052
「え、一体どうしたらなれるんだよ、神獣?」
「というかコディーは神獣になりたかったのか?」
「えぇい! 神獣にならないと魔王から皆を守れないだろう!」
「むっ! そういえばそうだな!」
この鳥の羽毛、一度全て毟ってやろうかな?
「いや、しかしコディーが神獣になったところで魔王から皆を……いや、待て。コディーだからこそ神獣になれば或いは……?」
「いいからそういうの! どうやったら神獣になれるんだよ!」
「それはな、神様が決めるんだ!」
ドヤっと胸を張ったヴァローナの言葉。
こいつが言った内容は理解出来る。しかし、意味がわからなかったのも事実だ。
「久しぶりに出てきたな、神様……」
「普通は会話に出てこないんだよ。神様は」
「それだけ神聖な存在って事?」
「そういう事だ。生まれて一年にも満たないコディーが異常なんだ。これまで生きてて、私はコディーに二度神様の話をしたからな」
ふふんと鼻息を吐いて言ったヴァローナ。
しかし、やはり俺の質問の答えになっていないので、俺は三度ヴァローナに聞く。
「なぁ、教えてくれよ。神様が決めるって一体どういう事だ?」
「文字通りさ。神様に認められたら神獣になれる」
「不確定要素が多過ぎるな……。うーん、つまり、神様が『コディー、いいな!』って思う感じの功績を示せばいいって事だな!?」
「ふむ、まぁそういう感じだ。言っておくが、これまで聖獣から神獣になったヤツは一匹しかいないぞ」
「いるのか!?」
「じゃないと説明出来ないだろう。まったくコディーは――」
「――ソイツは何をして神獣になったんだ!?」
俺はついに、頭の上にいるヴァローナを両前脚で掴みながら言った。
「コ、コディー! 近い! 牙が! 舌が! 息が! そ、それよりも涎が私に掛かりそうなのだが!? コディーさん!?」
「ソイツは、何をして、神獣に、なったんだ?」
「わ、わかった! 話す! 話すから!」
何度も迂回するような言い方をされるこちらの身にもなって欲しい。
俺はヴァローナを地面に置くように放す。
「麒麟はな、元々は優秀な駿馬だった」
麒麟、聞いたことがある。
ファンタジーお決まりの伝説の動物。
「駿馬だったが故、人間に重宝された。各国を繋ぐ早馬。それがヤツの仕事だった。当然、危険な仕事も多かったと聞く。魔物に追われながらの任務遂行。国家の滅亡が懸かった急使。魔王軍の進行を防ぐ一騎駆け。あらゆる危機を乗り越え、ただの駿馬は魔獣となり、霊獣となり、聖獣となり、神獣となった」
「……もしかして、麒麟の背に乗ってたのって――」
「――む、流石にわかるか。大昔の勇者の事さ!」
な、る、ほ、ど。
つまり、勇者と共に無数の戦場をくぐり、世界平和のために奮迅したからこそ、駿馬は神獣となった。俺はそれだけの功績をまだ残していない。神様に認められるだけの功績を。
「な、難しいだろう? まぁ神獣麒麟も、最終的には勇者と共に過ごし、共に死ぬ事を選んだんだ。今はもう生まれながらの神獣しかいない」
「だが、その神獣たちは魔王に対抗するだけの力はない」
「言ってしまえば、今や神獣は階級だけになってしまった。まぁ、通常の獣のためにちょっとした能力はあるけどな」
「なぁ、ヴァローナって長生きしてるんだろ?」
「勿論だ」
そうだ、ヴァローナは、前にヴェインの話をした時「勇者」と聞いてもの凄く驚いていた。
つまり、ヴァローナは過去に出現した勇者の話も知っているという事。
いや、もしかしたらその目で見たのかもしれない。
「今、この世界で、俺より強い獣はどれだけいる?」
「いない!」
……即答だった。
「考えてもみろ? 私は臆病なんだぞ?」
「臆病についてどう考えればいいかわからねぇよ」
「私がこれまで楽園を住処にしていたのには理由がある」
「――っ! もしかしてシロネコか!?」
「その通り! シロネコはオークジェネラルが住む森にいても、殺されないだけの実力だった。だから私はシロネコの近くにいたんだよ」
「酷い神獣もいたもんだ。そりゃシロネコも逃げ出すよ」
「し、仕方ないだろう! 私だって大きな怪我をしたら死ぬんだ! 自衛のためにシロネコを魔獣にして何が悪い!」
確かに、神獣という立場だからこそ考えられる手段。
これで世界の均衡が保たれている訳か。
考えてみれば、魔獣になれる存在が少ない事をもっと理解するべきだった。
しかし、待てよ?
「……おいヴァローナ」
「な、何だコディー!? べ、別にゴリさんよりシロネコの方が強かったから乗り換えた訳じゃないぞ! 断じて違うからな!」
「やっぱりそうか!」
「あ!?」
ゴリさんもシロネコも、ヴァローナが魔獣化させた獣だ。
両者がヴァローナと知り合いで違和感を覚えたんだ。
シロネコが魔獣化しているのであれば、ゴリさんが魔獣化する必要性は無いわけだ。
つまり、ヴァローナはシロネコより前にゴリさんに会い、魔獣化させていた。
そして、ゴリさんとシロネコは顔見知りだ。これはゴリさんがいた密林でシロネコが魔獣化した可能性が高い。そのシロネコがあの密林を出ると決めた場合、臆病なヴァローナが付いて行くのは、絶対に強い方なのだ。
「ゴリさんには上手く言ってあの密林を出たんだな? ヴァローナ?」
「……か、カァー! カァー!」
「そういうのいいから」
「あ、はい」
「ゴリさんから離れ、シロネコが離れ、自分を守ってくれる存在がいなくなった時、運良く現れたのが?」
「……コディーさんです」
凄いな。
三股がバレた烏がここにいる。
別作:「使い魔は使い魔使い」が完結しました! お時間あれば是非ご一読ください!




