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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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「そうなんだよ、ルピー。彼がゴリさん。俺には霊獣の部下がいるんだよ。だからさ、悪いんだけどもう一度魔王様に確認してきてくれない? 確かに幹部筆頭のポジションは嬉しいんだけど……いや、流石魔王様! って思うよ? でもさ、それはやっぱり聖獣だけの条件じゃん? 配下に霊獣もいるってなれば、その条件は違うかなーって思うでしょ? ね? ルピーも思うでしょ? やっぱり! そうだと思ってた! ルピーってかしこいから! そういうとこあるよね! うんうん。いや、そんなに俺褒めても何も出ないって! はははは。うん。それじゃあ魔王様にしっかり伝えてくれよ。おう、またな! 今度来た時何かご馳走するよ。うん、それじゃあな~!」


 ……ふぅ。


「よし、完璧だったなゴリさん!?」

「いや、あれは余りにも酷いんじゃないか? あのハルピュイア……ルピーといったか。ルピーは完全にコディーに洗脳されていたように見えたが?」

「うぇ!? そんな事ないって! 親身になって話してるだけだろ? な?」

「それはあそこで隠れている皆に聞いてみるんだな」


 茂みから現れたのは、神獣ヴァローナ、


「いや痛快だったな! しかし、正にあれは鳥頭だな! ハハハハハ!」


 聖獣シロネコ、


『何を言ってるかサッパリだったが、コディーの話術には何か闇を見たぞ……うぅ、寒気が……!?』


 ランクA冒険者ニッサ、


「むごい」


 ランクA冒険者ダニエル、


「あっしは何も見やせんでしたっ! ほんと、何も見やせんでした!!」


 最後に現れたのが、ランクB冒険者アッシュだ。


「ホント、何なんですかここ? 神獣、聖獣二匹、霊獣にライオス国の姫君までいて魔王軍? マジ訳わかんねーっす」


 なるほど、付き合いの長いヴァローナだけか。いや、あれは鳥頭だから見過ごしたのか?

 まぁヴァローナだしそういう事なのかもしれない。

 シロネコには何かを伝えてしまったようだ。

 ニッサの視線は日に日に冷たくなっていくな。クール美女って好きだからいいけどな。そういう問題じゃないと突っ込まれようが、俺はこの問題をこうして回避していくしかないのだ。……今はまだな。


「あ、そうだ。アッシュ」

「へ? な、何です?」

「これやるよ」


 近くに置いておいた麻袋をアッシュに渡す。

 アッシュはそれを開けて覗くなり、すぐに袋の口を閉じて俺を見たのだ。


「……マジっすか?」

「大マジだ」


 そう言った俺の牙は、とても輝いていた事だろう。もしかしたら今朝食べた魚の骨が挟まっていたかもしれないが。輝いていた事に変わりはないのだ。

 アッシュが再び麻袋に顔を突っ込む。まるで顔が麻袋になったかのようだ。

 当然、この麻袋の中にはミスリル鉱石の原石がかなりの量入っている。

 ニッサの見立てでは、これだけでディーナ救出の報酬を上回るとの事だ。

 一応ダニエルにも渡すつもりだが、まずは彼から調略する。


「コディーさん? アッシュのヤツはどうしちまったんで? 危ない葉っぱでも吸ってるんじゃありませんか?」

「あぁいいんだダニエル。彼は大丈夫だから。それより、ちょっと頼まれてくれないか?」

「俺にですかい?」


 さっき「あっし」とか言ってたのはテンションが上がったからだろうか。

 まぁ、たまに自分の一人称が変わったりする時ってあるよな。

 俺はジジにもらったショルダーバッグから一枚の紙を取り出し、ダニエルに渡す。


「こいつぁ……人間の生活道具?」

「ディーナ用のな。後、ニッサも何か欲しいとか言ってたぞ」

「いや、ニッサちゃんは自分で町に行けるでしょうに」

「ダニエル、馬車持ってる」


 口を挟んできたのは、ニッサ当人。

 なるほど、馬車じゃないと運べないような大きな物って事か。

 ……ん?


「もしかしてニッサ、ここに住むつもりか?」

「楽園……」


 とかぼそりと言いながら、俺にピースサインを送ってくるニッサ――マジ怖い。


「いや、ここは動物たちの――」

「――誰かが言いました。人間も動物だと」


 もの凄い拡大解釈もあったものだ。

 どうしよう。獣と言い直すべきか?

 いや、そしたらダニエルとかが「人間は誰しも獣」とか笑って言いそうだ。

 仕方ない。折れるしかないか。実際ニッサがいる事で助かってるところもある。

 ディーナにも気に入られてるし、断るのも無粋だ。


「……はぁ、好きにしろ」

「うん……!」


 珍しく嬉しそうなニッサは、それを隠すようにシロネコの下にトコトコと小走りに向かった。最近あの二人はとても仲がいい。

 そして、今更ではあるが、ゴリさんとシロネコが白色で被っている。

 まぁヴァローナは黒いし、俺の毛色も茶色いからバランスとしては悪くないけどな。


「代金は次回来た時払うよ」

「え、いいんですかい?」

「払わなかったら、それはそれで問題だろう?」

「この森に金銭があるとは思えませんけどね?」

「適度にしつこい侵入者を追い剥ぎしてるから、意外にあるぞ」

「は、ははははは……」


 まぁ、次回の代金はミスリル鉱石だけどな。

 さぁ、次にルピーが来るのは一週間後か。ヴァローナとシロネコ……後はディーナも数に入れられるか。色々含めて、稼げて四ターンってとこだな。この一ヶ月が勝負の時だ。

 明日から頑張らなくちゃならない。

 そう、俺は神獣を目指すんだ。

ルピーさんまじちょれ~

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