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お風呂

「別にすぐに全部分からなくたっていいよ。単語は後から覚えたっていいから」

「そうなのか」

 英語も少しでも読めるようになると楽しくなってくる。

 ところが勉強をはじめるとすぐに布瀬はやめようと言ってきた。

「そろそろ止めにしようか?」

「え? もう?」

「だって」

 布瀬のすらりとした白い指先が壁時計を示す。

 針は長針が12を短針が10を示していた。

 つまり10時だ。はじめたのは8時だったから、すぐにと思ったけどニ時間も経っている。

「え? もう10時か」

「そうだよ。時間、早かった?」

「ああ」

 楽しかったからか体感的にはすぐだった。高校に入学してから家で二時間も楽しく勉強できた記憶はない。

 なんだかノッている気もする。

 せっかくなのでもっとやろうかと提案してみた。

「もう少しやってもいいんじゃないかな? 特にすることもないし」

「けど明日は調査するから早く起きるでしょう? 私、早起きだから知っているけど5時ならもう明るいよ」

 そういえば布瀬は今朝も午前5時半に起きたと言っていた。

 その時間はもう街に人っ子一人いなかったとのこと。

 ともかく早起きしている布瀬が言うのだから朝の5時はもう明るいはずだ。

「そっか。じゃあ朝の5時に起きるためにもう寝るか」

「うん」

「じゃあアレがうまくいくかやってみるか」

「うまくいくといいんだけどね」

 僕は裸になって立っていた。

 そして足元にはバケツ、頭上には膨らんだスーパーのビニール袋がある。

「どう?」

 曇りガラスを一枚隔てた向こうから布瀬の声が聞こえる。

 変な意識をしてしまう前に試してみることにしよう。

「うん。今からやってみるよ」

 膨らんだビニール袋を竹串で刺していく。

 ちょろちょろと暖かいお湯が出てきた。

 先にシャンプーとボディソープで泡立てておいた頭と体を洗い流していく。

「頼りないけどなんとかシャワーだよ。そのままお湯を被ったほうが早いかもしれないけどね」

「よかった。じゃあ私はまたヤカンでお湯をわかしてるわね」

「うん」

 バケツとビニール袋にはお湯がはいっている。

 それはカセットコンロで熱湯を作り、水で割ってぬるくしたものだった。一人分でかなりの時間と労力がかかった。

 次は布瀬の番だ。

 布瀬は曇りガラスだけに隔たれた脱衣所にいてシャワーの具合はどうか聞いてくれていたけど、 僕は近くにいるわけにはいかないだろう。

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