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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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「あ~、危なかった……」


 あの後、「もういいもういい! 出ていくのじゃぁっ!」とか唾を撒き散らしながら追い出されてしまった。まぁ、上手く言い訳出来たとは思う。

 が、魔王が気分屋なのも新たな情報だ。今後も気を張っていかなくてはいけないな。

 魔王があの間から動けない事も含め、今度ニッサに聞いてみよう。

 前回戻った時に、ヴァローナから聞いておいた話はとても参考になった。

 話とは、人間と魔族との戦争の始まりについて……。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「本当に人間から攻撃したの?」

「さぁ?」

「さぁっておい。だって前に聖獣から神獣になったっていう麒麟(きりん)の話してくれただろう?」

「私だって獣伝手(づて)に聞いたんだ! そんなに詳しくわかる訳ないじゃないか!」

「何でお前が怒るんだよ!? つーか獣伝手って、お前そんな話を偉そうに話してたのか!?」

「ふふん! 事実、私は偉いからな!」


 なんて不敵な笑顔だ。鳥刺しにして食べてしまいたい。

 仕方ない、違う場所から聞いてみよう。


「じゃあ、その獣って誰の事なんだ?」

「教えないっ!」


 今、ぷいってあっち向いたぞ? 何なのこの子供?

 そんな神獣様の背後から、ゴリさんが見えた。ゴリさんは何やら手招きしているように見えた。

 ゴリさんが呼んでいるなら仕方ない。そう思い、俺はツンツンヴァローナを横目に、ゴリさんの下へ向かった。

 木陰に隠れたゴリさん。

 珍しい。なんとも珍しい。内緒話なんて……なんと獣らしくない事か。


「実はな、私はその獣がどなたなのかを知っている」


 小声で話すゴリさん。しかし気になる。「どなた」と言ったな。

 つまり、それだけ高位の存在なのだろう。


「【神獣ケリュネイア】、それがあの方の名だ」


 どこかで聞いた事のある名前だ。


神鹿(しんろく)とも呼ばれているな」


 ……思い出した。元の世界では女神アルテミスの聖獣とされた鹿だ。

 確か、五頭いて……四頭はアルテミスの戦車を引いたけど、残りの一頭はアルテミスでも捕まえられない程足が速く、後にヘラクレスが捕まえたとか。

 なるほど、神から逃げられるような鹿であれば、他の四頭と同じく聖獣でなく、神獣とされてもおかしくない。


「という事は、生まれながらの神獣ってやつ?」

「そういう事だ。元々麒麟様はケリュネイア様が魔獣にし、その後の活躍で神獣となったそうだ。当然、仲が良かったらしく、昔話としてヴァローナ様に話したのだろう」

「へぇ~。そのケリュネイアって神獣はまだ生きてるの?」

「この世界のどこかにはいるって噂だが、詳しくは知らないな」

「なるほどね。ありがとう、参考になったよ。いやぁ~、ヴァローナと違ってゴリさんは優しいなぁ~」


 笑いながら俺が言うと、ゴリさんは溜め息を吐き、俺を嘆くように言った。


「今回の事は別だ」

「ん? どういう事?」

「ヴァローナ様がコディーにケリュネイア様の話をするはずがないだろう……」

「……何で?」

「あぁ見えてヴァローナ様(あの方)は独占欲の強いお方だからな」


 この話のどこに独占欲という単語があったのだろうか?


「ようするに、コディーがケリュネイア様のところに行ってしまわないか、心配なのだろう」

「あー……そういう?」


 なんとも…………獣らしくない。

 そういう事なら仕方ない。鳥刺しの件はなかった事にしてやろう。

 そう思うコディーさんだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 なんて事があったけど……あれ?

 ヴァローナの話は一切参考になってないな? ほとんどゴリさんが話してくれた内容だったのでは?

 そんな俺が首を傾げながら魔王城を出ると、魔王の姉であるミザリーが俺を迎えた。


「閣下、陛下とのお話はもうよろしいので?」


 よろしいから出て来たんだけど、ミザリーの立場上、聞かなくちゃいけないんだろうな。


「あぁ、つつがなく」

「では、こちらへ」


 ミザリーが用件を言わずに俺を連れて行くとは珍しい。

 俺はのしのしと歩きながら彼女の後ろに付いて行く。

 やはりおかしい。ここは魔王城の真裏。

 ……ん? あれ? こんなところに地下への階段なんてあったのか。

 ジメジメとした狭い空間。まぁ、俺が通れるくらいだから人間にしては広いのだろう。

 だが、深部へと行く程、俺の疑念は募った。

「まさか、俺が人間たちと共存しようとしている事がバレたのか?」と。

 そう考えれば考える程、俺はちらちらと背後を気にしてしまう。


「閣下、何か?」

「あ、いや。なんでもない」

「もう間もなくです」


 何だこれは……鉄の臭い?

 夜目が利くのは良い事だ。それは嗅覚情報と共に見えた。


「……地下牢か」


 魔王城地下のカビ臭い場所にある牢屋。

 金属の檻は赤く錆びており、そこまで手入れされていない印象を受ける。

 そして、その奥に見えるは縮こまる一人の影。

 強い警戒と殺気。完全に俺たちを敵として見ているであろうその鋭い視線を、ミザリーは軽く流す。


「先程、捕らえました。おそらくノレイス国の間者でしょう」


 なるほど、不審者が侵入したから俺に報告をした訳か。

 ……さて、相手にとっても俺にとってもこれは難関なのだが、どうしたらいいだろうか。


「ところで、閣下のお好きな拷問は?」


 今晩の食事を決める感じで聞くなよ。

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