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日本昔話 桃太郎伝説物語 

作者: 岡島亜麻音

昔々。

今からでは想像もつかないぐらいの昔。


藤原氏が力を持っていたころであった。

山奥にはお爺さんと、お婆さんが住んでいた。


お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯しに行く。

ということが彼らの日常で、彼らの仕事であった。



次の話は、とある一人の男の子が、悪い鬼を退治するという英雄物語

であると同時に、とある女子との恋物語である。



その当時、たくさんの鬼が、鬼ヶ島からやってくる毎日が続いていた。

もうかれこれ百年近くは立っているかもしれない。

鬼は、たくさんの村にやってきては、カツアゲよりもたちの悪い行いをし、村人からたくさんの金目の物を手に入れていた。

これに対し、村や国の税を管理していた者たち(のちに守護や地頭となる者たち)が、精いっぱい戦ったわけだが、残念ながら何一つ、誰一人太刀打ちできず、国自体がもう鬼のことを諦めていた。


もちろん、鬼はお爺さんやお婆さんの済む山奥の村であってもやってくるのである…。

「なあお爺さんや。金になるものを俺らに分けてくれよ。」

「何をバカな!お前さんのような怠け者に、何もくれてやるものなどない!」

「このジジイ。言いやがったな!」

鬼は拳をあげ、お爺さんを殴った。


「痛い!くそぉ…。」

「何ももてなさない爺さんが悪いんだ。ったく、漁らせてもらうぜ。」


そう言い、鬼はズカズカとお爺さんの家に入っていった。





「くそ!何もねぇのかよ…。」

鬼は諦めたのか、お爺さんを一蹴りして帰っていった。


その様子をじっと見守っていたお婆さんがお爺さんのもとに駆け付けた。


「大丈夫かい?爺や…。」

「大丈夫じゃ…。心配せんでいい。はよ、洗濯してきなさい。」


そう言うと、お婆さんは洗濯ものを持って、川へ向かった。


「さて…。わしも山へ向かうか…。」


お爺さんは鎌と斧を持って、山へ同時に向かったのだった。




「爺や、本当に大丈夫なのか…。」


お爺さんを心配しながらも、お婆さんは川へ行く。

少し小汚い服の袖をまくり、洗濯しだした。


洗濯して間もないころ、川上から大きいももが


どんぶらこ、どんぶらこ


と流れてきたのだった。


「なんだろう、これは…。」


お婆さんは不思議に思い、その桃を川から出そうとした。

が、お婆さんにとって、その桃は少し重く、なかなか川から出すことが出来なかった。


「なかなか、出せないねぇ…。」


そんなことを言いながら、お婆さんは持ってきた服をつないで、桃を出そうとした。


「そぉれ!」


桃は何とか川から出てきた。

その桃はもう、大きいというぐらいのものではない。

普通の桃なら、大きくてもせいぜい、掌に収まるほどである。

が、この桃は違った。

なんと、お婆さんと同じぐらいの大きさなのだ。


「これは、もってかえるのに困るねえ…。」


そんなことを考えつつも、引き続き洗濯を続けた。



一方その頃、お爺さんは、体の痛みを感じながらも、山を登っていた。


「よっこらせ、よっこらせ…。」


お爺さんは、一生懸命に竹を切って、切って、切っていた。


竹を切り続け、十分ほどたち、山の奥のほうまで来たところだった。

お爺さんの目の前に、光る竹が現れたのだった。


「おやおや、これは、どうしたものか…。」


