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interlude
十六の時
突如現れた謎の女
それが人間ではないことはわかっていた
特定はできなかったが・・・おそらく名のある魔界の妖怪
「貴方の子をつくらせて」
堕とされた振りをした
その先にある彼女の本当の目的を知りたかったから
彼女が子を産むまでに半年もかからなかった
久々に再会した彼女は見るからにやつれていた
肌はざらりと枯れはて、ふくよかだった胸は板のようになり、甘美な唇は老婆のように皺寄れた
まるで生まれた子供に生命の殆どを吸い取られたかのように
瞳に、わずかな後悔の念
「“こっちは”そなたにくれてやる」
鋭く言いはなち、彼女は最後に本来の姿をさらした
挑発するかのように
長大な、紅い竜
神々しいまでのその姿
そうして一瞬にして消えた
腕の中に、大声で泣き続ける赤ん坊だけが残った
夕日が沈む間際に放つ、断末魔の色をした両眼
そいつに名前を与えた
「炎」