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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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 ふむ、困ったな。

 魔力が強すぎるというのも問題だ。

 いや、ある程度抑える事は出来たので、今はココの町にまでそれは届いていない。

 まぁ、その直後に町全体にマジックシールドの魔法が掛けられた時は笑ったが。

 しかし、これ以上抑える事が難しく、非常に困っている。


 それは、魔物との遭遇にある。

 魔力を抑える術はある。単純な話、俺をニッサのマジックシールドの魔法で包んでしまえばいいのだ。しかし、その魔法が解除された時、俺の魔力に耐えられる存在はこの森にはシロネコとゴリさんくらいしかいないだろう。

 それ以外はきっと先のアッシュのように失神してしまう。

 ミスリル鉱山に出掛けた時のようにゆっくり遠ざかったり、ゆっくり近付いたりすれば、獣たちにも問題ないようだが、やはりそれでは魔物と遭遇出来ないのだ。

 危機を察知し、遠くへ逃げてしまう魔物に、どうやって襲いかかるというのだ。

 この問題を解決すべく、俺は一人魔力コントロールを完璧にするため、楽園の更に南に位置する平原にて、瞑想をしている訳だが、その行為がそもそも正解なのかと俺の頭の中で迷走している。


「むぅ……!」

「なぁコディー? その魔力を抑えたら皆の成長度も低くなってしまうぞ。それでもいいのかい?」


 頭の上でヴァローナがそう言った。


「確かにそうなんだけど、自分自身を鍛えないと、俺以上の強さを持った奴が来た時、対処出来ないだろう?」

「ハハハハ! コディー以上の存在? そんな奴、ここら辺にいる訳ないだろう! コディーはたまに本当におかしな事を言う! おかしなのはその馬鹿げた魔力だけにしておくべきだぞ! ハハハハハ!」


 とか、ヴァローナがいつもの調子で俺をからかう。

 ほんのちょっと。ほんのちょっとだけそんなヴァローナがムカついたので、俺は俺の計画の一部を少しだけヴァローナに話してやる事にした。


「ここら辺にはいなくとも、ライオス国の北、ノレイス国の更に北から来るだろう。ヤバイのが」

「あのハルピュイアのルピーって奴か? 奴くらいならゴリさんでも相手出来るはずだぞ?」

「それより強い奴が来たら?」

「はぁ? 本当に大丈夫か、コディー? 奴は魔王軍の幹部だぞ?」

「魔王がいるだろ、魔王が?」


 直後、ヴァローナが石のように固まった。

 それはそれは見事な八咫烏の彫刻のように見えた。

 でも、ヴァローナである。


「い、いや、確かにいるが、魔王がこんなところに来るはずが……え?」

「俺は呼ぶつもりだぞ?」


 またヴァローナが固まった。

 なるほど、今日のヴァローナは人間的な視点で見れば、ちょっとだけ可愛いのかもしれない。まぁ、この次に起こる事は容易に想像出来るので、俺は先手として耳を折りたたんでおく。



「何ぃいいいいいいいいい!? 楽園に魔王を呼ぶだってぇええええええええ!?」


 今日もいつもヴァローナはやかましい。


「一体何故!? どうして!? 何で!? む、無性に空を飛びたくなったぞ! とぉ――うぉ!?」


 俺は飛び立とうとしたヴァローナの脚を掴む。


「何一人だけ逃げようとしてるんだよ?」

「だっていつ魔王が来るかわからないじゃないか! 私は嫌だぞ! 魔王となんて会いたくない! ヴァローナ魔王怖い!」


 いつになく正直なヴァローナだ。とてもからかい甲斐がある。


「大丈夫だよ。来るといってもまだ先だ」

「何故!? 何故コディーは魔王が来るタイミングがわかるのだ! ま、まさかコディーは……既に魔王軍に!? とぉ――うぉ!?」


 またも逃げだそうとしたヴァローナの脚を掴まえる。


「だから逃げるなって。別に魔王軍に入った訳じゃないって」

「じゃ、じゃあ一体どういう意味なんだ! 私にわかるように説明するんだ! 神の鳥はお怒りだぞ! うん!!」

「熱くなるなよ。まったく。あのな? これからルピーの往復便で後数回は交渉出来るし、時間もある。最後の交渉になった時、魔王は動く他なくなる手はずだ」

「何故だ!?」


 耳元できんきん聞こえるヴァローナの声。

 嘴が骨じゃなければ縫い付けてやるんだけどな。


「俺が神獣になってるからだよ」

「…………何だって?」

「俺が神獣になれば、こっちの戦力は神獣二匹、聖獣一匹……いや、ゴリさんにも聖獣を目指してもらいたいから二匹か? まぁそれだけの戦力になれば、流石に魔王自らがスカウトしに来る他ないんだよ。単純に考えて、ハルピュイアだと分不相応だしな」

「た、確かに魔王が来るだけの戦力ではある。え? でも呼んでどうするのだ!?」

「魔王軍に入るんだよ」

「コディー! 見損なったぞ!! とぉ――うぉ!?」

「だーかーら! 逃げるなって! あくまで表面上は、だよ!」

「一体どういう意味なんだ! 私にわかるように説明するんだ! 神の鳥はお怒りだぞ! うん!!」


 どこかで聞いた事のある質問である。


「それだけの戦力で魔王がスカウトに来たら、魔王は俺にどのポジションを用意すると思う?」

「それは……とても高い地位だな! うん!」

「魔王の次に高い地位だと思うぞ、俺は」

「二番目か!」

「そう、二番目に偉いポジションに座れば、当然魔王軍の指揮も出来る。だったら、人間と共存出来る方針にする事も可能だろう?」

「……何とも、壮大な話だな」

「まぁ、半分は願望さ。これが無理でも、考えはある」

「凄いな! 第二案や第三案もあるのか!」


 流石に第三案はないが、折角ヴァローナが褒めてくれているのだ。そのまま乗っかっておくか。


「という訳で、まずは魔力コントロールを覚えて、魔物を狩るんだ。魔力はそうする事で増えてくみたいだしな」

「……ん? 魔物を狩るだけでは神獣にはなれないぞ?」


 ……何だって?

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