お爺さんは好奇心にかられ、その光る場所を切ったのだった。

するとどうだろう。

なかから、とても小さい女の子が出てきたではないか…。


「これはこれは!どういうことなのだろう…。」


お爺さんは喜んだ。

というのも、実のところ、お爺さんとお婆さんの間には、子供がいないのだ。

それゆえその女の子を、どういう勘違いかは分からないが、自分の子供として迎え入れていた。


「にしても。とっても小さいなぁ…。」


赤ん坊、にしては髪が多く生えており、二歳の子供、にしては小さすぎる。

竹の細さよりも細かったのだ。

そりゃあ、縦にも必然的に小さくなるものだ。


「この子を、この子を持って帰ろう…。」


そう決心し、お爺さんは刈った竹をわらの籠に詰め、山を降りた。




「ただいま戻りました。」


お爺さんとお婆さんの声が重なった。

そして、お互いの持っているものを見て、お互い腰を抜かしたのだった。


「どうしたんですかお爺さん。そんな小さな子供!」

「おやおや婆さん、どうしたんだいその大きな桃は…。」


驚いた顔を浮かべていたお爺さんとお婆さんだったが、お婆さんだけは怒った。


「どうしたんです?そんな、どこの誰かのもわからない子を!」

「違うんだ、婆さんや。これには深い理由があるんだ…。」

「深い理由?」


お婆さんは首をかしげた。


「そう!深い理由、実はだな。竹を刈っていると、光る竹が出てきて、それを切ってみればその子が出てきたのだよ。」

「それはなんとまぁ!仏様が、神様が授けてくれたのでしょう!」


この時代、このような類に対する信仰は、とても深かった。

のちの時代になるが、室町時代の足利のとある将軍も、くじ引きによって決まったという話もある。


「これは、わしらが大切に育てましょう。」

「そうですね。」


お婆さんに、笑顔が返ってきた。


「ところで婆さんや。その桃はどうしたんだい?」

「これですか?これは、桃です。」

「それは見たらわかるよ…。そうではなく、どこからもらったのかと。」

「奇遇ですね爺や。これもあなたと同じ、神様からの授かりものです。」

「それはすごいなぁ!」


お爺さんは、また腰を抜かした。

たいそう驚かれたことだろう。

このようなものを、一度に二つももらってしまったのだから…。


「それでは、早速その桃を割りましょう。」

「そうですね。」


こうして、台所へ向かうことになったのだが、台所では狭いことを感じ、

二人とも、表に出ることにした。




「しかし、どうやって切るものかね…。」


この桃の難点は、大きすぎて、切れないということ。

もっといえば、一日で食べようとすることさえ、困難なのだ。


「仕方がない。わしの斧を使っておくれ。」

「よいのですか?」

「構わん、神様からのもらいものじゃ。わしは何でもする。」


お婆さんは、お爺さんの斧を振った。


するとどうだろう。

元気な産声とともに、中からかわいい男の子の赤ん坊が出てきた。

先ほどの女の子とは違い、人間らしい赤ん坊の姿だった。


「おやまぁ…。これは…。」

「もう一人の、子供かね?…」


お爺さんも、お婆さんもとても驚いている様子であった。


「一度に、二人も子供が来るなんて…。」

「ほんとうに、わしらは恵まれているなぁ…。」


そんな会話をしながら、彼らはこの子供たちに名前をつけた

男の子には、桃から生まれたことからちなんで「桃太郎と」。

女の子には、竹から生まれたことにちなんで「かぐや姫」と。




この子供たちを授かりなさって、十何年という月日がたったころだった。

