紅蓮の聖者
カッポカッポカッポお馬は行くよどこまでも～
じゃねえよ
「あとどれぐらいで着くんでしょうか」
いつまで揺られてりゃ良いんだクソが
馬自体はなんかお願いしたらなんか勝手に歩きだしたから大丈夫だと思うが
馬の言語で喋れても聞き取れねえから仕方ない
「うーん、私は聖域から出たことないから……」
「分からんにゃ」
「そうですか」
使えねえな……こいつら
あーあ、スマホの一つでもあればマップでちょちょいのちょいだろうに
でも人工衛星飛んでないこの世界じゃ無駄だなあ
「「あ」」
「どうなさいました？」
なんだよ精霊ども
「今からとんでもないことが起こるわ」
「やばいにゃ」
こいつらが冷や汗かいてやがるマジでやばいやつかコレ！？
なになに、野生の裏ボスでも出てくんの！？
「ふはははははははははははははははは！！！運が無いな貴様！風の覇者たる我の通り道にいた不運を恨むがよい！！」
いきなり声がしたと思ったら馬車が浮いた！？
あっ馬が逃げやがった！？あいつらちゃっかりしてやがる
「ああ……シルフィードに目をつけられるなんて」
「最悪にゃ」
「では、空の旅を楽しむがよい！！生死は保証しないがな！」ゴォッ！！！
うおおおおおおおおおおおお！！？
馬車ごと空を飛んでる！？風圧が強すぎて動けねえ！！
「おとなしく身を任せなさい。何もできないから」
「仕方ないにゃ」
「是非もありませんこれも受難の一つです」
理不尽だろうがぁ！！
運がよくなってるんじゃないんですかぁ！？
シルフィードっつたな？いつか絶対ひどい目に合わせてやる！！
「見なさい、町が見えてきたわよ」
「あれが町かにゃ」
町？
ああ、確かに町だよ？
めちゃくちゃ火に包まれてるけどなあ！！
なんだよ！
俺が行くところはあらかじめ燃えるようになってんのかよ！？
このままじゃ、一番燃え盛ってる屋敷に激突だぞ！？
ドガァッ！!
あーあ……ぶつかっちゃったよ
幸い痛みはない
痛覚ぶっ壊れてるからな
「た……す……け…て……かみ……さま」
あー声が聞こえちゃったなー
うわー、柱の下敷きになって下半身グッチャグチャの娘さんだよ
これは助けられねえぞ。まあ、助ける気もねえが
「今、助けます！！」
どうせこうなるとは思ってたけどな！？クッソ、こんなんどうしろってんだ……
『主の許可が下りました。一時的に【飢餓】は【天啓】となります』
マスクが変形してるっぽいんだけど見えねえから分かんないし！
それに俺これの能力知らねえけど！？
何をすればいいんだ！！
『一言のみ貴方の言葉は奇跡を起こすでしょう』
奇跡て、アバウトすぎるわぁ！！
考えるのがめんどくせえ。もうこれで良いだろ！
「生きろ！！」
世界から音が失われた
次に色、最後に俺と娘さん以外
ちらっと見る限りでは特に娘さんに変化はない
それはすぐに元に戻った。色と音が帰ってくる
変わっているのは娘さんの傷が完治しているという点だけ
「これは……！」
ええええええええええええええ！！？
確かに奇跡は起こってるけど……こんなことしてホントに良いのか
なんか、世界を改変すると帳尻合わせが大変そうなんだけど……こんな時はさっさとずらかるのが吉だ
あれ？いつの間にかお姫様抱っこで娘さん持ってる。身体まで自由に出来ねえのか不便だなぁ……
ギシィ！！！
一足遅かったか……崩れてきやがる
娘さんには申し訳ねえが俺と心中になっちまうかな。
まあ、この地獄を終わらせられるなら良いか
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………………………………………………………………………？？
あるぇ？
何にも起こんねえ？
「これが神の御業ですか……！！」
なんじゃこりゃあ！？
炎と瓦礫が俺を避けてる？
あ！！
これあれか、咎の火の能力か！？
他の火で焼身することができないって奴
俺はむしろ苦行そのものなこの世界から早く離脱したいってのに！
ガッデム！！なんてこった！？
もう良いや、ゆっくり歩いて行こう
なんか娘さんにも火は寄らないみたいだし
ようやく出られるわー
よいしょっと
「「「ワァアアアアアアアアアアアア！！」」」
なにこの歓声
村人らしき人たちが俺を囲んでめっちゃ喜んでんだけど何これ？
え、なになに怖い
ん？ちょっと待てよ。俺は人を燃え盛る建物から救った消防士と同じ状況ってことか。
なるほど把握した。
できればさっさとここを離れたいんだけど……囲まれてるから無理か……
