表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/86

075

 ノレイス国の王は激怒した。

 必ず、かの邪知暴虐(じゃちぼうぎゃく)の獣を除かねばならぬと決意した。


「えぇい! 一体どうなっておる!? 我が軍の馬は一体どこへ消えた!?」


 白髪が入り交じった金髪の中老。

【カイゼル・ラハート・ノレイス】、彼こそがノレイス国の王である。

 最強の軍事国家を作り上げ、民からは人類の希望とも呼ばれる偉人。

 そんな彼が、馬小屋を見ながら叫ぶ。その怒りは留まる事を知らない。

 脇に控える長い髭を蓄えた大臣が言う。


「ど、どうやら全て、魔王軍に奪われたようです」

「奪われただと!? 獣が懇切丁寧に騎士を下ろし、馬だけを奪ったというのか!?」

「報告によると……(くだん)の熊の言うことに従うように付いて行ったと」

「馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!? 一体どれだけの被害になったと思っているっ!! 死人こそないものの、あの闇色の大爆発で城の外壁はまるで風化したかのようだ! 修繕費だけで国家予算の三分の一はかかる! その上……馬もだとっ!? くそっ! くそっ! くそっ!!」


 大地を強く踏み憤りを露わにするノレイス王に、大臣は更なる追い打ちを掛けた。


「それだけではありませんぞ、陛下」

「これ以上何があるのだっ!?」

「騎士団の装備一式、全て持っていかれております」

「っ!? 何だとっ!?」

「熊は、気を失った兵や冒険者の装備を剥ぎとり、全て魔界へと持ち帰ったそうです」

「ぼ、冒険者のもだとっ!?」


 ノレイス王が驚愕した理由はそこにあった。

 何故なら、冒険者ギルドとノレイス国はある契約(、、、、)をしていたからだ。


「今回の緊急依頼には冒険者に保険が適用されます。保険内容は装備一式の補償と、心身ダメージを被った際の見舞金。当然、通常報酬も支払わなければなりません……」

「騎士団はともかく、冒険者の武具がどれだけ高いか知っているのか!? ランクSの冒険者なぞ億単位の金が動くぞ!?」

「こればかりは修繕ではありませんからな。全損による補償ともなれば……天文学的な数字になるかと……それに――」

「――まだあるのか!?」

「見舞金が非常に高くなるという報告も上がっております」

「な、何故だ!?」

「皆、怪我は大した事はありませんが、心を病んでおります。完治がいつになるかわからない以上、非常に申し上げにくいのですが、それまで国が責任を持って支払わねばなりますまい」

「そ、そうだ! 心を病んでいるのであれば、冒険者も保険を適用するなぞ言って来ないのではないかっ!?」

「陛下、それはありえません」

「何で!?」

「冒険者ギルドが意地でも徴収に来ます。彼らの損失は冒険者ギルドの損失でもありますから」

「きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!!! 何故! 一体何故こうなった! 何なのだ、あの熊は!? 騎士団千、冒険者二百の精鋭だぞ!?」

「定かではありませんが……魔王軍の新たな幹部かと。物見(ものみ)によると、熊の奥には無数のゴブリンがミスリルの槍と鎧を付けていたという報告もあります」

「ミスリルゥッ!? 魔界にはミスリルがあるというのか!?」

「偵察に雇った冒険者……【風刃のシンディ】からの報告ではそのような事実はないと」

「だが実際にゴブリン共が持っていたのだろうっ!?」

「はっ、それに不可解な点が」

「くっ、どれだけ出てくるんだ……っ!」

「ゴブリンのサイズが明らかにおかしかったと。ゴブリンはホブゴブリン以上、ホブゴブリンはゴブリンジェネラル以上、ゴブリンジェネラルはゴブリンキング以上、ゴブリンキングは…………まるで巨人のようだったと」

「そ、そんなのはどうせ物見の見間違いに決まっている! それよりも箝口令だ! 箝口令を敷け! こんな醜態、ライオス国にバレる訳にはいかぬ! これがバレれば、ライオス国への侵攻どころかこちらが侵略されてしまうわ!」

「か、かしこまりました! (ただ)ちに!」


 ◇◆◇ 十日後の楽園 ◆◇◆


「って訳でさ、ダニエル君。今、ノレイス国の国庫とか兵力? そこらへんヤバい事になってると思うんだー」

「いや、それよりコディーさんが魔王軍の総司令官ってところにビックリなんですが……?」

「ジジにも言ったんだけど伝わってないみたいでさ。ダニエルからも言っておいてよ。あ、ノレイス国の噂もちゃんと流しておいてね」

「もしかしてアッシ、今、もの凄い事聞いちまったのでは……?」


 呆然とするダニエルを前に、聖獣コディーは屈託のない笑顔を振りまいていた。


「ばう?」


 そしてその後、ライオス国に貴重な情報が届けられる。

 ダニエルが流布した情報を裏付けるとある人物が、ライオス国にやって来たのだ。

 彼女はノレイス国の密偵だった。しかし、支払いが悪く契約違反が起こったため、ライオス国に情報を売りに来たと言うのだ。

 ライオス国にも彼女の名前は届いていた。当然、彼女を知る者も多かった。

 そしてその余りある功績から、彼女の言葉が信頼に足る言葉だと、すぐに結論づけられたのだ。

 彼女はライオス王の前でこう名乗った。

 ランクS冒険者――【風刃のシンディ】と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