いつものように、鬼が村にやってきたのだった。


「おい爺さん、金目の物を出してくれよ。」


前のように、大きな態度でお爺さんに寄ってきた。


「わしらに、金目のものなどあるわけがないんじゃがなぁ…。」

「あぁ?!」


鬼はまた、たいそう怒っていた。


「もういい。他の場所を回る。」


そう言って鬼が家を出ようとした時、一人の男の子が家から大声でこんなことを言った。


「お前のような、働かないでおろかなヤツが、人々の害悪な存在が、何を言うんだ!」


鬼は後ろを振り返り、こちらに戻ってきた。


「おい!今、なんつった?」

「だから!そんなことをしても、誰一人いい気にならn…。」

「うるせぇよ!ガキの分際が!」


鬼はズカズカと家に上がってきた。


「このガキ!ったく!」


鬼は桃太郎の髪を引っ張り、叩こうとした。

が、桃太郎にその張り手は効かなかった。


「なんだコイツ!」

「やられちまえ!」


桃太郎は鬼の腹を殴った。

見事に鬼は外まで吹っ飛ばされ、逃げ帰ってしまった。


「何をしているんだい?!」

「お婆さん…。」

「ちょっと…」

「桃。後で家族会議じゃ…。」


お爺さんは太く低い声で、桃太郎にそう告げた。


「どうして…そんな…」




「桃。座るんじゃ…。」


お爺さんは、食卓に三人を呼び、桃太郎を座らせた。


「とりあえず、なぜ昼間はあのようなことをしたのだ?!」

「それは…」

「お前のその行動は、間違っていたのだ。」


桃太郎は疑問に思っていた。

結果オーライでうまくいったはずの、この現実に、お爺さんが怒っていたからだ。


「お前のその行動はな…。お前が死んでしまうかもしれなかったのだぞ…。」


お爺さんとお婆さんは泣きだした。

それに桃太郎は戸惑いった。


「けどお爺さん。ヤツらはいけないことをしているのです。それをいけないというのは、人間のするべきことです。どうしてそれを…」

「いけなくても、武力でやられてしもうてはダメなんじゃ。わしだけでなく、皆が死んでしまう…。

桃。お前もじゃ…。」

「けど…」

「それに、もしお前があそこまで強くなかったとしよう。

お前は必ず死んでいた…。

もう…わしらをかなしませんでくれ…。」

「お爺さん…」


桃太郎の心は沈んだ。

これほどまでお爺さんを、家族をかなしませたことに、自暴自棄になっていた。


お爺さんは立ち上がり、桃太郎にこう言った。


「もうよい…。」


寝床へと、行ってしまったのであった…。


「桃…。」

「桃太郎…」


かぐや姫も、お婆さんもかなしんでいた。

同時に、やるせない気持ちにもなっていたのだろう。


こんな暗い状況を、なんとかして壊したい。

それが二人の思っていることだった。


「お婆さん。かぐや。僕、もう寝るよ…。」

「わかりました…。」

「おやすみなさい…」




こうして、四人の生活の中で一番暗い日が終わったのだった。




その日から一週間が過ぎたところだろうか。

ものすごい音をたてて、こちらに巨大な集団が向かってきたのだった。


「な…なにごとじゃ…」


よく見てみると、なんと皇族らしき人物と、その護衛、もろもろがこちらに来ていたのだった。


「とうとう、来よったか…。」


お爺さんは不思議に思いながらも、近づきに行った。



「かぐや姫はおらぬか―。かぐや姫はおらぬか―。」


皇族らしき方は、そう大声をあげなさった。


「帝様。お待ちしておりました。」


