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寒い


 社長さんと細田さんが玄関先でなにやら話し込んでいるので俺は一足先に部屋の中を拝見させてもらうことに。


 資料にも書いていたがここは他の部屋より二倍以上の広さで四人くらいで住んでも問題なさそうだ。

まあ今のところ俺と細田さんの二人だけの予定だし空いてる部屋は物置にでもしておこう。


 必要な家具も昼の時点で注文していたものが既に配置済みときた。もうこれくらいじゃ驚かない。


 そうこうしていると二人がリビングに入って来た。

と思ったら二人共部屋の隅々や天井まで確認し始めた。脱衣所やトイレ、お風呂場なんかは重点的に調べているということは……そういうことなんだろう。


「社長、こちらは異常ありませんでした。そちらは?」


「こっちも大丈夫よ。安心してください田中さん。盗聴器やカメラの類は発見されなかったのでごゆっくり過ごしてくださいね」


 いや、なんか怖いんですけど。


 それから新居祝いといことで社長さんが回らないお寿司に連れて行ってくれたり、細田さんは一旦自分の荷物を取りに帰ったりで帰宅したのは既に二十一時をまわっていた。


「僕は後でいいので細田さん先にお風呂どうぞ」


 一応俺にもレディファーストという概念はある。決して細田さんの後のお風呂を満喫しようという魂胆ではないことをここで表明しておこう。


「いえ、私は後で構いませんので田中さんからどうぞお先に入って下さい」


「そうですか、それじゃお先に」


 ここでごねるのは紳士にあるまじき行為だ。それに、俺が高校を卒業するまではこの生活が続くんだしまだ焦るような時間じゃない。こんな捻くれた性格の俺だがぶっちゃけ変態(紳士)だというのはばれない様にしないとな。


 新品の着替えを持って風呂場へ向かう。


 先程カメラなんかは無いって言っていたが、一回意識してしまうとちょっと不安だな。洗面台の鏡が実はマジックミラーだったりとか考えてしまう。確かこうやって指先を垂直に当てて、鏡に映る指先との距離で普通の鏡かマジックミラーかわかると昔なんかの記事で読んだことがあるが……どっちがどっちだったか? まあいいか。


 でももし見つけたら……うん、確認する必要があるな。決して細田さんの着替えを見たいわけではなく、被害状況の確認の為とかそんな感じで見るのだ。細田さんでは確認出来ないからな。


 まだ見ぬ未来を想像しつつ今日の疲れを洗い流す。


「週明けには新しい学校かー」


 この世界の 。男子達は小学生までが義務教育で、その後ある程度勉強すれば家庭教師や通信教育でも中高の卒業資格が貰えるらしい。

 それでも学校に通う男子達がいるのは、卒業後の国からの援助金の額が跳ね上がったりするからだとか。

 もし俺が中高六年間男子だけで過ごさなければいけないと思うとゲロ吐きそうだ。そこにお金の為とは言え数人の女子が学校に来てくれたのなら道を間違えずに済みそうだな。そう考えると案外パンダもいい仕事してるんじゃない?

 

 週明けから通う学校にも数人の男子が在籍していると社長さんから教えてもらったし、転校して一週間もすればパンダの赤ちゃん状態からも卒業できるだろ。


「お先にでした。細田さんもお次どうぞー」


 リビングに戻り声を掛けるも細田さんからの反応はない。

 見渡すも姿もない。


 あれ? もう家出かな?



 若干のショックを感じつつも仕方がないかと思いソファーに座ろうとしたとき



 すぅ……すぅ



 ソファーで横になり寝息をたてる細田さんを発見した。

ここで漫画やアニメだと主人公がキスしようとして第三者に見つかったりしちゃうんだろうけど……!

残念かな。ここには俺を止める第三者はいないのだよ、残念だああまったく残念で仕方がない。


 起こさない様にゆっくりと腰をおろし目線の高さを合わせてみる。

 しっかし本当に綺麗な女性だと再確認。初めて会ったのは灯りも乏しい裏路地だし、それからいままでこんな近くで見ることもなかったから改めて考えると凄い状況だなこれ。

 ドキが胸胸なんて古臭いことは言わない。普通に緊張するんだが。


 

 さてと……


 それじゃ……


 失礼……


 しますよ……っと














 俺は近くにあったブランケットを細田さんの体にゆっくりとかけ「おやすみなさい」と小さく挨拶をして自室に戻る。



 チキンだと思う人もいるかもしれないがよく考えてほしい。


 彼女はこの日本の女性の中で数パーセントしかいないエリート。しかもその中でも一握りの特務隊の隊長殿だ。そんな彼女があの距離まで近づいて起きないことがあるのか?


 否! 断じて否である!


 俺の推測はこうだ。

 俺がリビングに戻るまでは本当に寝ていたが、声をかけた時には既に起きていた。返事をしなかった理由はわからないが、俺への好感度が足りない所為と仮定しておこう。

 そして、そのまま俺が部屋に戻るのを待っていたが、なぜか近づいて顔をなめ回す様に見る俺……きもいな。

 もう我慢の限界。こいつ()のケツの穴を増やしてやろうかと思っていた矢先、体にかかる暖かい布の感触。


 今彼女はこう思っていることだろう。


 (っえ? キスするんじゃなかったの? もししようとしてたらケツの穴増やしてやろうと思ってたのに残念。で、でも優しいところもあるんだ。あれ、なんだろうこの気持ち。なんか暖かい……)




 完璧だ。


 今日は良い夢みれそうだなと、注文しておいた庶民っぽい硬さの布団の中に潜り込む。






 ~細田 瞳~







 すぅ・・・すぅ



作者の小話②


中学の時友人が「俺昨日彼女出来たわ」との報告。「よかったじゃん」と返すも表情は暗い。理由を聞くとどうやら昨日の放課後に呼び出されて行った場所には、彼女(後衛×1)と友達(前衛×5)がいたらしい。告白も友人Aの「彼女があんたのこと好きなんだけど付き合う?」みたいなセリフだったとか。


「断れなかった」

そう言った彼の哀愁漂った顔を今では思い出せない。


女子こえー


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