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決意

「そこは3乗の公式を使って」

「あ、そっか。……これであってる?」

「うん。浩人は中学までの基礎がしっかり出来てるから成果が出やすいのかもね」

 なんだか今日は先生が少し優しい気がする。

「先生が美少女だからね」

「もう! 褒めてるのに」

「皮肉じゃなくて僕も褒めたんだよ」

「浩人……今日は素直だね。ふふふ」

 初世から教わるのは楽しい。

 数学、英語、化学、古典、世界史……。

 月曜の予習は一巡したが、また数学をはじめてしまった。

 僕も嬉しさもあって、つい長い時間続けてしまう。

 ただ、陽が次第に陰ってきた。

「初世、そろそろ止める?」

「もう少し、やろうよ」

「そう?」

「うん」

 少しは陽の光があるうちに移動しないと大変なんじゃないだろうか。

 初世にはもう少し教えたいところがあるのだろう。 

「数学は、公式を覚えることと、基本的な計算を反復するのがコツだからね」

ふと初世の教え方がいつもと違うような気がする。

「なあ、なんだかこれからの学習法を教わってるみたいなんだけど?」

「……うん」

 恐れていたことを聞いてみた。

 それはつまり。

「モニター期間が今日までだから今後のためにってこと?」

「うん。モニター期間はこの世界の時間で午後12時だよ」

 初世が教室の時計を見る。

 確かに前回、この世界で初世は明日までというようなことを言っていた。

 だから予想していた……けど。

「でも、これから実用になっていくんでしょ? 今の初世のデータをそのままには出来るんじゃないの?」

「頼めばできるかもね。浩人と私の組はもっとも成績が良いから、むしろ継続してデータを取らせてほしいって話になるかも」

「なら」

 僕が継続の提案をしようと言いかけると、初世はピシャリと言った。

「私は断りたいんだ。ごめんね」

 意外な言葉が返ってきた。

 ショックを受けつつも理由をなんとか聞く。

「ど、どうして?」

「私以外の人工知能も一斉にモニターが終わるの」

「うん。それで?」

「実用型にはもっとも成績がよかった人工知能が選ばれて、データを解析して、それを再構築して作るんだって」

「え?」

「つまり私が消失する代わりに次世代の人工知能ができるの。私と浩人の思い出を参考に勉強に困ってる人を助ける人工知能ができる……なんだか私達の子どもみたいと思わない」

 教室の窓から見える空の色は燃えるような赤になっていた。

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