第十三話:夜空を行く
「すげぇ……星がいつもよりずっと近くに見える。綺麗なもんだなぁ」
「でしょう? おじいちゃんの背中から見る星はとっても綺麗なんですよ!」
イコナがはしゃいでいる。そのまま落っこちたりしないか不安になるほどに。
先生と別れた後、俺はイコナ達とすぐに合流した。そのまま俺とイコナはテラーノに乗せてもらいすぐに飛びたつことになった。
もちろんイコナは人の姿のままだ。
テラーノは魔法で炎や熱を操ることができるらしく夜の空だというのに全く寒くない。むしろ快適なくらいだ。
「イコナよ。はしゃぐのはよいが、落っこちないように気をつけるんじゃぞ」
「大丈夫ですよ。もし落ちたとしても私だって飛べるんですから!」
胸を張って堂々としてるけど、もし本当に落ちたらどうなるんだろう?
ちょっと気になる。
「そうだ。テラーノ、到着はまだ先なのか?」
「ふむ、まあいつも通りならまだ暗いうちに着くじゃろうて」
「そっか」
今思えば、ウチの学園と魔族が治める領域ってほぼ隣みたいなもんだもんな。テラーノ達の住処も意外と近かったりするのかな?もしかしたら王都に行くよりも近かったりするのかも?
でもそんなに近い魔族領域だけどどんな土地なのかとか、そもそもどうやって統治されてるのかすら知らないんだもんなぁ……まあその辺りはまた今度教えてもらうとするか。
「レストさん? どうしたんですか? 難しい顔をしてますよ?」
いつのまにかイコナがコテンと、首を傾げながら俺の顔を覗き込んできていた。
いつもながら近いな……俺は思わず顔を背けてしまった。
「むぅ……なんで顔を背けるんですか……ん? レストさん、なんだか顔が赤くなってるような……?」
「……別に、なんでもないよ。ただ魔族の土地に関してはほとんど知らないなって思ってさ」
「な〜んだ。そんなことですか。顔が赤いからおじいちゃんの熱にやられちゃったのかと心配しちゃいました」
イコナは胸元で掌を合わせてニッコリと笑っていた。その髪が月明かりに照らされキラキラと輝く。…ホントこうして見てたら普通の美少女なんだけどなぁ。
「大丈夫ですよレストさん。私もほとんど知りませんから〜」
「いや、何も大丈夫じゃないだろ」
イコナは驚いた表情で固まってしまった。
「そ、そんな。それでは私はどうすれば……?」
「どうしようもない、な」
そんな〜と情けない声をあげイコナは空を仰いでいた。
「ほっほっほ。安心せいイコナ。良い機会じゃからな、レストと共に魔族領域に関して勉強しなおすといい。ワシが色々と教えてあげるからのう」
「でもでも、おじいちゃんに教えてもらってると眠くなっちゃうんですよう」
「なっ、なんじゃと!?」
テラーノの飛ぶ速度があからさまに落ちた。余程応えたらしい。まあその……なんだ、あ〜頑張ってくれテラーノ。
というか教えてもらってたら眠くなるって。
「……まさかとは思うが、今まで教えてもらってたのに寝ててほとんど聞いてなかった、とか言わないよな? イコナ」
「そそそ、そんなこと……あ、ある訳ないじゃないですか〜」
イコナは手をバタつかせながら顔を背けた。その頰を伝う雫が一つ。
間違いないな。うん。
「その顔、信じてないですねレストさん! 本当にずっと寝てた訳じゃないんですよ。ただ少し、ほんの少〜し寝ちゃってただけです!」
やっぱり寝てたのか……特訓の時に見せてた真剣な姿をテラーノが見たらどんな反応するのやら。
「聞いてるんですか!? レストさん!」
「あ〜うん、聞いてるぞ。聞いてる聞いてる」
もうっ! と鼻息を荒くしながら、じっと俺を見てくる。言いたいことがありすぎて何から言えばいいかわからなくなってるみたいだ。
「二人とも、そのまま喧嘩するようならこの辺りに置いていくぞ」
「「ご、ごめんなさい……」 」
テラーノには、逆らえないな……。
にしても親バカしてる時と、こういう時の差がありすぎるだろ。
「わかればよろしい。二人は友なんじゃから、もし喧嘩したとしても必ず仲直りするんじゃぞ。よいな?」
俺とイコナはただ頷き、そのまま仲直りをした。
……でもなんだか新鮮だな、この感じ。
やっぱりついてきて正解だったな。




