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夢の中で小説を書いていたタイトルが「俺の友人の母親がこんなにFPSが強いわけがない!」件について。需要なさそうだなこれ。


「それではこれで手続きは終了しました。お疲れ様です」


 今日は社長さんと護衛の細田さんと一緒にお役所周りに行っていたが、今回の場所でどうやら終わりみたいだ。と言っても俺は社長さんの隣で挨拶以外に「はい」と「いいえ」と「お願いします」くらいしか言ってない。

 

 決まったことと言えば俺の住む場所と通う高校が主な項目だろうか。

 今は四月も始まったばかりで、朝には新しい制服に身を包んだ生徒が桜並木を楽し気に歩いていたのが目に入った。俺も前の世界では高校二年生としての新しい生活を死んだ魚の目で過ごしていたのだが、どこで間違ったのか希少種(パンダ)として異世界にやってきた。


 今も車の中から下校中の女子生徒をスモークガラス越しに見ているのだが……字面だけみると変態だな俺。

 信号待ちをしている車の隣を今もまた数人の女子生徒が通り過ぎる。俺にガン見されているとも気づかずに幸せなこって……変態じゃないよ? 外の景色を見ていたら君たちの方から俺の視界に入って来たんだ。俺は何も悪くない。


 ふぅ


 軽くため息を吐き視線を正面に戻す。後部座席のシートに深く座り直し疑問に思ったことを社長さんに聞いてみる。


「この世界の女性って可愛い人や綺麗な人が多い気がするんですが、外の学生さん達って全員お嬢様学校とかモデルさんとかですか?」


 俺の問いが少し意外だったのか社長さんは少し驚いた様子の後に疑問に答えてくれた。


「いいえ。彼女達は普通の高校生よ。私も詳しいわけではないけど彼女達の中にモデルやそれに準ずるお仕事をしている子は……いないわね。気になる子でもいた?」


 ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべているのがバックミラーに映る。

社長さん(ラスボス(仮))の笑みは全てを見透かされているみたいで少し苦手だな。

 俺の苦笑いの反応がお気に召したのかそのまま社長さんは説明を続けてくれた。


「田中さんの居た世界では彼女達は美人や可愛いと言われる人達なのでしょうが、こちらでは平均的と言ったら言いかたは悪いのだけれど普通ね。お望みならこの世界のモデルの人に会ってみる? 田中さん(男性)が会いたいと言えばすぐにでも会えるし、望むなら夜も思うままよ?」


 こちらの答えがわかっているかのように悪戯な笑みを浮かべたまま「どう?」と聞いてくる。

 昨日初めて会ってから1日も経ってないのに既にこちらの性格を大体把握されているのが辛い。「お構いなく」とわざとらしく肩を透かして答えてみる。いつか自然とこの所作が似合う男になってやる。一六歳の高校生がやったところでイタイだけだろこれ。


 そこでこの話は終わり、俺たちを乗せた車は次の目的地へと到着した。

あ、細田さんは一切会話をしてないけどちゃんと運転席でハンドル握ってましたよ。



 到着したのは見上げると首が痛くなるほどの高さのマンションだ。

 もとの世界だと一生縁のなさそうな場所だが、今日提示された家のラインナップの中では下から数えたほうが早い。

 豪邸なんかもタダで住めると言われて見せられたが、いち小市民の俺にはもったいないというか耐えられない。他にも「メイド付き」とか書かれて別紙のメイド一覧には「人数無制限! ご自由にお選びください」とカラフルな色で書かれていていたりと、俺の脳内で天使軍と悪魔軍が混乱の余り同士討ちする始末。


 そういった誘惑を振り切り続けて決めたのがこの高層マンション。

ここは男性が住むことを前提に設計されているのでセキュリティ面での不安もないし、ビルに住む女性達の身元もしっかりとしているらしい。俺が初めての男性の入居者らしく、オーナーさんもとても喜んでくれた。

 ちなみにここの入居率は九九%と高い数字を出している理由は言わずともわかるだろう。

もしかしたら男性がここに住むかもしれないという期待から出てくる数字だ。残りの一パーセントは俺の部屋になる予定で、これで一〇〇%。


 驚いたことに俺の部屋の両隣は三メートルほど特殊合金で埋められており盗聴や覗き防止がされているとのこと。いくら身元がはっきりしていて入居審査を通過した女性達でも、実際男性が隣に引っ越してきたら「魔がさす」こともあるそうだ。これは上下にも当てはまりそこに部屋はない。


 あれ? 選択肢間違えたかな?



 不安に駆られながらも細田さんを先頭にビルに入るとエントランスで数人の女性が驚いた顔でこちらを見ているのに気が付いた。もしかしたらお隣さんかもしれないので軽く会釈をして通り過ぎる。

 男性専用のエレベーターに専用のカードキーをかざして扉が閉まると同時に悲鳴に似たなにかが聞こえたのは気のせいではないだろう。ちょっと選択を後悔しつつもエレベーターで自分が住む階まで昇る。


 普通最上階が男性の部屋になっているマンションが多いなか、ここのマンションのオーナーの意向で俺の部屋はマンションの真ん中だそうだ。これもここを選んだ理由の1つ。毎回毎回最上階とか面倒だし、他にも学生にとって大事な「学校から近い」もある。


 一五階の到着を知らせる電子音とともに扉が開かれる。

勿論俺の部屋はこの階の真ん中だ。自分の新居を前に少しウキウキした気持ちになったのか俺は今まで前を歩いていた細田さんを追い越して自分の部屋へと足を進める。


「おっここか!」


 この住居を決めてから数時間しか経っていないのに既に「田中」と無駄にお金がかかっている表札が目に入った。普段だったらちょっと引いてたかもしれないが今の俺には丁度いいスパイスのようなものだ。

 後ろから聞こえる細田さんの慌てた声を無視してドアノブを回す。


「ただいまー」


 今日だけはテンションの所為にして声高々に叫んでみた。
















「お、おかえりな……さい?」


「すみません、間違えましたー」


 反射で扉を閉める。


 なんで? 俺の部屋に既に女性が住んでるの?

それにチラッと見た感じだけど美人さんでしたよ!会社終わりなのだろうか黒いスーツに黒いパンスト。

会社では仕事が出来て部下からの信頼も厚いが、家ではちょっと抜けてて酔ったら甘えてくる系の女性だ。わかってくれとは言わないがわかってほしい。


 この間わずか一秒。


 すぐさま表札を確認する。

……うん「田中」だ。間違いない。それじゃさっきのが幻かなにかかと再度ドアノブに手を伸ばそうとした時


「田中さんの部屋はもう一つ隣ですのでそちらではありません」


 いつの間にか後ろまで来ていた細田さんに言われて漸く我に返った。



 ……紛らわしいわ!!


「こちらの住民の方には私が説明しておきますので、田中さんは先に部屋へどうぞ。これが鍵です」


 細田さんから渡された鍵で本来の自分の部屋へと入り、後ろ手で扉を閉めるとそこには静寂な空間が出来上がる。

その冷たい空間を少しでも和らげる為なのか自分でも分からないが自然と口から出た言葉。




「ただいま」






 




 


 

 

作者の小話①


高校生の時に彼女と撮ったプリクラを他人に見られるのが恥ずかしかったので、「友達と交換するのはちょっと・・・」と言った数日後の放課後に女子6人に囲まれて罵られた作者。

曰く「彼女だけプリ交換出来ないとか可哀想とか思わないわけ?」etc...

結局その場でごめんなさいする作者。

あれ?俺が悪いのか?


女子怖いと思った瞬間でした。

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