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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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 ノレイス国の王、カイゼルは目を疑った。

 右側の玉座に座っていた者は、コディーの言う通り確かに女性だった。

 しかし、女性と見るには余りにも若く、余りにも小さかったのだ。

 オークキング(ブレイク)ハルピュイアクイーン(ルピー)などの幹部よりも、その事に驚いたのだ。

 一瞬だけ硬直したカイゼル王だったが、直後のコディーの言葉により目を覚ます。


「ノレイス国より、カイゼル・ラハート・ノレイス国王陛下! ご到着であります!」


 これはカイゼル王へのコディーの助け船であった。

 既にその告は成されていた。彼らは城内へ入っていたのだから。

 なればこそ、魔王たちは彼らを待っていた。しかし、場に沿った発言、カイゼル王たちに快復の時間を与える事により、コディーはノレイス国の非礼を隠したのだ。


(まったく、リザリーのヤツ、何が「余の容姿の事は伏せておけ。相手の反応を見て信に足る人間か見極めたい」だよ。驚くに決まってるじゃないか。こっちとしても、この調印式を壊す訳にはいかないんだよ)


 この意図を察したカイゼルは、中へ誘導するコディーに対し深い感謝を抱いた。


(なるほど、先の小言はこの事を言っていたのか。魔王なりのテスト……というところか。先の助言がなければ、女王と容姿、この二つの意味で驚いていた。察するに、魔王から「容姿については触れるな」と言われていたのだろう。だからこそ、容姿ではなく性別に触れる事により、我が驚きを一つに減らしたのだ。そして、ここでも助け船を。やはりこの者、敵に回すと恐ろしい……)


 カイゼル王は、コディーや幹部たちを横切り、ゆっくりと魔王の隣まで歩く。

 近衛兵たちも二列縦隊でそれに続き、階段の手前でピタリと止まる。


「カイゼル王、よくいらした。余が魔王リザリーだ」

「リザリー王、ようやく会えたな。カイゼル・ラハート・ノレイスである」

「道中、我が臣民が貴国に迷惑を掛けなかっただろうか」

「何、我が国民に見習わせたい程の忠義溢れる者たちだった。厚い歓待に感謝する」


 言いながら二人は静かに握手をする。

 そして、人界と魔界を繋ぐ調印式が始まった。

 二つの玉座の前に置かれた堅牢且つ品のある長テーブルの前に、同盟に関する盟約書が二枚置かれる。

 コディーはこれの進行役を務め、儀礼の言葉を述べる。

 そして、条約文の説明へと移った。


「約定書には、同盟を目的とする三つの条文が書かれております。第一条、【両国における侵略行為を禁ずる】。第二条、【両国の国境は魔界大門とし、この管理は魔界が行うものとする】。第三条、【両国に同盟国の大使館を置き、この敷地内は同盟国領土とする】。第四条、【両国が定めた出入国税を納付する事により、両国民の往来を許可する】。第五条、【出入国者の管理は魔界大門で行い、ここに両国の担当責任者を配すものとする】。第六条――――」


 両国間で決められた様々な条約が読み上げられる。


「――――以上、全約定の理解の下、王自らの手による王印の捺印以て、同盟の締結とす! カイゼル王、リザリー王、各々方二通の盟約書にサインと捺印を!」


 テーブルに置かれた二通の盟約書。

 二人の王は、コディーの言われる通り立ち上がってテーブルの前に移動する。

 互いにサインをし、王印の捺印をすると、今度は立ち位置を逆にして二通の盟約書が完成する。

 コディーはその二通を持ち、幹部、近衛兵たちに向かい掲げる。


「これを以て、ノレイス国と魔界の同盟は成されたっ!!」


 周囲に響く感嘆の声と、拍手。

 盟約書にある二つのサインと二つの王印。

 ノレイス国の王印には三本の剣が米字状に重なり、雪のような紋様を見せている。

 そして魔界の王印には、杖を掲げる少女が……大きな熊に騎乗した紋様が描かれていたのだった。

 コディーは晴れやかな表情で二つの盟約書を丸め、二人の王に渡した。


「陛下、カイゼル王、お疲れ様でした」

「何を言う、コディー。これは其方の功績なのじゃ」

「リザリー王の言うとおりだ。魔族の見方を根本から変えた貴公の功績よ」

「ふふふ、今日は乗せられておきましょう」


 そう言ったコディーは、再び皆に振り返り言った。


「さて、これより(ささ)やかながら宴を行います。我が魔王軍、騎士団の方々には大いに交流して頂きたい!」


 その後、ミザリーの合図により魔王の間に、両国の皆が見た事もないような料理が運ばれてきた。造形に凝った盛り付け、色合い、香り、どれをとってもこれまで食してきた食の水準を大きく上回る料理の数々に、皆目を見張る。

 宴が始まると共に、カイゼル王が食いついたのは――、


「コディー殿! これは一体!?」

「ふわとろオムレツです。このケチャップと共に召し上がりください」


 魔王リザリーが食いついたのは――、


「コディーコディー! これは何なのじゃ!?」

「ハンバーグです、陛下」

「ほぉおおおお、はんばぁぐ……!」


 魔王軍の幹部たちが食いついたのは――、


「閣下! これは一体!?」

「フライドポテトだ。塩かケチャップ、マヨネーズでもいけるぞ」


 近衛兵たちが食いついたのは――、


「何だこれは……!?」

「う、美味い!?」

「塩の鶏唐揚げですね。今度魔界で売り出す片栗粉を使い、揚げた料理です」

「ジューシーでぷりぷり……何て美味いんだ」


 そして、ミザリーが食いついたのは――、


「閣下! この美味しいお魚料理は一体っ!?」

「あ、それは私のスモークサーモン!? ミザリー、何勝手に食べてるのだ!?」

「はぁ~……お酒が欲しくなりますわ……」

「くっ、醤油があれば刺身で一杯やれたのに……!」

「閣下! その醤油というのは一体!?」

「麹菌を作るのが面倒なんだよなぁ……」

「私に出来る事であれば協力致します! こんな食事が毎日食べられるのであれば!」

「むぅ、なら今度やってみるかぁ」

「是非に!」


 皆が喜び、湧き、食後のケーキに涙を流した。

 カイゼル王が取り分けておいたケーキを、コディーが食べてしまうという事件も起きたが、調印式とその後の宴席は、(つつが)なく終わりを迎えたのだった。

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