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第十話:誘い

「どうした? ワシらと一緒に来れるのがそんなに嬉しいか?」

「……いや、その前に一緒に来ないかってどういう事だ?」


 出会ってからまだ一日経ったくらいだってのに急すぎるだろ。おそらく一緒に来ないかってのは住処に来ないかって意味だろうし……本当にそうなら尚更だ。


「そのままの意味じゃ。わかりやすく言えばワシらの家に来て一緒に暮らさないかという事じゃな」


 テラーノはわかりきったことだと言わんばかりの顔をしている。


 というか、やっぱりそういう意味か。


「それで、どうするんじゃ?レストよ」


「いきなりそんなことを言われてもすぐに返事できる訳ないだろう」


「なんじゃハッキリせん奴じゃのう。すぐにでも食いついてくると思ったんじゃが」


 かなり重大な話なのにホイホイと食いつける訳ないだろ。腹を空かした魚じゃあるまいし。


「……レストさんは私達と一緒に暮らすの、イヤ……ですか?」


 イコナが不安そうな表情で俺を見つめてくる。イヤだと言えば今にも泣いてしまいそうだ。


「……イヤでは、ないけどーー」

「でしたら私達と暮らしましょうよ!」


 イコナは食い気味に話してくる。というか距離が近い。


「待て待て、イヤではないけど、まずなんでそんな話が出てきたんだ? いくらなんでも急すぎるだろ。そこら辺の説明をして欲しいんだ」


「なんじゃ、そういう事ならそうだと早く言えばいいものを」


 テラーノはやれやれと首を振っている。


 話ふっかけて来た時に説明するのが普通だろうが……説明無しに答えを聞いてくるからややこしくなってるんだよ。


 そんなせっかち爺さんはゴホンと咳払いをして説明し始めた。


「一番の理由は我が愛する孫の友となってくれた事、そしてワシ自身がお主に興味が湧いたから、じゃな」


「……それだけ?」

「それ以外に理由がいるか?」


 ……正気か? このジイさん。いくら俺とイコナが友達になったとはいえ、このジイさんは俺のことなんてほとんど知らないはず。なのに、一体どうして……?


 俺が色々と思考を巡らせているとテラーノがゆっくりと口を開いた。


「……まあ強いて言うなら、お主が今置かれている環境に満足していなさそうだから……というのもあるかのう」


 そう言うテラーノは言葉とは裏腹に確信しているように見えた。


「……どうしてそう思うんだ?」


「ふむ、まあワシの長年の勘ってやつじゃ。じゃがその様子だと図星のようじゃな。ワシの勘もまだまだ捨てたもんじゃないのう」


 カッカとテラーノは笑う。それとは反対にイコナは俺を心配そうに見つめている。


「レストさん、何か悩みがあるんですか? 私で良ければ相談にのりますよ?」


 ……テラーノの真意まではわからない。でもこのまま学園に残るよりも、俺を友達だと言って心配してくれるイコナと一緒に暮らす方が楽しいだろうな。


 だったら、いっそのこと……そうするべきか。


「レスト君!」

「えっテアト先生!? どうしてここに!?」


 茂みからテアト先生が飛び出してきた。息を切らしていて、着ている制服にはそこら中に葉っぱや枝が付いて酷い有り様だった。


「君がなかなか帰って来ないから、心配になって探しに来たんです。ですが、その方達は?」


 飛び出してきた先生に反応して、イコナは咄嗟にテラーノの後ろに隠れていた。その身は微かに震えているようにも見える。


 それに対してテラーノはただ無言で先生を見ている。


 ……待て、この状況はマズイ。テラーノにとって本来人間は邪魔になるなら消してしまおうと思える程度の存在……このままじゃ先生が!


「お前は……レストの知り合いか?」


 ……思ってたよりも優しい反応だ。テラーノとしても余計なことはしたくない、とかそんなところか?

 何にせよテアト先生が消し炭にされるなんてことはなさそうだ。


「私はレスト君の担任教師、テアトと申します。あなた方は一体何者なんですか?」


「ワシらか? ワシらは……そうさなぁ、レストの友とその保護者。そして……」


 テラーノはそこで一呼吸置き、真剣な表情を作った。


 何をそんな勿体ぶっているんだ?


「そこのレストを新しい世界へ導くものじゃ!」


 うっわ、すげぇドヤ顔だ。見てるこっちは呆気に取られるほどの。

 というか新しい世界へ導くってなんだよ!? 宗教の勧誘じゃあるまいし!


「え、えっと……つまりどういうことですか? レスト君?」


 ほら〜先生困ってるじゃねえか……全く、このままテラーノに説明させると話が進みそうにないし、俺が最初から説明した方が早そうだ……。

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