というお爺さんの発言とともに、周りのものは、たいそう驚かれていた。


お爺さんの口が動いた。


「うむ、久しぶりだ、爺。」

「そうですな…」

「早速だが、かぐや姫に会わせてくれぬか?」

「えぇ…わかりました。家にいると思うので、是非こちらに来てください。」


というお爺さんの発言に対し、

護衛の一人が、天皇の肩をお持ちになった。

が、天皇は、その手をほどかれ、お爺さんの向かう方向へ、ついて行かれた。


歩いている途中、とても神々しい姿の女を見た。


「これが、かぐや姫か?…」


圧巻している様子にかぐや姫は気付き、すぐさま消えたのだった。


「話に聞いていたが、まさか本当にこの世の者ではないのか…。が、すばらしい!」


天皇はたいそうよろこびなさった。

という様子をお爺さんは、陰から見ていたのだった。





その日から二年。

桃太郎は、ある一つのことを決心した。

それは、

「鬼退治」

である。


もちろん、最初はお爺さんもお婆さんも怒っていた。

それも、前以上に。


が、かぐや姫だけは、それに賛同していた。

それと同時に、過去の話をした結果、見事に鬼退治に行く許可が出たのだった。


「桃。もし行くのなら。これを持ってお行き。」


お婆さんは、押し入れの奥底に向かった。


帰ってきた時、お婆さんはものスゴイ刀を桃太郎に渡した。


「これは、わしらの家に古くから伝わる宝刀じゃ。

本来ならば、悪霊退散として使っていたが、

こんなにも行きたいと言っているのじゃ。

これをお前に授けよう。」

「お婆さん、ありがとう!」


桃太郎はたいそう喜んだ。


「桃。必ず、生きて帰るんじゃ。いいな?」

「もちろんです…。」


桃太郎は、家族三人に抱きついた。


「じゃあ、早速明日から行ってくるよ…。」

「わかった…。気をつけるんじゃぞ…。」


桃太郎は喜び勇み、はしゃぎまわった。





「あまり無理をするでないぞ。」


翌日になり、お爺さんは桃太郎をなでた。


「もちろんです。」

「桃。これとこれを持ってお行き。」


お婆さんは、桃太郎、と大きく書かれた旗を桃太郎に渡した。


「これは?…」

「頑張れ。っていう、わしらからの贈り物じゃ…。」

「ありがとう!」

「それとこれじゃ。」


もうひとつ、お婆さんは、たくさんのきび団子が入った袋を渡した。


「これって…。」

「絶対に力がつくはずじゃ。絶対にな。」

「ありがとう…。頑張ります…。」


桃太郎は、嬉しさのあまり、泣き出してしまった。

と、桃太郎は、一つ、言い忘れていたことを思い出した。


「お爺さん、お婆さん」

「どうしたんだい?」

「かぐやを…かぐや姫を連れてきてくれる?」

「いいとも…」


お爺さんは、表にかぐや姫を呼んだ。


「どうしたの?桃。」

「かぐや…。この鬼退治が終わったら、僕が生きてたら。結婚しよう…。」

「…」


かぐや姫は黙りこくった。


「どうしたんだい?」

「それは、出来ないわ…。」

「えぇ?どうして?!」


桃太郎は落胆した。


「ダメなの。私…。結婚したら…。もう…」


かぐや姫は激しく泣き始めた。

何があったのか桃太郎にはさっぱり分からず、戸惑っていた。


「どういうことなの?」

「それはね…。実はw」

「もうよい…。」


お爺さんはかぐや姫の言葉を遮った。


「どうして?」


お爺さんは、かぐや姫の耳をよこしてこう言った。


「今言えば、桃がかなしんでしまう…。

そうすれば、桃に力が湧かなくなってしまう…。

