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プロローグ〜過去を思う〜

 窓を開けると、心地良い風が吹き込んできた。


「デッカイ城の3階ともなると、風が気持ちいいねぇ……」


 思わず感嘆の声が漏れる。風の心地良さによる安堵、そしてこれから行われる重大な式典への出席、その現実逃避を混じえたものだ。まったくもってめんどくさい。このまま寝室というにはヤケに広いこの部屋から飛び出してやろうか。


「あっ、ここにいたんですね! 探したんですよ、もう!」


 振り返ってみると入り口に少女が立っていた。見た目16歳ほどで、煌めくような金髪を腰あたりまで伸ばし、これまた白く輝くドレスを纏っている。お姫様だと言ってしまえば誰もが信じるような美少女だ。そう、見た目だけなら……。


「みんな必死に探してたんですよ! もうすぐ式典が始まるっていうのに……きゃっ!?」


 ドシンっ!


 鈍い音が響いた。着慣れてないドレスでズカズカ歩くもんだから、裾を踏んでコケてしまったようだ。


「ううっ、やっぱりこういうキラキラした服苦手ですよう……」


 愚痴をこぼす彼女の目尻にはうっすらと雫が見えている。まあ正直に言えばこうなることは予想できた。そう、彼女は見た目だけなら絵に描いたような美少女だが、見ての通り「絵に描いたような美少女」ではなく、「ポンコツ美少女」になってしまっている。


 見てる側からすればなんとも言えない気持ちになるが、絵に描いたような美少女よりも取っ付きやすいから、俺はこのままでも良いと思っている。まあ、限度ってもんはあるが……。


「……まったく、これから式典があるっていうのに、そんな調子で大丈夫か?」


 俺が近づいて腰を下ろすと彼女はうつ伏せのまま顔をあげた。その頭には小さな、それでも確かな存在感を放つ2本の角がある。


「大丈夫、問題ないです!」


  そのまま勢いよく立ち上がった瞬間、彼女の体が光に包まれ、その光が消えた時には白いワンピースを着た動きやすそうな見た目に変わっていた。


「着慣れた服装なら問題無しです!」


 これから俺達が出る式典のこと忘れたのかコイツは……正直俺も今着ているこの貴族ですよ〜と言わんばかりのピッチリした格好は嫌いだけども。


「1番良い服装にしておけって言われただろ……それにしても、そのマイペースなところはあの頃から変わらないよな」


  あとポンコツ、もといドジっぷりも。


「なんだか、小馬鹿にされたような気もしますけど……あの頃というのは、いつのことを言ってるんですか?その時次第では、もっとこう、威厳ある感じ……だったはずです!」


 そこは断言して欲しかった。


「いつでも良いだろ? まあ正直、二人で旅を始めたあの時にはこんなことになるなんて、夢にも思わなかったけどさ」


「はぐらかさないでくださいよ〜。でも、私も旅だった時には今みたいな事になるなんて、ぜんっぜん思わなかったです!」


  そう言ってみせた彼女の笑顔は、光を浴びて煌めく持ち前の金髪にも負けないほど輝いて見えた。そういえば俺達の旅立ちの時も、こんな笑顔を見せていたような気がするな。


 本当にあの時は、ただ何気なく旅を楽しもうって感じだったってのに、人生っていうのは本当に分からないもんだ。


 ……今でも鮮明に思い出せる。楽しくて、賑やかで、それでいて時に辛くて、そして何よりーー


 


 あのポンコツっぷりに振り回された日々を……。

次話から本編です。時が戻ります。

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