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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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039

 俺に起きた変化。

 それは、魔獣から聖獣になった事だ。

 聖獣になって大きく変わったのは三つ。

 一つ目は内包する魔力量。これがケタ違いに大きくなった。

 それこそ、ジジやヴェインが住んでいた町に届いてしまう程に、だ。

 魔力に敏感な魔法使いタイプの冒険者や、高ランクの冒険者があの町にやってくると、少なからず縮こまるそうだ。因みにこれは優秀な冒険者であるダニエル君の情報である。

 俺の魔力が大きすぎる故、楽園の中での俺の行動を追うのは非常に難しい。

 何故なら、「探査するであろう敵は、俺の魔力内にいると言っても過言ではないのだから」と、ヴァローナが言ってた。

 そして二つ目は純粋な身体の大きさ。

 何だろう。ますますジジとの約束を果たせなさそうな程大きくなった。成体であるコディアックヒグマの倍程には大きいだろう。

 体感でだが、立ち上がればおそらく六メートルはあるだろう。体重は……多分一トンくらい。まぁ、これに関しては正確ではない。でも、それだけ大きくなってしまった訳だ。

 これまたヴァローナ曰く「聖獣であるために、身体もその魔力に対応できるように成長した」のだそうだ。

 そして最後の三つ目。

 これが一番の不思議である。

 楽園が…………成長した事。

 つまり、森が大きくなっているのだ。

 野生の馬が住めるような大きな広場すらも有した巨大な深緑の森。

 それが今の楽園だ。

 従順になる前のダニエル君は、「この森の存在を人間が無視出来るはずがない」と言っていた。

 どうやら人間界でもこの森はかなり有名になってるそうだ。

 なんたって、魔獣(ゴリさん)聖獣(オレ)神獣(ヴァローナ)のそろい踏みだ。俺が人間でもおっかなくて近付けない。

 まぁ、こちら側からしたら、危険はないんだけどな。

 しかし、そんな俺たちを人間は無視出来ない。

 それは、ディーナの件、危険度の件もそうだが、それ以上に俺たちは貴重な存在なのだ。

 これまたダニエル談だが、魔獣の皮は非常に高値で取引され、聖獣の皮なんて市場に出回れば、それこそ国が動く事態なのだと。さすがに神獣であるヴァローナの羽やら肉やら血の価値に関しては情報を得られなかったが、神獣であるヴァローナがここにいると知られている以上、油断は禁物である。ゴリさんも、当然俺も。


 ――最近獣狩りをしている冒険者グループがいるとかいないとか……。


 ダニエルの情報に間違いはないだろう。

 そして、先程まで俺たちを観察していた冒険者二人は、俺の必殺の範囲内を歩いている。

 楽園を出て、どこに向かうのかと思えば、やはりジジが住んでいた町だ。

 あの町――ココの町といったか? 盗賊や山賊だったら住処は野だが、冒険者がいるのはそりゃ町だよな。

 しかも、俺たちは獣だ。

 たとえ魔獣や聖獣を狙ったところで、彼等が罪に問われる事はない。

 生活の糧を得るために貴重な魔獣や聖獣の毛皮を狙うのは、人間側からしたら当たり前の事なのだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 翌日、ダニエルと新人君以外の冒険者が四人に増えた。

 女の冒険者が二人、男の冒険者が二人。

 一人は魔法使い風の杖を持った成人前の女だろうか。幼さ残る眼鏡女魔法使いだ。

 もう一人は戦士風の露出の多い筋肉質の女冒険者。

 無骨そうな角張った顔の戦士風の男冒険者。

 そして女魔法使いに 似た年齢であろう青年。これもまた戦士タイプだ。

 男二人は、昨日偵察に来てた二人だな。

 流石にこの人数は見過ごせない。

 仕方ないので、俺が外交の場に出る。というか、出るしかなかった。


「おい」

「「っ!?」」


 当然この四人は気配を消し、俺たちから隠れていた。

 しかし、そんな事が通じるコディーさんではないのだ。

 こちらは魔王軍にも目を付けられているとても残念な程注目を浴びる存在なのだ。そんな視線は、すぐに気付いてしまうのだ。


「何か用か?」

「……凄い、喋った」


 女魔法使いが独り言のように零した。

 どういう評価かは知らないが、あの子は生かして返してあげようと決めたコディーさんだった。


「くっ! やはり人語を操るか、聖獣め!」


 青年冒険者は俺を見るなり剣を抜いた。

 聖獣は総じて悪なのだろうか? それともやはり毛皮が目当て? 聖なる獣って意味じゃないの? 少しは尊重して欲しいものだ。


「情報通りってやつだね!」


 女戦士も盾を前に出しながら剣を引き抜いた。

 それに続き、無骨戦士も大きな戦斧(せんぷ)を構えたのだ。


「この森に、何か用かと聞いている」


 俺は警告のようにもう一度言った。

 これに温和に対応してくれるならば、気にする相手ではない。

 しかし――――、


「ふん、お前の皮が欲しいと言えばいいか?」


 こういう場合であれば、対処しなくてはならないだろう。


「ならば自衛のためにこちらも暴力を辞さないが?」


 ミスリルクロウの刃を立てると、女戦士の目付きが変わった。


「いいね、どこで拾ったかわからないけど、ありゃミスリル製だよぉ。売れば半年は遊んで暮らせるな」


 そんな女戦士の煽るような言葉だったが、俺はそんな戯れ言に反応する以上に感動する事があったのだ。

 …………え? そんな高価なモノくれたの、ジジってば!!

 やばい、超嬉しい。


「な、何て恐ろしい笑みだ……!」


 おっと、戦闘になりそうだ。

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