鬼を退治できなくなってしまう。

じゃから、今は言うな…。」

「…」


かぐや姫は何も言えず、その場から消えてしまった。


「どうしたんですか?」

「どうもしないわい。はよお行きなさい。」



こうして、家を出されるような感じで、桃太郎は鬼ヶ島に向かった。




家を、村を離れ、山へ入っていった桃太郎だった。

が、ここで一匹の動物に出会った。


「これはこれは、桃君どちらへ?」


犬である。

この時代の動物はどういうわけか、言葉を喋り、理解できる。


「あぁ。僕は鬼退治に行くんだ。」

「それはすごいねぇ…。」


犬は、少し考えこう言った。


「そうだ、そのきび団子を一つ、僕にくれよ。」

「いいよ。」

「やったぁ!ねね。お伴してもいい?」


桃太郎は快く受け入れた。




更に進んでいくと、今度は猿に会った。


「コイツぁすげぇや。桃さん。どちらへ?」

「あぁ、鬼ヶ島に行こうと思って。」

「鬼退治ですか?!」


猿はたいそう驚いた。


「うん。」

「じゃあさ、そのきび団子を分けてくれよ。お伴したい。」

「どうぞ。」


こうして二匹目がついた。




そしてこれが最後だった。

雉に出会った。


「これはこれは。桃太郎さん。どちらへ?」

「あぁ、鬼退治さ。」

「ほぉ!それはスゴイですね。そのきび団子をくれませんか?私はあなたと行きたいです。」

「どうぞ!」


三匹と一人がそろい、旅は進んだ。




海岸まで着くと、一人の漁師に出会った。


「おや、桃。どうしたんだよ。」

「あぁ、浦島さん。今日はどうしたんですか?」

「俺?あぁ、カメを待ってんだ。」

「カメ?」


桃太郎は怪訝そうな顔で聞き返した。


「そう、カメ。俺は今から竜宮城ってところに案内されるんだ。」

「遊びですか?」

「あぁ!んで、お前は?」

「鬼退治です。」

「そりゃすげぇや…。」


浦島…うらしま太郎はたいそう驚いた。


「そうだ、俺の船持っていきなよ。向こうまで一瞬で着くぜ。」

「一瞬って、盛りすぎですよ。」

「そうだな!はっはっは!」


実に愉快な人である。

と思ったのか、桃太郎は笑った。


「それでは、借りますね。」

「おう!無事を祈るぜ!」


こうして、鬼ヶ島まで船で行くことになった。




「しっかし、桃さん。アンタ交友関係広いですな。」

「そんなことないさ。」


桃太郎は笑顔で返す。


「そうでしょうかねぇ…。動物とは皆仲がいいし」

「そうそう、俺らのこの仲も、あんたがいたからよくなったんだよ。」


猿と犬は顔を見合わせ、笑った。


「そうかなぁ…。あ、見えてきた。」


鬼ヶ島の特徴である、角のような山が見えてきたのだった。


「気を引き締めるよ。」


そう言って、島に突っ込んだのだった。




「鍵がかかってるようですよ。」

「にしても、警備の鬼がいるなぁ…。」


二匹ほど、警備の鬼が立っていた。

棍棒を持って。


「とりあえず、真正面から切り込む?」

「桃さん、それじゃ死んじまいますよ。」


猿は、桃太郎に反対した。


「ここは、俺らがヤツらから鍵を奪います。雉。お前と二人だったら、どうにかなるだろ。」

「そうですね…。」


雉は猿に賛同し、二人は忍ぶように向かった。


「それじゃ、あけてくれるまで僕らは待機だね。」

「そうですな。」


ということで、雉と猿は見事鍵のスリに成功し、桃太郎たちは入ることが出来るようになった。


「いくよ!」

「はい!!」


四人は、一斉に鬼ヶ島に切り込んだ!




