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書いてみたくなったので書いてしまった。

 もう少しまともな状況で転生したかった。

 交通事故で死んでしまったのは仕方のない事だ。

 出来れば轢いたやつにはそれ相応の罰を受けてもらいたいところだが、今話すべき点はそこじゃない。

 まさか、クマに転生するとは思わないだろう。

 川に映る自分の姿と小さな身体ながら毛むくじゃらな腕。


『どう見てもクマじゃん』


 二足歩行より、四足歩行の方がしっくりくるが、俺は人間の尊厳を忘れるつもりはない。意地でも二足歩行に慣れ――

 ――そう思った時期が俺にもあった。

 四足歩行快適過ぎ。何これ?

 オリンピックの陸上アスリートすら遅く見えるレベルで速いぞこれ?

 しかもまだ子供みたいだし、こりゃ未来は明るいのでは?

 しかしクマった。いや、困った。

 俺はクマの子供。しかし何故か親がいない。

 生まれた時の事も覚えていない。気付いたらこの川の側にいた。


『どうしよう』


 いやいや、子供とはいえクマだ。

 クマはクマ以外に天敵はいないと言われてるくらいだ。

 きっと大丈夫――――


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 ――――そんな俺の上空を、巨大な影が横切って行った。

 遠くの空を見つめれば、そこには緑色の体表をした巨大な……鳥?


『……鳥だ。絶対に鳥だ。ドラゴンっぽく見えるけど鳥なんだ!』


 そう言い聞かせた俺は、近くをキョロキョロと見渡し、正面にある平原に何も見えないと知ると、川の中に顔を突っ込んでみた。

 水の中には見た事もない魚と共に、巨大な蛙のような生き物もいた。

 今の俺の顔面くらいありそうな大きな蛙。


『ぷぅ! ……何アレ、怖い』


 そう思っている内に、その蛙が川の中から跳び出してきた。


「ゲーコッ……ベッ!」

『おわっ!?』


 蛙は超長い舌を俺に向かって出した。かろうじてかわしたが、俺が立っていた場所は土が掘り返される程の衝撃を受けていた。

 ……当たったら痛そうだな。

 俺は近くにあった握りこぶし大の石を拾い、その舌を避けながら投げた。

 外れては石を拾い、投げた。


「グベッ!?」

『チャンス!』


 蛙が一瞬怯んだ隙に、俺はその距離を詰めて腕を振り被った。


『てぇええい!』


 自分でも驚くくらいの鋭い攻撃により、蛙はあっけなく絶命した。

 しかし、次の瞬間、川から無数の同じ蛙が跳び出てきたのだ。


『……大地の怒りに触れちゃった?』


 直後、無数の蛙から無数の舌が伸びてきて、俺を襲った。


『あいて!? いててててて…………ん?』


 何度もペチペチと食らうが、意外な事に全然痛くなかったのだ。

 あれ? これなら目をガードすればいけるのでは?


『ダーッシュ!』

「「ゲコッ!?」」

『ていていていていてぇええいっ!!』

「「ゲコーッ!?」」


 ふぅ、終わった……。

 合計で二十匹はいただろうか。

 しかし、何とか倒す事が出来た。

 戦ってて思ったが、毒はなかったのだろうか?

 今のところ大丈夫だから問題ないとは思うが、今後は気を付けなくちゃいけないな。

 それにしても、クマの爪ってこんなに鋭いんだな。

 図鑑や動画でしか知らなかったけど、自分がクマになってわかる事が沢山あるよな。

 そんな事を考えていると、俺の体内から物凄い低音が響いた。


『……なるほど、空腹のサインだな。魚……獲れるかな?』


 ええい、やってみるしかない。

 川の中を覗くと、やはり魚がうようよと泳いでいる。


『ん~~……てい! あ、駄目だ。も、もう一回! 魚の動きを読むより魚の動きを待つ感じにしよう。それで逃げ道を塞いでやれば……てい!』


 次の瞬間、魚は地面に飛ばされ、その上でぴちぴちと跳ねていた。


『お~、上手くいった』


 ふむ? 結構大きいな。この斑点……アメマスかな?

 まぁいいや。さっそく内蔵を…………って、


『包丁ないじゃん』


 どうしよう? 生のままいくか? いやいや、流石に内臓は食べたくない。

 それとも石を加工して……? もしかして爪で削れるかも? ん? 爪?


『おぉ! そうだ俺には鋭い爪があったんだ!』


 鱗をとり、頭を落とし、腹部を割いて……内臓を取り出す。

 背中から爪を入れてガリガリっと。んでまた腹側を切って…………よし!


『アメマスの三枚おろし! 久しぶりだったから出来るか心配だったけど、うまくいったな』


 その後、皮を剥いでピンク色の刺身を葉の上に並べた。


『完璧だな! 醤油があれば最高だったが、仕方ない。いっただっきま――――』

「――――きゃぁああっ!」


 空腹な俺の耳に悲鳴が届いた瞬間だった。

 くそ、人の食事を邪魔するとはどんなやつだ?

 俺は刺身を放置し、悲鳴がした方に駆けて行った。

 意外な事に現場は近く、そこは川をほんの少し下流に行ったところだった。

 正面にいるのは髪の短い……女か?

 そこで俺はブレーキを掛けた。

 ……おかしい。女が剣を抜いて変な生物の前で構えている。

 変な生物はぴょんぴょんとその場で軽やかに跳び、ナイフを巧みに扱っている。しかし、そいつは男ではなかった。

 現代人だった俺には馴染み深い奴かもしれない。

 あれはモンスターっていうんだ。

 ドラゴンみたいな生物を上空に見かけてから、変な蛙に襲われてから薄々は気付いていたんだが、本当に困った。

 ゴブリンのようなモンスターが女を襲い、女も女で剣を持っている。

 現代で剣を持っている女は、どこかのコスプレ会場くらいだと思っていた。

 しかし、どうしてもわかってしまうものだな。

 ……ここは現代じゃない。

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