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休日に1人で猫カフェなんて行くもんじゃないと再確認した作者です。
その学校は言ってしまえば”平凡”だろう。
特別頭のいい進学校でも悪いわけでもない普通の高校だ。俺が前の世界で通っていた学校とよく似ている。
お役所周りの時に「男性なら面接だけで殆どの高校に通うことが出来る」と聞いた時は驚きよりも呆れたと言ったほうがいいだろうか。殆どと言うのも由緒正しい学校なんかは男性も試験と面接を受けて、合格ラインに達していたら合格というシステムを導入しているかららしい。
確かにお嬢様学校にガラの悪い連中を入学させて風紀が乱れたら目も当てられないしな。
実際昔にそういった事件が起こったらしい。
国の重要人物のご令嬢達が通う学校に面接だけ”いい子面”して入学。その後に好き放題した”異世界人”が・・・・
おいおい何てことしてくれてるんだよ本当。
まっ、それが無かったとしてもそんな学校へは行かなかったけども。
自分の学力に見合った学校じゃないと入った後に苦労するのは自分だしな。だから俺は自分の元の学力よりちょっと低そうなこの「南高校」というシンプルな名前の高校に編入することにしたのだ。
現在細田さんに連れられてこの学校の応接室で必要な書類にサインしたり、校長先生の話を聞いたりしているのだ。
細田さんがカレーうどんにつられて部屋から出てきたのもあるが、本当はこの予定を思い出したからだと思う。今日はまだ日曜なので学校にいる生徒も部活動で来ている少数。特に誰かと出会うイベントもなく最後の書類にサインを終えた俺は確認後、校長先生へと書類の束を渡す。
「終わりましたので確認をお願いします」
それを受け取り漏れがないか確認しているのは、60歳くらいのおばあちゃんって感じの縁側で猫を膝に乗せてうとうとしているのが似合う人だ。
「はい、確認しました。それでは明日から我が校で勉学に励んで下さいね。多少のオイタは目を瞑りますが、あまりはしゃぎ過ぎないように・・・まあ心配なさそうな子みたいですが」
これで今日の用事は終了。っとその前に
「1つだけ認めて頂きたい事があるのですが」
これを認めてくれたらかなり俺の学校生活が楽になるのだ。
拒否されたらされたで仕方がないと割り切るしかないけど・・・それを伝えると
「いいですよ許可します」
ノータイムで返事が返って来た。話のわかる校長先生でよかったー。
これで不安材料が消えたと安堵していると
「それではこちらからも条件として1つ。期間は今年いっぱいまででお願いしますね。卒業までそれでは他の生徒さんが少し可哀想ですし、特に今の3年生になんて言われるかと思うと怖くて夜も眠れないですから」
「わかりました。その条件でお願いします。ご無理を言って申し訳ございません」
「いえいえいいのよ。いきなり環境の違う生活はなにかとストレスもあるでしょうに。早く慣れるように私達も出来うる限りのサポートはしますので、何かあれば遠慮せずに言って下さいね」
それから雑談を少し交わした後
「そうそう細田先生も宜しくお願いしますね」
「こちらこそ宜しくお願いします」
あれ?先生?
俺が首を傾げていると校長先生が説明してくれた。
「細田先生の扱いは非常勤の先生で、男性警護に興味のある子達に指導していただく予定なの。現役のしかも隊長さんに指導してもらえる機会なんてそうそうないので、お願いしてみたらあっさりOKを頂いたの」
それにと一言おいて細田さんが
「田中さんの護衛の面においても一緒の学校に居るのはメリットしかありません。もし不逞な輩が近づこうものなら直ぐに駆けつけれますし」
そう言われてみればそうか。
俺としては学校に行っている時間は細田さんの自由時間に当てて欲しかったのだけど、そういうことならお言葉に甘えさせてもらおうかな。それでも細田さんの休日とかもちゃんとしないといけないと心のメモに書いておく。
「それでは今日のお話はここまででいいでしょう。明日は少し早いですが7時半にまたこちらのお部屋まで来ていただけますか?クラス決めの準備もありますので。それに申し訳ないのだけれどこの後にも編入生の手続きがあるのよ、ごめんなさいね」
そう言って今日の用事は今度こそ終了。
最後の「クラス決め」なるものに少し興味を惹かれたが、明日になればわかるのだ楽しみにとっておくとしますか。
「失礼しました」
応接室の扉を閉めていざ帰ろうとすると、廊下の向こう側からこちらに歩いてくる2人の女性が視界に入った。1人は細田さんと似たような服を着ているので護衛の人で、その後ろを歩く小柄な女の子がさっき校長先生が言ってた編入生かな?ということは俺と同じ明日からか。
だからと言って別段仲良くするつもりもないので細田さんの影に隠れるようにすれ違う。・・・すると
「ちょっと待ちなさい」
凛とした声で誰かを呼び止めていた。
緊張してトイレでも行きたくなったのだろうか、護衛の人に高圧的な態度で命令する女の子。
あーやだやだ。ああいうタイプの子とは仲良く出来ないわ。怖い怖い。
一切立ち止まらずにすれ違う。
「ちょっと待ちなさいよ!」
さっきより大きな声で呼び止めていた。まさかもうダムが決壊寸前なのか?俺は紳士なのでその現場は見ないでおいてあげよう。でもちょっと気になるな、気の強い子が粗相をしてしまい羞恥に歪む表情にはとても興味がある。
何度も言うようだが俺は紳士だ。恥ずべきことはなにもない。
更に女の子が何か言う前に護衛の女性が静かに口を開いた。
「すいません細田先輩。少しお時間いいですか?」
おっと、細田さんの後輩の方でしたか。
俺は足を止めてその女性の方に体を向ける。その女性は言うなら、もの静かな図書委員長(隠れ巨乳)だろうか。眼鏡が凄く似合ってます。
そんな彼女と目が合うと軽く会釈をされたのでこちらも会釈を返す。
「なんですか池田?今私は任務中なので後にしてもらえる?」
そんな俺たちの間にスッと体を入れる細田さん。
「すいません先輩。でも直ぐに終わるのでちょっとだけ付き合ってください。それではどうぞ」
そう言いながら今にもダムが決壊しそうな女の子の背中をこちらに押し出す。
ちょっとー、そんなことして大丈夫?もし決壊しても俺の所為じゃないからね?
一瞬体をビクッとさせた女の子はこちらを睨んだまま何かを思い出そうとしているみたいだった。
なんだ決壊しないのか。面白くない。俺の女の子への興味は急激に下がり早く終わらないかなーくらいしか考えていなかった。
「あーーーーーーー、やっぱりあの時の!!」
しかし、女の子からのセリフで俺の意識は女の子に釘づけになることになったのだ。
えっ!
どの時?
歌マクロスのガチャでピックアップが出ない病なんですが・・・おかしい