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約束

「ご飯できたよ~」

 丁度いい。食事をしながら、少しづつ現状について話してみよう。

「いただきます」

「いただきます」

 夕餉のメニューはカレーだった。

 カレーはレトルトパックを温めたもののようだ。

 それに定番の玉ねぎサラダもついている。

 僕は話を切り出しはじめた。

「美味しいね、布瀬」

「うん。レトルトのカレーも美味しいよね。あのスーパーにもまだまだあったよ」

 このレトルトのカレーもシチューも保って数年だということを伝えないといけないのだが、もう少しソフトな話題から話すことにした。

「僕さ。車を運転できるようになろうと思うんだよね」

「車……」

 布瀬はきっとまだ免許が取れる年齢でもないでしょといったようなことを言ってくるかと、僕は思っていた。

「そうだよね。なにかを運ぶ必要も出てくるだろうし、何処かに移動するのにも便利だもんね」

「え?」

「そういう意味じゃないの?」

 正直、驚きを隠せなかった。

 布瀬は未だにスーパーでお金を払う。

 でも、さっき僕が考えていたようなことも意識してくれているのか。

「スーパーでお金を払うなんてこともできなくなっていくと思う」

「うん。そうだよね」

 布瀬はちゃんと分かっていたのだ。

 拒否されるかとも思ったが、考えてみれば既にショッピングカートの持ち出しには同意して貰っている。

「こんな世界でも僕さ。なるべく不便なく、一緒に生活できるようにするよ」

「一緒にって、それって私とってことだよね?」

 唐突に聞かれる。

 不安になってすぐに聞き返す。

「当たり前じゃないか。まさか一緒にいてくれないの?」

 布瀬が激しく首を左右に振った。

「ううん。最後まで一緒にいるよ。でも、それって」

 布瀬が下を向く。

 長い髪で顔がよく見えない。

 手を軽くあわせ、なんだかそわそわと指を動かしている。

 続きを待っていたが、なかなか話してくれなかった。

「それって?」

 僕が促すと布瀬は戸惑うように言った。

「そ、それって、プ、プロポーズ……だよね?」

 言われてみればそういう意味になるかもしれない。

 世界がこんな状況で非常時だからという言い訳もできるけど、違うというのも潔くない気がした。布瀬と一緒にいたいと思う気持ちは本当だ。

「だよね?」

 布瀬はまた聞いた。

 下を向いていた顔をわずかに上げて上目遣いで僕を見た。

 不安そうな、縋るような目をしていた。

「……」

 今、この世界で僕しか頼れる人がいない女の子にこんな目をさせてしまっている。

 それに意識はしていなかったが、確かにプロポーズととれなくもなかった。

 僕は本当に布瀬とずっと一緒にいたい。

 もちろんこんな世界にならないほうがよかったけど、それによって布瀬と親しくなれたことは神様がいるなら感謝したいとすら思えた。

 僕も顔を近づけて小さく、けどハッキリと言った。

「誓いの言葉を正確に覚えていなくて悪いんだけど」

「え?」

「布瀬、いや初世はつよとどんな時でもずっと一緒にいるよ」

「で、でもさ。もし世界が元に戻ったら?」

「関係ない。戻ってもずっと一緒にいる。約束するよ」

 初世が目を閉じる。僕も目を閉じる。

 僕達は唇と唇を重ねあった。

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