16
fgoのキャラが戦闘中に喋った時、返事をするのは作者だけではないと信じたい。
会場が割れんばかりの声援でつつまれた、なんて表現を自分自身で体験することになるなんて思っても見なかった。事の起こりは俺が登校して少ししてからだ。
今日から俺も「南高校」の一生徒として学校に通う為、新品の制服に袖を通し学校へ向かおうとした。
ここから徒歩10分と近い事もあり歩いて行くことに何ら疑問も持っていなかったのだが
「太郎さんは体中をジャムやマーガリンまみれにする願望があるんですか?」
と、意味不明な注意を細田さんから受け忠告通り車で通うことに。
細田さん曰く男子生徒が1人で登校していると、どこからともなく食パンを咥えた女の子たちが曲がり角から全速力で走ってくるらしい。勿論肉体的に接触はしないがあたかもぶつかった体で惜しげもなく下着を見せてくるとのこと。
そして次に会った時「あー、あの時の!」と言って男性とお近づきになるとかならないとか・・・
なにそれ?ちょっとどころか凄い気になるんですけど!
だけどそれじゃダメなんだ。もっとこう自然体で見たいんだよ俺は。あざといのが悪いとは言わないが俺が見たいのは自然なエロなんだ。すまないな未だ見ぬ少女達よ。
勿論俺の感情なんてここにいる細田さんには筒抜けなわけで
「あ、明日の朝はパンでも焼きましょうか?」
と、呟いていたので
「いえ、朝は和食でお願いします」
それに、家の中で食パン咥えて角から出てくるとか不自然過ぎて嫌だし。
残念そうな顔をしないでほしい。いや・・・まてよ。こういうのはどうだろう。
「太郎さん朝ですよ?起きて下さい・・・起きないとパンからジャムが落ちてしまいますよ?」
まだ寝ている俺の布団に跨って起こしに来る細田さん。彼女の口には勿論アツアツの食パン。ジャムはブルーベリーでお願いします。
「あっ、ほら落ちたじゃないですか。早く起きないから・・・」
とか言って俺の頬に落ちたジャムを舐め取る細田さん。
ああ、これは起きるわ。間違いなく違う何かもグッドモーニングしちゃうくらいおっきしちゃうわ。あざといのも悪くは・・・ないな。
「・・・何を考えているんですか?」
少し嫌悪した感じで尋ねてくるので包み隠さず先程の妄想を説明すると、本気で呆れられた。聞いてきたのはそっちなのに理不尽だ。
そんな朝のやり取りを終えて車で学校まで行き、先日と同じ部屋に向かう。
ノックを済ませてから入室すると中には校長先生と、もう1人若い先生がすでに居た。挨拶もそこそこにして今日の流れの説明を受ける。
どうやらこの女性は2年生の学年主任の「田中あきら」先生で、担当は現国とのこと。なにか質問などがあればこの先生を頼ればいいと教えてもらい改めて先生を見る。
なんて言えばいいかな?あーあれだ!目つきが猛禽類とか言われそうな人。別に睨んでないのに怯えられちゃう系の人だ。全体的に黒のスーツでスカートではなくパンツスタイル。ナイス!!
実は俺、スーツはスカートではなくパンツスタイル派です。何故かって?
後ろから見た時にしっかりと股下のラインが浮き出るからだよ諸君。なに?スカートの方がエロいだって?まだまだ子供だな。紳士の嗜みってのをまだわかっちゃいない。
この間実に0.8秒。
そして今日の俺の役目?と言えばいいのだろうか。それは目の前にある抽選箱の中から1つボールを取ること。らしい・・・
なにやら男子が転校、編入してきた時のクラス決めを学校側が勝手に決めると生徒からの批判が凄い事になり、授業のボイコットまでに至った例もあるそうな。
なので、それなら男子に決めてもらおうと学校によって色々と手段を取っていると教えてくれた。
場所によっては男子がクラスを見学して決めたり、あみだくじ、ビンゴ、ルーレットその他色々な形で決めている。この学校はそれが抽選とのこと。
2年生のクラスはA~Dの4クラスあるが、既にAクラスには男子生徒が1人居るらしいので箱の中には3つのボールが入っている。流石に1クラスに2人の男子で他は0人だと暴動が起きかねなく、既に居る男子の縄張りを荒らすと面倒なことになるとかなんとか。
それを体育館での朝の集会で決めるため俺はここでボールを1つ選び、そのままそのクラスへ移動する手はずだ。体育館とは中継でここと繋がっており田中先生はビデオ係としてここに残ってくれる。仮にも学年主任の先生をこんな雑用を押し付けていいのだろうか?
