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キミのいない六日目 その一

【六日目?】


 午前9時。普段なら遅刻する時間だが、土曜日なので学校はない。

 学校は休みだというのになぜかムズムズと勉強をしたい気にはなっている。

 今日は英単語を覚えたいと思う。

 一階に降りると冷えたハムエッグがテーブルの僕の席にあった。

「お母さんはさくらと出かけたから」

 誰もいないと思っていたらソファーで父が横になっていたようだ。母と妹は一緒に出かけたらしい。

「そう」

 僕が顔を洗ってハムエッグを食べ始めると父が話しかけてきた。

「お前、最近学校はどうなんだ?」

「どうって? 成績のこと?」

 成績の悪さは母親とよく口論になっていて、もちろんその場に父もいたから知っているはずだ。

「いや、まあ学校が楽しいかどうかさ」

「ああ、うん。まあ楽しいよ」

 父から学校のについて聞かれたことなど、半年ぶりのような気がする。半年前、二年に入る時に塾に入りたいと頼んだ時に少しだけ話した。

 妹の塾代で難しいとそれとなく断られてしまったが。

「そう、なのか」

「うん」

 父はなにか言いたそうにしていた。

「なに? 父さん」

「お前がもし塾を望むなら、ちゃんとした塾に行ってもいいぞ?」

 どうやら父は僕を気にかけてくれていたらしい。少し前の僕ならきっと母親の怒声を聞くのがいやで僕にそんなことを言っていると穿って考えたことだろう。

 だけど今は違った。

「ありがとう。でも大丈夫だよ。実は最近、勉強をしているんだ。もし必要になったらその時に頼むね」

「そ、そうなのか? 本当に塾はいいんだな」

「うん」

「わかった。でも必要になったら、いつでも言えよ」

 食後に歯を磨いて二階に上がって机に着く。

 今日は徹底的に英単語や英熟語を覚えるつもりだ。休みの日にゲームやアニメに触れないで、勉強に打ち込もうなんて何ヶ月ぶりだろうか。

 少なくとも二年になってから一度もない。最新のフルダイブ型のゲームにも興味が無くなっていた。

 不思議なことに勉強自体が楽しいのだ。

 けれども、なにか喪失感というか物足りなさを感じる。集中しようと思えば思うほどにそれが大きくなる。

「なんだこの感覚?」

 ふとさっきまで寝ていたベッドを見てしまう。

 凄く大切なものがベッドの上にあったような気がする。

 ベッドの上にアラーム代わりに使ったスマートホンがあった。

「スマホも大切だけどもっとなにか……大切なものがあったような?」

 気のせいかもしれない。スマホは高校生の僕にとって高額なものだ。

 無くしたり、破損したりすれば、また父に負担を与えてしまうだろう。

 集中が途切れてしまった。

 僕は単語カードを持って家を出た。

 少し散歩しながら英単語を覚えるのが良いかもしれないと唐突に思いついたのだ。

「母さんはお昼も返ってこないらしい。俺も外で食べるからお前も外で食べてこい」

 家を出る時に父は僕に昼食代として千円を渡した。

 マックでお昼を食べて図書館で一日勉強してもいいかもしれない。

 僕はそう思ったのになぜかいつもの道を歩きたくなってしまう。

 いつもの道、つまり毎朝学校に行く道だ。

「どうしてだ。今日は休日だっていうのに」

 自分でもわからない。

 わからなかったが体が勝手に学校を目指してしまうのだ。

 僕の家と学校はそこまで離れているわけではない。

 英単語に集中したらすぐに着いてしまった。

 フェンス越しに校庭を見る。

――ピッピー!

 グラウンドではサッカー部が試合をしていた。

 ちょうど試合が終わったようだ。どうやら他校と試合をしていたわけではなく部内で紅白戦していたようだ。見知っているような顔ぶれだった。

 僕はサッカー部にやや詳しくなっている。

 この学校のサッカー部は県大会レベルなので詳しい学生も多いだろうが、僕のようにサッカーが好きでもないのに詳しい奴は少ないだろう。

 爽やかにスポーツの汗を拭うアイツがいた。

 たくさんいるマネージャーのなかに高橋がいないか、いつもなら目で追っている。

 ところが僕はまったく別のことが気になっていた。

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