコナとの常識がかけ離れ過ぎてる。こうなるとテラーノが人間の常識知ってるかも怪しいような。不安だなぁ。はぁ……ちょっと気が滅入ってきた。


「ううっ。それじゃあどうしましょう……私ゴツゴツしたベッドが当たり前だと思ってて、レストさんには快適に過ごして欲しかったのに……」


 ……おそらく、彼女なりに俺の事を考えて作ってくれたんだろうな。ただ知らなかっただけで。


「……そんなに落ち込むなって。確かにビックリしたけど、俺のために作ってくれたんならそれだけでも嬉しいよ」

「ホントですか?じゃあ早速寝てみてください。きっと良い夢が見れますよ〜」


「それは遠慮しておく」

「なんでですか!?」


 そりゃアレで寝たら良い夢どころか悪夢にうなされるに決まってるだろ。そもそもあのゴツゴツのせいで、体中が痛くなって寝るどころじゃないだろうし。


 ……念のために寝袋を持って来といて正解だったな。授業でやった野営訓練以外に使うことなんて無いと思ってたのに。


「どうじゃレストよ。イコナ自慢の部屋の感想は? 最高じゃろう?」


 部屋ほらあなの入り口に人の姿でテラーノが立っていた。

 この親バカ竜は……全く。


「なんにせよ今日はもう休むといい。起きたら魔族領域の常識や、ある程度知っておいたほうが良い知識を教えるからのう。それに始めての空の旅をした後じゃ、気付かぬ内に疲れが溜まっておるじゃろうて」


 空の旅よりここに来てからのほうが精神的に疲れてる気がするんですが。


 テラーノは言いたいことを言うとすぐにどこかに行ってしまった。

 竜族もやっぱりこの時間まで起きてると疲れるのかな?

 疲れ知らずな竜族イコナが隣にいるからなんとも言えないけど。


「それじゃ授業に備えて休むとするか。イコナも早いとこ自分の部屋に戻って休んだほうがいいんじゃないか?」


「ん〜、レストさんはそのベッド使わないんですよね?」

「ああ。持ってきた寝袋を使うよ」


「大きな荷物を背負ってるなあと思ってましたけど寝袋が入ってたんですね。そういうことなら、私があのベッド使いますね。試しに寝てみた時、凄く寝心地良かったんですよ〜」


 そのままイコナは石台ベッドに横になるとスースーと寝息を立て始めた。相変わらず寝付きがいいことで。


「って、おい! ここ俺の部屋なんだろ?なんでイコナまでここで寝て……ダメだ。起きる気配が無い」


 揺すった程度じゃ起きないか。まあなんだかんだ疲れたし、俺もさっさと寝よう。荷物整理は明日だ、明日。

イコナの寝付くスピードは某ほぼテスト0点の小学生にも負けない…かもしれないです。

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