【98】スケーリア王国のあれやこれやと殿下たちの来日
「佑奈様はスケーリア王国という国をご存知でしょうか?」
瑛莉華さんが話し出して早々、そんなことを聞いてきた。スケーリア王国?
うん、ご存知ないわ。
向かい合って座ってる俺たちの隣にそれぞれ座った巫女さんズもどう見ても知らなさそうな顔してる。ちなみに俺の隣が彩如で瑛莉華さんの隣が楓佳である。
「知らない。そんな国あるんだ?」
「ふふっ、そうですか。まぁ地中海に数多ある島々の中の小さな国です。ご存じでないのも仕方ありません」
ほうほう、なるほど。地中海……ね。
そんな地球の裏側にある島国のことなんて俺が知ってるわけないわ!
「で、そのなんたら王国? がなんなの?」
もう今の時点で面倒ごとの予感しかしないけど。
「はい。スケーリア王国というのはスケーリア王ネストル・マクリスが治める、人口三十万にも満たない小さな島国なのですが、その王の王弟にあたるアレートス殿下が妻子を伴ってこの度来日されております」
なんだなんだ、王とか王弟とか……、やだもうこの先聞きたくない。聞きたくないでござる~!
「佑奈様、少しは表情、取り繕ってください。何を考えておられるかまるわかりですよ?」
瑛莉華さんが話の途中にも拘わらず、そう苦言を呈してきた。いや、だってさ。もういかにも面倒ごとって話のもってきかたじゃん。平静な表情なんてしてられんって。
「無理~。聞かない選択肢ないの? なんかもう聞きたくない気持ちで一杯なんだけど」
「ダメですね。ぜひお聞きください。というか聞いてあげて欲しいです。私個人の気持ちとしてもぜひお聞き願いたいです」
え、瑛莉華さん個人でも?
ううっ、そうまで言われるとツライ。瑛莉華さん本人のお願いとなれば、聞かないわけにはいかない……。
「うう……、もうわかった。わかったから。で、その殿下がどうだっていうの?」
「はい、先ほども言いましたがアレートス殿下は妻子を伴って来日されておりますが、それについて公にはなっておらず非公式なものとなります。わかりやすく言えばお忍びでの来日ということです」
「ほぁ~、なるほどなるほど。表立って来るとメンドクサイもんね!」
わかる。わかるわ~! よその国の王族が来日なんてしたら、国を挙げての歓待になるだろうし、マスコミだって大騒ぎ間違いなしだし。そりゃ、お忍びで来たくなるよね~!
注目浴びるなんてマジ勘弁だわ。
「佑奈様、大変申し訳ないのですが、佑奈様のご想像は全くの的外れかと思います。王族の方々は面倒だからとか、騒がれたくない、などといった理由で非公式な来日にすることはないかと。そうせざるを得ない、やむに已まれぬ理由があるからこその、この度の非公式来日となります」
「あ~、はいはい、もういい、わかったから。それで、その非公式にしなきゃいけない理由って? 私へのお願いって言ってるくらいだから、やっぱ異能力がらみのなにかなんでしょ? きっと」
もうまどろっこしいから、さっさと話し進めようよ。俺何すればいいのさ?
「ふふっ、話しが早くて助かります。とは言うものの、話しは順序だてて聞いておいてもらわないと困ります」
く~、結局どう転んでもメンドクサイ話し聞かされるわけね!
ってことで瑛莉華さんから事細かく説明を受けることになってしまった。長くなりそうってことで楓佳がお茶とお茶請け出してくれたので、それを摘まみながら大人しく聞いた。いや、俺だって真面目な時はちゃんと真面目に話聞くし~。
「アレートス王弟殿下には、王弟妃たるソフィーア様との間に今年十一歳になるカイロス殿下がいらっしゃいます。他にお子様はおられず、カイロス殿下がお世継ぎとなります」
うんうん、なるほど。これくらいならまだまだついていけるぞ。
「王弟殿下のご家族の話はひとまず置いておきまして、スケーリア王国の現状を少しお話しします」
って、置いとくんかい!