四人とも、とてつもなく強く、なおかつ連携がかみ合っていた。

仮に、誰かが拘束されても、そいつの妨害をすることで、助ける。

という具合に、第一関門を突破していった。


「よし、このまま、進むぞ!」

「まてよゴラァ。」


うしろから、大きい鬼が襲ってきたのだった。

桃太郎は、それをうまく回避し、無傷で済んだ。


「お前…。あの時のガキか?」

「桃さん。お知り合い?」

「うん。僕のことを殴ったんだ。返りうちにしてやったけど…。」

「わお、すげぇ…。」


鬼は、少し怖がりながらも、桃太郎を脅迫した。


「俺はな、前までの俺と違うんだ。一瞬で死ぬぜ!」

「だったら、僕はここに来ない!」


桃太郎は飛び上がり、鬼の体を一刀両断した。


「すげぇ…。さすが桃さん。」

「やぁり!」

「みんな、ありがとう。」


桃太郎は、三匹に感謝し、一向は深部へ向かった。




「随分と、早いなぁ…。桃太郎さん…。」


噂を聞いていたのだろうか、鬼の長らしき人物がふんぞり返って座っていた。


「あなたがここの王様ですね?」

「そうだが?」


鬼は二ヤリと笑った。


「何がおかしいんです?」

「そんな小さな体で、よくここまで来たなぁと。」

「小さいのと、強いのは違いますよ。」

「だな。」


鬼は立ち上がり、三匹を投げ飛ばした。


「くそぉ…。」


三匹とも意識を失ってしまった。


「何をする?!」

「お友達を投げられて、悔しいか?」


鬼は挑発しだした。

それに桃太郎は、まんまと乗っかってしまったようだ。


「桃太郎。かけをしよう。

決闘だ。

もし、お前が勝ったら、俺らの奪ったもの全部と、あの動物をお前に帰す。

が、負けたら、お前らを。いや、日本を殺す。」

「そんなぁ…。」


桃太郎は、史上最大の賭け事を仕掛けられた。

この十歳程度の子供は、日本の使命をかけることとなってしまったのだった…。


「さぁ、どうする?」

「…」


とても緊迫した状況だった。


「やるのか?やらないのか?」

「やるに…。やるにきまってる!」


すると鬼は、二ヤリと笑った。


「よく言った、小僧。」


鬼はその体に似合う程の、大きな棍棒を持ってきた。

代替、お爺さんの家と同じぐらいだ。


「さぁ、死んでわびろ!」

「そうはいくか!!」


桃太郎は、鬼と衝突した。

が、鬼は油断したのか、その勢いにやられてしまい、転倒した。


「どうだ!これで俺の勝t…」

「まだだ!俺は死んでない!」


どうやら鬼は、死ぬまでやるつもりだったのだ。


「よし。行くぜガキンチョ!」

「受けて立つ!」


また衝突したが、今度は棍棒が折れてしまい、ついには鬼を切ってしまったのだった。


「うそ…だろ?…」


鬼は切られたショックで、倒れた。


「俺の、勝ちで、いい?」


桃太郎の言葉に、だれも異論はしなかった。

勝負事は、ちゃんと守るようだった。



数分後、鬼は起き上がり、桃太郎にこう言った。


「すまなかったな…。仲間と財宝は返す…。」

「それでいいんだよ。反省してくれれば。」


鬼はしょげていた。

が、桃太郎はとても喜んでいた。


「そうだな…。見送るぜ…。いや、謝らせてくれ。帝とやらに…。」

「わかった。」


こうして、桃太郎の鬼退治物語はおわったのだった。




帝のもとに行き、帝から「我のもとで働いてくれ。」というありがたい時めいた話をうけた。

もちろん、桃太郎はそれに賛同した。


その後の話である…。


桃太郎が、長旅から返ってみると、もう夜だった。


自分の家に帰ってみると、何やらスゴイ神々しい人々が、大きい馬車のようなものを持って、家に立っていたのだ。

なにやらもめているようで…。


なんと、かぐや姫だった。


「かぐや!」

「桃!」


かぐや姫は、桃太郎の声に反応し、そっちを向いた。

その顔は、涙でぐしょぐしょで、顔はもう、美しいとは言い難かった。


「さぁ、これを羽織れ!」


大きい男に、かぐや姫は抱かれてすぐに、羽衣らしきものをはおらされていた。

とたん、かぐや姫からは涙のかけらもなくなり、顔は美しい顔に戻っていた。


―――もう…かぐや姫じゃなくなっていたのだった。


「かぐやぁ!!」


桃太郎は叫んだが、かぐや姫たちは行ってしまった。





後から聞いた話によれば、実はかぐや姫は月の人間であったらしく、それゆえ、結婚なども出来ることが出来なかった。

それは、月の人間だから、というだけの理由ではなく、結婚してしまえば、思い出を作ってしまい、別れの時が辛くなってしまうという、かぐや姫のせめてもの配慮だった。


それを知ったところで、桃太郎の心は閉ざされたまんまだったのだが…。






その日から二十年。

桃太郎は、天皇の側近としてうまく働いていた。

いつも、高い給料をもらい続け、それを仕送りしている毎日だった。


が、浮いた話しなどは、一切なかった。

それは、過去のかぐや姫の一件があったからなのだろう…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですね! 読んでいるうちに何だか自分も『桃太郎』を書きたくなるようなお話でした^^ [一言] 小説家になろうにて、童話のifを描く企画があるので参加してみるのも良いかと思います^^…
[良い点] 挑戦的で、とてもよく書けていると思いました。 [気になる点] 言い回しや表現がまだこなれていないように感じました。
2017/11/01 19:40 退会済み
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