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イリヤきたーーー


 場所は先程の事務所のような雰囲気から一変して豪華な一室。

同じビルの中なのにえらい変わりようだ。社長さん曰く「日本で一番安全な場所」とのこと。

そして、案内されたここは一流と言われるホテルのスウィートルームばりかと思われるが、なにぶん行ったことないからよくわからん。でもそこまでの違いはないんじゃないかな。


 いや、知らんけど。


 このセリフ考えた人を手放しで褒めたい。



 しかし、人間憧れを目の当たりにすると思ったより冷静になるというかなんというか……

一度はこんな部屋に泊まりたいと思ってはいても自分に合っていなさ過ぎてつらい。ベッドにダイブしようと思ったけど結局端のほうに座って「おお」と呟くだけだった。


 その後も風呂やトイレ、絵画に壺に至るまで「おお」と言うことしか出来ない俺を誰が責められるだろうか。最後に街を見下ろして「見よ! 人が~」と言ってみたけどこれは一人の時に言うもんじゃないっていうのがわかった。


 今俺がいるのは、これまた無駄に座り心地が良い一人掛けのソファーで胡坐をかいている。

これからの事を考えているのだが、いかんせん情報が少ない。

今までの情報をまとまると、ここは元の地球と似ているが男女の比率が大きく女性に傾いていて、男性は無条件で優遇されているようだ。

 俺みたいな異世界人の例も過去にあり明日の手続きも問題なく済むと聞かされた。住む場所なんかも俺の要望を十分考慮してくれると聞いた時は驚いたが、この世界ではこれが普通らしい。

 

 そして、なによりモテる。これは揺るぎようがない事実。

どんな体型、どんな性格、どんな顔面偏差値だろうが「男性」ってだけでモテる!

 

やったね!!








 あ~マジないわ~。


 ソファの上で胡坐をかいていた大勢のままコロンと横になる。

話だけ聞くと天国みたいに聞こえるが、それって「俺」じゃなくてもいいって話じゃんか。

 パンダの赤ちゃんが産まれたから観に行こうレベルでどうでもいいわ。

あれって結局「パンダの赤ちゃん」だから観に行ってるわけで、推しパンダの赤ちゃんだからって訳じゃないんだろ?

推しパンダがいるかどうか俺には見当もつかないが……いやいやいないだろう……いないよな? それに推しパンに子供とか出来ちゃったら発狂するんじゃないか?


 いや、知らんけど。



 なにこれ罰ゲーム?

ねえ石膏像さん、これって罰ゲームなの?


 あの日、柄にもなく女性を助けたのがダメなの?

仕方がなかったんだよ。体が勝手に動いたんだから。目の前でトラックに跳ねられそうな人がいたら、自分でも知らないうちに動いてたんだよ。


「あの人大丈夫だったかな?」


 一瞬のことであまり記憶に残っていないが、他校の女子の制服だった気がする。

彼女には少し悪い事をしたな。自分を助けた相手は死んでしまったのだから。それでも時が経てば罪悪感に似たなにかも薄れていくだろう。

 もし子供が出来たら俺の墓前で


「この人がママを助けてくれたの。だからあなたが産まれたのよ。ママと一緒にお礼言いましょ?」


「うん! えっとね、ママとあたしを助けてくれてありがと!」


 とか言ってくれればそれで満足だ。成仏できる。なぜか脳内で美人ママと可愛い幼女のやり取りなのは俺だけじゃ無い筈だ。


 それに「無意識で人を助けれるなんて凄い」とか聞くけどあんなのはただの「反射」だと俺は思う。

熱いものを触ったら「あつっ」って手を引っ込めるのと同じで、そこに本人の意思は介在しない。

 

 まあどうあがいても元の世界には干渉出来ないのでこれ以上考えても無駄か。


 

 大事なのはこれからのことだ。

明日になれば色々とわかることも多いだろうから現状考えれるのは、今日から俺の護衛となった細田さんのことくらいか?

 

 助けた彼女じゃないけど細田さんにも悪いことをしたな。


 社長さんから「この五人の中から田中さんの護衛を一人選んで頂戴」と言われて「それじゃ細田さんでお願いします」と即答したときの細田さんの反応は”恐怖”に近かった。本来ならその場でガッツポーズをとるくらい嬉しいことらしいが、彼女にとっては悪夢なのだろう。

 だって名前知ってるの細田さんしかいなかったのだから許してほしい。

 そして、彼女のことを社長さんから説明されたからってのもあるし「それじゃ、右から二番目の人」とか言えるメンタルを俺は残念ながら持ち合わせていないのだ。


 


 ここは自称「日本で一番安全な場所」なのだが万が一、億が一の事態に対応できるようにと社長さんから命令で細田さんは隣室にて待機中。


 出てくる欠伸を噛み殺しながらチラリと時計を見ると、いつの間にか日付が変わっていた。どおりで眠たいわけだ。


 トラックに跳ねられそうな女性を助けたり、石膏像と出会ったり、大勢の女性と鬼ごっこしたりと今日いろんな出来事が凄い勢いで押し寄せてきた。

どうせ明日からも退屈しない日々が訪れるんだろうなと考えながら俺はそのままソファーの上でうずくまりそっと目を閉じた。


 

続きます(多分)

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