他の話なんて別にどうでもいいだろうにさ~。言うとまた色々突っ込まれるから言わんけど。
「スケーリア王国には少々問題がありまして、それが何かといえばネストル王にお世継ぎがいらっしゃらないということです。ここ近年、後継者問題がずっとくすぶり続けています」
「え~、王様、子供いないの?」
王様って一杯奥さんいるイメージ。正妃のほかに側室がた~くさん! だから子供もいっぱい!
「正しくは王妃様との間に二人の王子がいましたが、残念なことにどちらも三年前に相次いでご逝去されております」
え? 相次いで? 王子様が?
「そ、そんなことありえるの?」
「……そこは私の口からはなんとも申し上げられませんが――」
あ、あやし~。
「ま、まぁ、それはいいや。じゃあアレートス王弟殿下がいるじゃん? 王弟って、王様の弟でしょ? その人でいいじゃん」
「もちろん王弟殿下も当然その資格はあります。ですが、後継として考えた場合それは根本的な解決になりえません。考えてみればわかります。王と王弟殿下の年齢差は二歳でしかありません」
うへぇ、二歳違いかぁ……。それじゃ確かに後継者としては、その、アレだなぁ。
せいぜい中継ぎってとこでしかないか。言い方悪いけど、継いだと思ったらまたすぐお亡くなりに……ってなったら笑えないわ。
「そこでカイロス殿下の存在が重要になってきます。現在スケーリア王国に後継者となる直系の子女はおらず、傍系もカイロス殿下のみです。このままではマクリス家の系譜は途絶えてしまう恐れすらあります」
うわぁ、なんて寂しい……。
親族他にいないの? 伯父さん伯母さんとかどうしたん?
「他に親戚とか……いないの?」
「王国内の親族は王弟の家族のみです。まぁ最後の手段としては、国外から嫁いでこられた王弟妃ソフィーア様の生家から王となる方を招聘するのも一つの手です。ソフィーア様は元はといえばスケーリアの王女が嫁いだ先で生まれたお方。血縁関係がありますから、系譜は繋ぐことが出来ます」
王族なのになんでそんなに親戚いないの?
なんか殺伐とした空気感を感じてしまうのは気のせい?
「うう、この話はもういいです。そ、それで、カイロス殿下はその話からどう繋がって来るの?」
俺を頼って来るんだ。それ相応の理由があるんでしょ?
っていうかそもそも俺のことをなんでその王国の人が知ってるんだよ!
ザルすぎるだろ。日本のセキュリティー!
俺の情報筒抜けかよ?
まぁ、漏れたのか、こっちから教えたのかわからんけどさ。なんか納得いかないわ。
「話が少し脱線しすぎましたね。カイロス殿下の話に戻しましょう」
「うんうん、早くして早く終わろ」
そして私室に籠らせて。
「……では。カイロス殿下ですが、健康面で不安があるのでは? と、周囲に訝しがられています。それというのも幼少の頃発症したある身体的特徴を抑えるため、常にアイマスクで目元を隠しておられるからです。王国民の前に出る時でさえ、それを外すことはありません」
「え~、何それ、かわいそう。病気? もしかしてそれを治して欲しいから来たの?」
ずっとアイマスクしてるだなんてめちゃ不便で不自由がすぎる。それってずっと付けてるの? 目が悪いってこと?
それを改変で治せってこと? いや、俺、医者じゃないのに。
「ここからの話は王国でもごく近しい間柄の人しか知らされていないことです。くれぐれも他言無用でお願いします。彩如さんと楓佳さんもわかっていますね?」
俺も二人も激しく頷いた。まぁ『ひえんの社』にいる時点で非公式な場所に勤めてるわけで今更な話ではあるが。
俺たちに釘を刺した後、表情を一段と引き締めた瑛莉華さんが溜めもなくさらりとその言葉を口にした。
「カイロス殿下は『突発性自己実在相対座標転移』と名付けられた異能力を発現した、異能力者です」
はい? い・の・う・りょく?
まさかの同類さん?
ってか、なんつ~長ったらしい名称。聞いてもなんのことやらさっぱり。それとアイマスクにどんな繋がりあるっていうの?
わけわからんって!
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※スケーリア王国は架空の国です。探しても世界のどこにもありませんのであしからず~




