三節 カンモン
モモの捜索一日目。
早速一行は壁にぶつかっていた。
「いってー…余所見してたらぶつかった…」
「どんくさいな金髪十字架」
「うるせえなハクヤ!!」
…リアルに壁にぶつかるというわけではなく…、足止めをくらっていた。
「ハクヤ、キクノ…ポキポキ組とハル=レインか?この門をくぐって良いのは一流の魔法児と魔術師、それから王妃に遣える護衛だけだと習っていないのか?」
「なっ…姉ちゃん!」
「…ここではあたしは門番・サユリ=タテシナだ。門番とでも呼べよ!なっ、キクノ?」
「早速キャラ崩壊だな…ええと門番」
カンヅキ王宮を出る前にあった一つの『一流』の壁。
一流と認めて貰わなくては、先へは進むことができない。
キクノたちのモモ捜索の第一関門は王宮内にあったのだ。
「…というか、見習い設定なんてつけないで一流の魔法児設定にしておけば…じゃなくて既に一流と認められた魔法児さんに頼めば良かったのでは…?」
それを言わないで下さい。
とにかく『一流』というパスが無い者はここで、二人の門番を倒すというのが試練なのだ。
一人は狂暴なライダー魔術師サユリ=タテシナ、そしてもう一人が…
「俺はえーと…イーグル=クラウド…暗号化による魔術を扱っている。」
自分で言うなよ。
どちらも手強い魔術師であり、見習いに容易に倒せる相手ではない。
モモを捜すためにも一刻も速く倒さなくてはならない。(一流魔術師ならサユリとイーグルに行かせろとかつっこまないでお願いだから。)
「んじゃ…門番さん…“喧嘩”といくか…!」
「うん…“喧嘩”じゃなくて“魔術対局”らしいよ…」
「なんかださーい…眠い…」
「え?まさかもう睡眠魔術にやられたんですか?」
「普段からこうだろうが…」
「あひゃーあひゃあひゃあひゃひゃひゃひゃーーーあっひゃひゃあひゃーーサクサクサクサク」
「この人も大丈夫なんですかね!!?」
「大丈夫じゃないよなこれ…あれどうしようこれ!ハクヤ寝ちまったし…ハルは?」
「あ、僕はモモお嬢様の護衛兼王宮案内役ですので戦いに参加することは不可能です」
「今そういうのいらないよな!?」
「いや王宮内での大切なルールなんだ。わが妹キクノ、さっきもまさかと思ったが…“魔術対局”を知らないのか?」
「?“まじかるまっち”…??」
「あひゃ???」
「…説明しよう、“魔術対局”とは、
見習い一流関係無く全ての魔法児魔術師が行うことができる平等な対局のことである。フィールドは左右対称のものと定められており、これにより一方的な開戦直後の突き落とし等を防止する。判定免許を持った一流魔術師の審判を最低一人必要としその者は平等な判定のために読心魔術機に対戦の一時間前以降にかかっており、どちらの魔法児魔術師にも意志が片寄っていないことを証明されていることが求められる。また対局者の安全のため治療魔法五級以上を取得した人物も最低一人必要とする。王宮案内者・王妃に遣える者は試験以外で、特に見習いと関わる対局は禁止。制限時間は1時間、使用魔力は無制限。永久的呪縛魔法と法律で禁止された魔法は使用した場合法に従い処罰する。対局者の比率は1:10までとする。ただし1:10のとき、少ない方に一流がいない場合は対局を認めない。特別な魔方陣や魔法空間での対局は禁止とする。地面に倒れこみ30秒間起き上がらない、フィールドから大きく外れ審判の見えないところまで行く、敗北を宣言する、身体が切断され危険な状態だと判断される、おもらしする、泡を吹く、金を振りまく、逃げる、アウトゾーンが見える、惑星を破滅させると失格、つまり敗北となる。
…ね?簡単でしょ?さあやろうぜ!」
…長いので読み飛ばしましょう。
「…おい待て 今素晴らしく恐ろしい項目が…」
「おもらしのところですかいな?」
「そこじゃねえよ!ていうかいい加減口調一律にしろよ!!」
「え?…あぁそうだな、いつものあたしで行きますぜ!困ったことは姉ちゃんに任せろよっ!」
「どの口が言うんだ!!…ってあれ?え?このまま外出ちゃうのか?」
「モモお嬢様を捜すのでは…?」
「イーグルさんまで…あれだけサユリさんに魔術対局の説明させておいてまさかやらずに行くんですか!?時間の無駄だったんじゃないですか!王宮の規則にも違反していますし!!」
「いーじゃないのこのサユリ様の姐御肌に免じてな!このまま王宮突破しますぜ!通してしんぜようお願いだ!」
「日本語あひゃーかー?あひゃー」
「ヒナタさんに言えることでは無いですね…」
「「って訳ででっぱーーつ!!しんこーーーうっ!!!!」」
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結局このあと王宮監視庁・ペア=ツリーに見つかり処罰対象にされましたがサユリの姐御肌に免じて(真顔)、今から魔術対局をすれば見逃してくれることになりましたとさ。チャンチャン。