表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/86

072

「ノレイス国の間者だな」

「なんと、既にそこまで情報を……っ!?」

「性別は女だが、普通の男には興味がないようだ。好物はパンケーキで休日に行きつけの店に通っているそうだ。本当の名前はシンシア(、、、、)だが冒険者ギルドにはシンディで登録しているようだ。これは、間者をする上で家族がバレないようにする工夫って理由があるって話だな。得意武器は短剣。風魔法を使い、現在は火魔法を勉強中。ノレイス国では『風刃(ふうじん)』の異名を持っているそうだが、本人はそれに否定的。住所はノレイス国東区三十九エリアにある青い屋根の家。今月はまだ大家に家賃を払っていないから不安との事だ」

「なんと……既にそこまで情報を…………」


 あ、やべえ。

 ミザリーがどん引きしてる。これはある意味、同音異義語なのではないか?

 そう思うくらいには先程の返答と意味が違う気がする。

 こりゃ、最終的に「男は嫌いだが、けむくじゃらの雄は好きかもしれない」って言われたのは内緒にした方が良さそうだな。


「ゴ、ゴホンッ!」

「はっ! これは失礼をっ!」

「む? 何かね? 私は咳払いをしただけだ」

「い、いえ、何でもありません。それであの女は今後どうするおつもりで?」

「まだ情報を引き出せる。私の許可なく危害を加えるな。三食昼寝付きを条件に出している。私の顔に泥を塗るなよ……?」

「はっ! かしこまりました!」


 よし。

 何とか乗り切ったぞ。

 さて、ミザリーには別の命令も出しておかないとな。


「シンディに関する情報をまとめた後、頼みたい事がある」

「何でございましょう?」

「シンディに化けられる者はいるか?」

「ふふふふ、そういう事ですか」

「あぁ、ノレイス国に生きるシンディとして人界の情報を探ってもらう。ノレイス国の方針、作戦、資源……これらを洗いやつらの進行を防がねばならないからな」

「はっ! お任せください!」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 さて、あれから一ヶ月が経った。

 やはり魔王と俺の魔力が作用している事もあり、人工林計画は物凄い勢いで進んだ。

 既に果物を採れたという報告もあがっており、魔界に緑が増えてきた。

 これにより土壌も良質なものへ変化している。

 川に集う魚も増え、徐々に自給自足が出来るようになってきたと言えるだろう。

 それ以上に変化が起きたのはやはりゴブリンたちだろうか……。


「全た~~~~い! 前へっ!」


 ゴブリンキングのガジルの指示により、魔王軍ゴブリンランス武装兵団は規則正しい行進を始める。全員がゴブリンでありながら、ホブゴブリン以上の体躯を有し、精強さで言えばランクB冒険者のアッシュ君が手こずるレベルだろう。

 つまり、ゴブリンたちの個人武力はランクCに匹敵する。

 因みに、人界で設定されているゴブリンの討伐ランクは最低のFランクだそうだ。

 当然、他のゴブリンたちも進化と呼べるような身体と変化している。

 ホブゴブリンやゴブリンロード、ゴブリンジェネラルにゴブリンメイジ。彼らは最早(もはや)人界からしたら災害そのものだろう。

 もし俺が人界の冒険者ギルドのマスターで、このゴブリン軍の討伐依頼を出すならば……間違いなくランクはS。それも、幾人ものランクS冒険者が必要だろう。

 正直、俺でも相手したくないレベルだ。


「くかかかか! 壮観ですな、コディー様!」


 ガジルも大きくなった。通常ゴブリンキングは二メートル程の身長だが、彼は既に三メートル半はあるだろう。単純計算で一日三センチメートル伸びた計算だが、この世界の常識はもはや地球の常識では語れないのだと理解している。

 これはゴブリン軍に限った話ではない。あのブレイクも、ルピーも、ミザリーも、保有魔力がどんどん増えているのは、果たして良い事なのだろうか。

 まぁ、それを制御して統括するのが俺の仕事だ。

 だから今日も、頑張るしかない。


「ではこれより! 魔界大門(まかいだいもん)の着工に入る! 諸君らに協力してもらう事は多い! 人界からの妨害もあるだろう! しかし! 我らが成すべき現在(いま)には、諸君らの家族の未来(あす)がある! これを決して忘れてはならない! 気合いを入れろ! 槍で大地を叩け! 叫べ高らかに! 我らの明日は! 我らの未来は! 今日この場から始まるのだっ!!」

「「ギィァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」


 うん、魔界って感じがする。人間から見たら完全に悪夢でしかない。

 ノレイス国は目と鼻の先。既にいくつかの魔力反応が感知出来る事から、こちらの動向を探っているのだろう。

 今日は魔界大門を作る大事な日。

 石材の運搬から補給まで魔王軍が一丸となって行う大作戦である。

 現場の指揮はオーガたちに任せている。

 そして俺は、魔界大門が出来るまでの……魔界大門となる(、、、、、、、)


「コディー様! ノレイス国の動きがありやした!! ノレイス国の北門に兵や冒険者たちが続々と集結しておりやす!!!!」


 そう、今日のコディーさんの仕事は……人間たちの妨害を防ぐ事。

次回、クマさん大暴れ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