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キミのいない六日目 その六

「え? だって……もう遅いじゃないか」

「前に来た時も遅くだったじゃん」

 僕は確かに深夜に高橋の家に上がらせて貰ったことがある。


◆◆◆


 マクドナルドで別れてから3時間後、僕は高橋の家の前に来ていた。

 高橋が手招きして僕を家に入れる。

「静かにね」

 ご家族の方に挨拶はしない。むしろ挨拶が必要な状況にならないように、ということだろう。二週間前と同じだ。

 藤原もこんな調子で高橋の家に入ったことがあるのだろうか。

けれども不思議と嫉妬の気持ちはわかなかった。藤原がいいやつだからと知ったからだろうか。それとも。

 無事、ご家族の方に会わないで、二階の彼女の部屋に入れたことにほっとする。

 前回は高橋の部屋に入ってからのほうが緊張していた。

 温かみのあるホワイトウッドの家具。本棚にはほとんど読んでないという小説と僕の趣味の漫画が少しだけあった。

 これも……二週間前と同じだ。なんだかこの部屋を探し回ったような気がするが、気のせいだろうか?

「どうぞ。座って」

「うん」

 高橋が一つしか無い椅子を引いて薦めてくれた。所作が手慣れている気がした。

 彼女はベッドに座る。

 僕はここで彼女に告白して返答を保留されている。今、またここに呼ばれたということは返事をしてくれるということかもしれない。

 少しだけ胸が高鳴る。

「鈴木くん、最近、勉強しているよね。どうしたの?」

 高橋は核心を避けて、世間話からはじめるようだ。

 どうしてだろう。確かに勉強している。

「また私に勉強を教えてくれるのかなあ? ふふふ」

 僕はまだ勉強ができた頃、高橋に勉強を教えていた。

「塾にも行こうとしたことがある」

「え?」

 大手塾の最新カリキュラムの無料モニターに参加したことがあった。

 結局、不適格とされて選ばれなかったけど。

「ウチは塾に行く余裕なんてないから結局はいかなかったけどね」

「そ、そうなんだ……」

「高橋に勉強をまた教えたいと思ってさ。あの頃、俺たち仲良かったろ? まあ今でもいいけど、ちょっと違ったかなって」

 自分の言葉で自分の気持に気がついた。

 僕は焦ったんだ。あの頃とは変わってしまいつつある高橋との関係を。それを維持したくて告白したのだと思う。

「そうね」

 僕の気持ちをわかってくれたのかはわからないけど、高橋も同意してくれた。

「私、藤原くんにふられちゃったんだ」

「ああ。みたいだね」

 高橋が目を白黒させる。 

「あれ? 驚かないの?」

「ごめん。知ってた」

「私こそ、ごめん。言えなくて」

「付き合ってたらしいね」

「それも知ってたんだ」

 学校で二人が言い合っているところを見たことは黙っておく。

 けれども、女の子の気持ちがわからない僕は余計なことを言ってしまった。


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