こんにちは赤ちゃん
レンガ造りの家が立ち並ぶ小さな町。良く言えば穏やかで平和。悪く言えば退屈なその町に建つ家で新たな命が産声をあげた。
「ご主人、元気な男の子です。奥様もお元気ですよ。本当におめでとうございます」
近所に住む産婆が隣室の扉を押し開けしわしわな顔でにっこり笑えば扉があたるのではないかという近さで立っている男がうおぉっ!と歓喜の大声を出し産婆を押しのけるように愛する妻子がいる部屋へと入っていく。その行動に産婆は慣れているようでやれやれと笑いながら再び部屋へと戻る。
部屋には疲れてはいるがやりきったと満足気な顔で笑う女性がベッドに横になっておりそんな彼女の顔のすぐ隣にはお湯で綺麗になりタオルに包まれた赤ん坊がアーと言いながら手を天井に向けて伸ばしている。そんな二人の姿を見た男の目に涙が溢れ、その場で座り込んでしまう。
「良かった、本当に良かった!」
「もぅ、心配しすぎよあなた」
ゆっくりと上半身を起こし苦笑しながら女性は隣にいる我が子を優しく抱き上げ胸に引き寄せる。
「お父さんは泣き虫で困っちゃうわね」
笑いながら我が子へそう言えば男性は泣きながら立ち上がる。
「お、お父さん・・・」
「そうよ、今日から私はお母さんで貴方はお父さん。そしてこの子は私達の愛し子。これから三人で暮らしていくのよ。あなたもこの子抱っこしてあげて」
笑いながら女性が赤ん坊を男性へとゆっくり差し出す。男性は一歩、一歩とゆっくり歩き赤ん坊をその手で包む。赤ん坊はヒゲもじゃで熊のような男性が自分の父だとわかっているのか近所の子供のように泣くことはなく、あぅーと無邪気に笑って手を伸ばす。
「可愛い、可愛いぞっ!」
心からの言葉なのだが思ったより声が大きくなり、それにより赤ん坊は目を丸くし一気に顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまう。
「あーなーたー」
「す、すまんっ!ほら怖くないぞ〜。ベロベロバー」
ジト目で睨まれて怒られれば男性はあわてて赤ん坊をあやしだす。だが泣き止むことはなくすぐに赤ん坊は産婆の手によって女性に返されたのだった。
「びっくりしたね。でももう大丈夫よ。大声熊さんはお母さんが黙らせたからね〜」
「ハハ・・・」
思わずうなだれる男性。その姿はまるで魚に逃げられ落ち込む熊のようだ。
昔から親しみやからかいで熊と呼ばれたこの男。そんな彼の妻になったのは隣町に住む綺麗な金の髪と透き通った青い瞳をもつ美人で有名な女性だった。今でも美女と野獣夫婦と言われ有名なおしどり夫婦。そんな夫婦の間に産まれた男児。父親の暗めの茶髪に母の青い瞳を受け継ぎ、両親の惜しみない愛を注がれすくすくと育っていくだろう。
「この子の名前はどうします?」
「正直女の子の名前しか考えてなかった」
「もう、仕方ないわね。一緒に考えましょ」
微笑む母親につられてか赤ん坊もふにゃりと笑った。
美女と野獣が好きなんです!
名前は次にでてきます。
つたないですがよろしくおねがいします!