それじゃ、と校長先生は集会の為に体育館に細田さんを連れて一緒に行ってしまった。
非常勤の先生として紹介が必要らしい。なので今この部屋には田中だけしかいない。こっちに来てからまだ数日だけど、細田さんがいないのがこんなに不安とは思ってもいなかった。
先生が淹れてくれた珈琲を飲みながら俺の出番までしばし待つことに。
目の前で同じく珈琲を飲む先生はしっかりミルクと砂糖を入れていた。見かけによらず甘党らしい。それを見られたのが恥ずかしかったのか「私は甘党なんだ」と聞いてもいないのに答えてくれた。ちょっとキュンってしたのは秘密だ。
体育館では丁度細田さんの紹介が終わったところで、話しによると俺の紹介もそろそろの筈だ。
体育館の騒めきを聞きながらカバンに入れていた例の物を念の為装着する。
「やはり異性からの視線は慣れないものか?」
「すいません。慣れたら外しますのでそれまでは少しこのままでお願いします」
俺の仮面を見て怪訝な顔で尋ねてくる先生にそう答えると、「そうか」と頷いてそれ以上は聞いてこなかった。いい先生だ。
これが校長先生に了承してもらった条件。
今年いっぱいまではこの仮面をつけて学校生活を送る事を許可してもらったのだ。
前に細田さんと一緒に外に出た時に周りからの視線で気分が悪くなったこともあり、それを緩和する目的でもあるしこれなら外見だけで寄ってくる女子も減るんじゃないかという希望も含まれている。
そんな俺の精神安定のための仮面だが・・・
いや「髑髏」ってどこの中二病患者だよって突っ込みたくなるが、これは俺の為の特注品で昨晩超特急で作ってもらったので文句は言えない。なので別にベルトで固定しなくても顔に張り付ける様につければ特殊材質のお蔭で違和感なく装着できるというわけだ。
因みに「お任せで」って頼んだらこのデザインになった。美容院行くのが怖くなってくる今日この頃。
「さてそれでは編入生の紹介をしますね」
おっと、そろそろ俺の出番かな?ただ箱からボールを選ぶだけなのだがちょっと緊張するな。
ん?あれは佐藤さんか。
話を聞くとどうやら佐藤さんはD組への編入が既に決まっていて、一応遠くの田舎町から都会に引っ越してきたという設定らしい。時期が少しずれたのは家庭の事情で通していた。
紹介も終わり壇上からD組の後ろへ移動する佐藤さん。
すると画面越しに見ていた景色が真っ黒になってしまった。
あれ?カメラの故障かな?と思っていると先生が「またあの人は」と頭を抱えている。どうしました?と聞こうと思った瞬間、クイズ番組でよく聞く回答者が答えた後に流れるBGMが聞こえてミラーボールの輝きが目に入ってきた。
呆気に取られていると「ジャンッ」と音楽が止まり、そして校長先生の声が聞こえてきた。
「いいかいケツの青い女子共!今日はあんた達にいい知らせがあるよ。ああ、それと男子にとってはライバルが増えるかもしれない知らせだが勘弁しておくれ。さあ、ここまで言えばわかるだろ?そうだ!今日、新たな男子生徒がこの学校に通うこととなった!」
・・・校長先生だよな?
視線で先生に尋ねると「偶にあるんです」と説明してくれた。これが若さの秘訣だとか。
俺としては縁側で猫と戯れるおばあちゃんが実はロックバンドのボーカルだったぐらい驚きだ。
一瞬の間を置き画面からは声にならない声が聞こえてきた。多分叫んでいるんだろうけど、声が大きすぎて音割れしている。そして勘違いでなければ外から絶叫が聞こえてくるんだけど・・・
「喜んでもらえたようで校長としては嬉しい限りだよ。でも、これだけ煩いと大事な情報は聞こえないだろうしもうこの話は終わりだね」
そう言った瞬間さっきまでの地獄絵図が嘘のように止み、静寂が訪れた。
「どうやら聞く気があるようだね?宜しい。もったいぶるのは余り好きじゃないから一気に言うよ」
会場の生徒たちの息を飲む音がここまで聞こえてきそうだった(ごくりんこ)
「彼は”異世界からの転移者だ”!!あの”伝説の”だ!!お前たちも観たり読んだりしただろう?現実じゃ起こりそうもない話の数々を。壁ドン?顎くいッ?お姫様抱っこ?それらを想像してはその数だけ涙を呑んできただろう?だけどそれも今日を持って終わりだ。話してみた感想、彼は一筋縄じゃいかないけどとても好青年だと私は思う。私はあんた達が羨ましいよ。そんな彼と学校生活を送れるんだからさ。でも、今からは隣にいる友達が恋のライバルになるかもしれないんだ。おちおちしてたら明日にはそいつが彼の隣にいるかもしれないよ?。それと1つだけ注意事項を付け足すと、彼が嫌がることをした生徒には3ヵ月の接触禁止を命ずるからそこは注意しておくれ。男の許容ラインを見定めつつそれをどんどん下げさせ、彼の最終防衛ラインを突破した暁にはあんたが彼女だ。せいぜい頑張りな」
本当に一気に言い切った校長先生は右手の拳を天井へと突き上げて話を切った。
先程とは比べ物にならない声が外から聞こえてきた。こちらのスピーカーは先生が咄嗟にオフにしてくれたようで助かったけど、校長先生?ちょっと話盛り過ぎではありませんこと?壁ドンも顎くいッも、お姫様抱っこもしたことないし、本当にしてる男なんているの?ってのが俺の素直な感想なんだけど。
なんかもうクラス抽選なんてせずに帰りたい。あ、ダメですか。それじゃ・・・
おっ!D組だ。
クロエ「そんなに見たいの?」
作者「めっちゃ見たい」
クロエ「そうしたいの?」
作者「お願いします!」
クロエ「こうして欲しいんでしょ?」
作者「オナシャッス!!」
クロエ「はあ~~~魔力供給お願いね、マスター?」
作者「マジで?ええの?」
キモイ?褒め言葉です。