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タイトル未定2025/03/02 14:41

 男の夢は、悪の帝王になることだった。



 人でなし、悪漢、極悪非道と呼ばれ、蛇蝎のごとく忌み嫌われたかった。そこで真の悪について考え続け、一つの結論に達した。



 真の悪とは、人々を幸福の絶頂から不幸の底に叩き落すことだ。その落差が大きければ大きいほど、その悪名は歴史に深く刻まれる。



 ならばまずは、人々を幸せにする必要がある。



 そこで男は、善人を装うことにした。笑顔、気持ちのいい挨拶、全員を褒める、ゴミ拾い、困った人がいれば声をかける。それを呼吸のように習慣化させた。

 質素倹約を心がけ、収入の大半を寄付した。



 選挙で議員に選ばれると、数々の良心的な政策を提案し、実現させた。現代には珍しい、聖人のような政治家だと評判になった。



 男はついに、総理大臣となった。



 さらに善政を重ね、国民の幸福度は世界一となった。諸外国からも男は絶賛された。



 その時点で、男は老人となった。



 さあ、もう頃合いだろう。今から地獄の底に叩き落としてやる。阿鼻叫喚する国民の姿を想像して、男は激しく興奮した。



 その瞬間だ。「うっ……」と男は左胸を抑えこみ、その場に倒れてしまった。なんと男は興奮しすぎて、心臓発作で亡くなった。



「彼は歴史に名を残す善人だ。善の帝王だ」

 世界中の人間が口々にそう言い、彼の死を悼んだ。



 天国に導く天使たちに向かって、男はこう絶叫した。





 こんなはずじゃなかったんだ!


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